はじめに
2024年7月24日(水)には自分の所有銘柄であるGEベルノバ(GEV)の2024年第2四半期決算発表があった。
「想定していたよりは良いパフォーマンスとなるかもしれない。風力発電事業がやや気にかかるが、この調子を維持して欲しいものだ。」
と書いており5月末には10%近い上昇をしたのだが、自分が思っていた内容とは別の要因だった。またその後は方向感に乏しい動きをしていた印象がある。
そんな中で、今回のGEベルノバの決算内容そしてそれを受けての株価がどうなったか。以下に内容を確認し整理しておく。
2024年第2四半期決算概要
以下の内容は、GEベルノバの企業サイトより引用・抜粋。
- 2024年第2四半期の総売上高(Total Revenues)は82億400万ドル、前年同期は81億1900万ドルで前年同期比1%の増加
- 2024年第2四半期のフリーキャッシュフロー(純現金収支・Free Cash Flow)は8億2100万ドル、前年同期は4億4700万ドルの流出
前回決算まではあった調整後一株あたり利益(Adjusted EPS)の記載が何故か無くなっており、代わりにカンファレンスコール中ではAdjusted EBITDA関連の数値をよく使用していた。
事業部別業績
【Power(電力事業)】
- 受注(Orders):49億7500万ドルで前年同期比27%増加
- 売上(Revenues):44億3500万ドルで前年同期比8%増加
- EBITDA(Segment EBITDA):6億1300万ドルで前年同期比1億4700万ドル増加
- EBITDAマージン(Segment EBITDA margin):13.8%で前年同期比2.5%増加
【Wind(風力発電事業)】
- 受注(Orders):21億6000万ドルで前年同期比44%減少
- 売上(Revenues):16億3900万ドルで前年同期比21%減少
- EBITDA(Segment EBITDA):1億1700万ドルの損失で前年同期は2億5900万ドルの損失
- EBITDAマージン(Segment EBITDA margin):5.7%の損失で前年同期は10.0%の損失
【Electrification(電化事業)】
- 受注(Orders):48億2300万ドルで前年同期比4%減少
- 売上(Revenues):17億9000万ドルで前年同期比19%増加
- EBITDA(Segment EBITDA):1億2900万ドルで前年同期は3100万ドル
- EBITDAマージン(Segment EBITDA margin):7.2%で前年同期比5.1%増加
2024年見通し
2024年の通期見通しは以下の通り。
- 売上(Revenue):340億~350億ドル(前回と変わらず)
- 調整後EBITDAマージン(Adj. EBITDA margin):5%~7%(前回は一桁台半ばの上限(High- end MSD))
- Free cash flow:13億~17億ドル(前回の7億~11億ドルから上方修正)
その他
その他決算発表及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。
- 2024年第2四半期におけるアップデート
- 2件の死亡事故があり救命規則を更新
- 蒸気発電原子力事業の一部をElectricité de France S.A. (EDF)に売却
- この売却に伴い、通常の運転資本及びその他取引完了後の調整を条件として6億ドルの純現金収入を受け取り、9億ドルの税引前利益を認識した
- 停電に備え電力及び電化の容量を増やすため2億ドルの設備投資を実施
- エネルギー移行技術の研究を継続するため2億ドルの研究開発支出を行った
- 係争中の複数雇用者年金制度 (基金) との仲裁結果に関連して、約3億ドルの受取り
- 当四半期は3つのセグメントすべてで調整後 EBITDAマージンの拡大とフリーキャッシュフローの大幅な改善という好調な業績を達成
- 電力事業は引き続き堅調で、今年後半にはHAユニットを含む大型ガスタービンの受注が引き続き堅調に推移し2024年前半よりも好調となる見込み
- 風力発電は依然として最も困難な分野。四半期中に陸上発電の受注残は増加したが、顧客が新規プロジェクトの許可や金利上昇に伴う課題を乗り越えていく中で陸上発電の受注が好転するタイミングについては引き続き慎重
- 電化事業は当社で最も急成長している分野であり、顧客が変圧器やスイッチギアなどの新製品を近代化し、信頼性の高い電力システムを確保して新しい発電源を接続するために重要な新製品に投資するにつれ、収益性の高い成長が続いている
- マクロトレンドはエネルギー転換をリードする当社にとって意義ある機会を継続的に生み出している
- 製造業の成長、産業の電化、EV、データセンターの新たなニーズによって、発電の需要が増加
- エネルギーの安全性と信頼性の両方の目標をサポートするために、送電網インフラへの投資が大いに必要とされている
