サウジアラビアの原油増産検討報道について(2024/9)

はじめに

過去1ヶ月のニューヨーク原油先物価格は

8月末にロイター通信がOPECの複数関係筋からの情報として、日量220万バレルの自主減産を解除する計画の一環で10月から予定通り日量18万バレルの増産を進める予定と報道したことや(実際には9月5日に自主減産を2ヶ月延長することに合意している)、9月頭に米国市場が大きく下落したことによる需要減の可能性、そして9月10日にはOPECが発表した月報で2024年の世界石油需要を前年比日量203万バレル増と8月予想の日量211万バレルから引き下げ、2025年の需要見通しについても、日量174万バレル増と従来の日量178万バレル増から引き下げたこともあって年初来の最安値を更新していた。

その後ニューヨーク原油先物価格はイスラエルとヒズボラの戦闘激化による地政学リスクや、米メキシコ湾沿いでのハリケーンによる原油供給への悪影響からやや回復したものの、ここに来てまた70ドルを割り込む状況となっている。

その原因の一因は掲題のサウジアラビアが原油増産を検討していると英フィナンシャル・タイムズが報道したことらしい。以下、記事の内容を確認し整理しておく。


2024年9月26日の英フィナンシャル・タイムズの報道まとめ

以下はフィナンシャル・タイムズの報道より引用・抜粋。情報ソースはサウジ関係者とのこと。

  • OPECプラス加盟8ヶ国は10月初旬から自主減産を解消する予定だったがそれを2ヶ月延期したことにより、同グループが本当に増産できるかどうかの憶測が飛び交い今月2024年9月の原油先物価格は低迷している
  • しかしサウジ当局は、たとえ価格の低迷が長期化しても12月1日に予定通り原油生産を一部再開する意向
  • これは、高価格維持を目指して2022年11月以降他のOPECプラス加盟国を先導して繰り返し減産してきたサウジアラビアにとって大きな方針転換を意味する
  • 非OPEC産油国、特に米国からの供給増加と中国の需要の伸び悩みにより、同グループの原油削減の影響は徐々に薄れてきている
  • IMFによると、サウジアラビアは予算の均衡を保つために原油価格を1バレル100ドル近くまで引き上げる必要がある
  • しかしサウジは他の生産者に市場シェアを譲り続けるつもりはないと決定し、外貨準備の活用や国債の発行など、価格低迷期を乗り切るための代替資金調達手段は十分にあると考えている
  • サウジアラビアはこれまでOPECプラスの減産の大部分を担っており、過去2年間で自国の生産量を日量200万バレル削減しており、これは加盟国による減産の3分の1以上を占めている
  • 減産解除計画に基づき、サウジアラビアは12月から毎月8万3000バレル/日の増産を実施し、2025年12月までに合計100万バレル/日の生産量を増やす予定
  • サウジアラビアにとっての最大の不満は、イラクやカザフスタンを含む複数の加盟国がそれぞれの割当量を超えて産油することで、削減を部分的に無視していること
  • サウジアラビアは、どちらかの国が合意に従わない場合は計画よりも早く削減を縮小すると決定する可能性がある
  • サウジアラビアのエネルギー省はフィナンシャル・タイムズのコメント要請に応えず

まとめ

報道があってからのニューヨーク原油先物価格は

不安定な動きながら1バレル=69.50ドル近辺から67.50ドル程度まで約2ドル(約2.88%)下落。冒頭に述べた中東情勢や米でのハリケーン接近などが無ければもっと下落したのかもしれない。

今回のフィナンシャル・タイムズの記事について現時点でサウジアラビアの公式反応は無いのだが、もし本当に高値維持からシェア拡大に方針転換をするつもりであれば原油価格が下落する可能性は大きくなる。

何故自分がこんなに原油価格を気にかけているか改めて述べると、自分の米国株ポートフォリオの中で

エクソン・モービル(XOM)が3番目の資産価値であり、冒頭に挙げた過去1ヶ月のニューヨーク原油先物価格チャートにエクソン株の推移(赤線)を重ねてみると分かるように

第2四半期決算まとめでも触れたがニューヨーク原油先物価格の推移と連動性が高いことが多いため。

エクソンは原油だけではなく天然ガスも扱っているため、必ずしも原油価格の下落のみで株価が下がるとも言えないが関連性は見逃すわけにはいかないので、今後も原油価格及びそれに関連する原油供給の状況変化についてはチェックしておく必要があるだろう。

ちなみにエクソンは今週9月23日(月)に米カリフォルニア州と複数の環境団体から数十年にわたってプラスチックの再生利用について市民の誤解を招く説明を続け、世界的なプラスチックごみ汚染を助長してきたとしてサンフランシスコの裁判所に訴訟を起こされており、結論が出るまで時間はかかるだろうが、エクソンの株価リスクとしては頭に入れておく必要があるだろう。10月25日に予定されている第3四半期決算発表で何らかの言及があるのだろうか(現時点ではエクソンのリサイクル技術は機能しており、カリフォルニア州自体がリサイクルシステムの問題を是正できていないと反論している)。

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