2024年9月発表の米消費者物価指数と市場(2024/9)

はじめに

米国時間2024年9月11日(水)に2024年8月の米消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が米労働統計局から発表された。

前回2024年8月発表のCPIはほぼ市場の予想通りの結果で9月の利下げ可能性が高まり、株式市場、国債、為替にはそれ程大きな変化は無し無難に乗り切っていた。ただこの無難に乗り切ったというのが重要で、8月前半は株式市場で大きな下落があり、その後回復傾向にはあったものの8月発表のCPI結果及びその受け取られ方次第では再び大幅下落とする恐れもあった。

その後はジャクソンホール会議でFRBパウエル議長が9月FOMCでの利下げへの明確なシグナルを出したことで月末にかけても株式市場は高値が維持されていたのだが、9月第1週はS&P 500、NASDAQ総合が2024年で最悪の週間パフォーマンス(8月頭より悪い)とハイテク銘柄を中心に下落傾向にあり、今週第2週に入ってからは持ち直したものの8月末の水準には戻らず、市場は今回発表のCPI結果待ちという状況だった。

そんな中で今回のCPI結果、そしてそれを受けて市場はどう動いたのか。以下に確認して整理しておく。


2024年9月11日米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)発表の2024年8月消費者物価指数(CPI)

以下の情報は米労働省労働統計局の発表資料より引用・抜粋。

  • 2024年8月の前月比消費者物価指数(季節要因調整済)は前月比0.2%の増加、市場予想も0.2%の上昇

  • 2024年8月の前年比消費者物価指数(季節要因調整済)は全品目では2.5%上昇、市場予想も2.5%の上昇。変動の大きい食品及びエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは前年比3.2%上昇、市場予想も3.2%の上昇、前月比では0.3%の上昇、市場予想は0.2%の上昇

  • 家庭用食品(Food at home)は前年比0.9%上昇。2024年7月は前年比1.1%上昇
  • 電気代(Electricity)は前年比3.9%上昇。2024年7月は前年比4.9%上昇
  • 住居費(Shelter、主に家賃。サービス分野で最大の構成要素でCPI全体の約3分の2を占める)は前年比5.2%上昇。2024年7月は5.1%上昇

全品目の指数は前年同月比2.5%で2021年2月以来の小幅な伸び。ただし前月比コアCPIは市場予想とは一致したものの、6月の0.1%、7月の0.2%、今回の0.3%と3ヶ月連続で伸びている。

またサービス分野で最大部分を占める住居費は前月の前月比0.4%上昇に対して0.5%上昇となっており2024年1月以来の大きな伸び。

ブルームバーグの算出によると住宅とエネルギーを除いたサービス価格は0.3%上昇。前月の3ヶ月振りの0.2%上昇に続き2ヶ月連続で上昇している。


同日の市場の動き

米国株式市場

今回のCPI結果は概ね市場予想通りだったのだがコアCPIではインフレ圧力が未だ根強いことが示唆される結果となり、来週のFOMC会合での利下げが0.50%ではなく0.25%となる可能性が強まったため下落して始まった。しかしその後時間経過と共に結局3市場とも上昇して終えている。これは米政府がエヌビディアにサウジアラビアへの先端チップ輸出を許可することを検討しているという報道があって8.15%上昇し、それに伴いハイテク銘柄が買われたためだろう。実際大手ハイテク銘柄の割合の少ないダウ工業平均は上昇したといってもほぼ変わらず程度。

米国10年債

CPIを受けて9月FOMCでの大幅利下げ可能性が後退したことで利回りは上昇。その後利回りは低下したものの時間の経過と共に利回りは上昇して最終的に前日比利回り取引を終えている。しかしその変動幅が大きくない。

ドル円為替

CPIの発表があった米EDT8:30は上記ドル円チャートのBST13:30。1ドル=141.75円前後から142.50前後までドル高になったがその後すぐ値を戻す。しかしジリジリとドル高となり142円台を維持しながら神経質な動きを続けている。債券と同様CPIがほぼ市場予想通りだったことからか大きな変動とはならなかったようだ。


まとめ

2024年9月発表のCPIはほぼ市場予想通りだったが前月比コアCPIが市場予想より高く、3ヶ月連続で上昇したことからインフレ圧力が必ずしも和らいでいないと判断されたようで、CMEのフェドウォッチによると9月17、18日のFOMCでの0.50%利下げの確率は約15%と、CPI発表前の29%から低下し、0.25%利下げの確率は約85%で71%から上昇している。

株式市場は上昇して終えたものの、個人的にはエヌビディアの上昇にハイテク銘柄が追随した要因が大きいように思われ、もしエヌビディアの上昇が無ければ株式市場はマイナスだった可能性もあったかもしれないと思う。まだまだ市場が安定しているとは言い難いだろう。

結果的にはまずまず無難に今回のCPI発表を通過したわけだが、次は来週のFOMC結果/パウエル議長の発言によって市場がどう動くかに要注目。大きな変動がなく通過できることを願いたいのだが、さてどうなることか。

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