- 当社の顧客は電力システムの脱炭素化に投資しており、これが低炭素およびゼロ炭素発電と新しい送電網接続の需要を促進している
- 先週、北米のヴィンヤード風力発電プロジェクトでタービンブレードの事故が発生
- タービンは安全に停止し負傷者は出なかった
- 我々は常に安全を最優先に考え、お客様や関係機関と協力して根本原因を特定し、是正措置と再起動計画を実施している
- 根本原因の分析を最終決定する作業を継続しているが、現時点では設計上の問題ではなく、製造上の欠陥がタービンブレードの破損につながったとみている
- 第2四半期にフリーキャッシュフローはプラスとなり前年同期比および前四半期比で10億ドル以上の改善を達成し、第2四半期末のキャッシュ残高は58億ドル
- 第3四半期も全セグメントで前年比で堅調な売上成長とEBITDAマージンの継続的な拡大が見込まれる
- ただし第3四半期には例年同様、ガス電力における停電とサービス収益の季節性により、調整後EBITDAは前四半期比で低下する見込み
- またフリーキャッシュフローが、調整後 EBITDA の減少、設備投資と現金税の若干の増加、第2四半期に受け取った仲裁還付金(が発生しないこと)により大幅に減少すると予想
- ヴィンヤード風力発電プロジェクトにおける事故の今後の見通しに関する質問
- カナダ工場で製造上の欠陥が見つかったが、これは検査または品質保証プロセスを通じて特定されるはずのものだった
- そのため既存のデータを使用して洋上風力発電用に製造したすべてのブレードを再検査する
- はっきりさせておきたいのは、これは私たちがやり方を知っている仕事であり、すべてのブレードに対して慎重に徹底したプロセスを実施する
- 今日は
- ヴィンヤード風力発電プロジェクトに関するタイムラインについては話さない
- 今後の納品タイミングに関しては、現在一時停止中だが一部の回収が2024年から2025年に移行するリスクがあることは明らか。これは当社がまとめた財務ガイダンスに組み込まれている
- 風力発電が2025年に黒字化する見通しについての質問
- 2025年にセグメントが黒字化するという財務計画は依然として一貫している
- 正確な転換点では言えないが、風力発電のマージンは順調に改善しており、時間が経過するにつれてより良い価格設定のバックログを消化することになるため2025年の見通しには自信を深めている
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2024年第2四半期の総売上高(Total Revenues)は82億400万ドル、市場予想の82億6000万ドルを下回っている
となっている。
まとめ
上記の様な決算を受けてGEベルノバの株価は
前日比4.45%下落。同日の米国市場が
大型ハイテク7銘柄「マグニフィセント・セブン」で決算のあったテスラ(TSLA:12.33%下落)、アルファベット(GOOGL:5.04%下落)の下落が影響し、S&P 500は2022年12月、NASDAQ総合は2022年10月以来最悪のパフォーマンスとなったのと比べても、GEベルノバの下落は大きくなっている。
取引開始時点では上昇して始まったものの時間の経過と共に下落しており、決算自体は悪くなくフリーキャッシュフロー見通しも引き上げたのだが、北米のヴィンヤード風力発電プロジェクトでのタービンブレード事故がGEベルノバの製造上の欠陥であったことが重しになったのだろう。
決算後数日を含め2024年4月に分割されたGEベルノバの株価推移を市場(S&P 500)と比べてみると
分割後は冒頭に述べた通り5月末ぐらいまでは概ね右肩上がり。その後は方向感が定まらない動きが続いたものの7月17日に大幅下落(カンファレンスコールで言及されたヴィンヤード風力発電プロジェクトにおける事故のため)し、今回の決算でも下落したことから下落傾向になることを恐れていたのだがその後26日8%を超える反発をして市場(S&P 500)の4.19%上昇に対して、20%を超えるパフォーマンスとなっている。
26日に大きく反発したのは、以下の複数の証券会社がGEベルノバの目標価格を引き上げたためだろう。
- Mizuho Securities:186ドルから208ドルに上方修正(投資格付けはOutperformで変わらず)
- Goldman Sachs:195ドルから216ドルに上方修正(投資格付けはBuyで変わらず)
- RBC Capital Markets:180ドルから192ドルに上方修正(投資格付けはOutperformで変わらず)
詳細な目標価格上方修正の理由までは追えていないのだが、ヴィンヤード風力発電プロジェクトにおける事故の影響は短期的なものであり、それにもかかわらず見通しを上方修正しているのを評価している点が共通している。これらアナリストの見解/GEベルノバの経営陣の見通しが正しく、今後も堅調な業績/株価を維持してくれることを望みたい。