はじめに
2024年5月30日(木)の米国株式市場は
いずれも前日比マイナスと低調だったのだが、そんな中自分の所有するワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)株は
5.48%の上昇。調べてみたところ同日最高経営責任者(CEO) のDavid Zaslav氏のBernstein 40th Annual Strategic Decisions Conferenceにおける以下の様な発言はあった。
- 我々はNBA(全米プロバスケットボール協会)と引き続き交渉している
- 我々はNBAとの経験に満足している。しかし一般的に我々はスポーツ界のリーダーであり世界中に豊富なコンテンツを提供している
- 最近の実績としてヨーロッパにおけるオリンピックやNHL、Nascar、全米大学アメフトの放映権を列挙
ただ個人的にはこのカンファレンスでのCEO発言が株価上昇に寄与したとは思えない。すべてのカンファレンス内容をカバーしたわけではないが、他に特に目立ったニュースはなかったのでもしかするとそれが影響したかもしれないが、最近のNBA放映権の報道を見る限りは案sンできる様な状況ではないと思っている。
以下、NBAの放映権に関する現状について簡単に整理しておく。
2024年5月末時点でのNBAの放映権に関する状況
2024年5月にあったワーナーブラザース・ディスカバリーの2024年第1四半期決算でもNBAの放映権については
- 誰もが一番重要と考えているであろうNBAとの放映権については、約40年に渡ってパートナーシップを築いてきており、双方にとって意味のある合意に達することができることを期待(Hopeful)している
と触れられている。
【現状】
- NBAの放映権は現在、ワーナーブラザース・ディスカバリーのTNTネットワーク(パッケージB)とウォルト・ディズニーのESPN(パッケージA)が所有しているが、来シーズンで契約終了となる
- 最近ワーナーブラザース・ディスカバリーの一部のNBA放映権をコムキャスト(CMCSA)のNBCユニバーサルが奪う可能性について報道がなされている
- 2024年4月にはアマゾン(AMZN)がプライム・ビデオ・サービスを通じた10年間にわたるストリーミング配信の契約の枠組みを決定したとの報道がなされている(アマゾン、NBAからの正式発表は無し)
- ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、ウォルト・ディズニーは契約更新のため現在年間15億ドルの支払いを26億ドルに増額することに同意したとのこと
- スポーツ・ビジネス・ジャーナルの報道では、コムキャストの契約(パッケージB)は25~26億ドル、アマゾンの契約は18~20億ドルとのこと
- ワーナーブラザース・ディスカバリーはパッケージBに対して現在年間12億ドルを支払っているとされるが、3月から4月の独占交渉期間中に上述の様にディズニーが増額で合意したのに対して、増額受け入れを拒否したとのこと
- そのためコムキャストが入札に参加できている
- ワーナーブラザース・ディスカバリーはNBAが契約を締結する前に第三者のオファーにマッチングできる権利があるとの報道もあるが、詳細は不明
まとめ
以上ワーナーブラザース・ディスカバリーの理由が今一つ不明な株価上昇を契機としてワーナーブラザース・ディスカバリーのNBA放映権の現状についてまとめてみた。
直近の決算発表や今回の講演では経験を理由に楽観的ともとれる発言をCEOのZaslav氏はしているが、上述の様にワーナーブラザース・ディスカバリーが翌年以降のNBA放映権を維持できるかは疑わしい。
そしてNBAの放映権を獲得できなかった場合は、ワーナーブラザース・ディスカバリーにマイナス影響をもたらすだろうというのが大勢を占めている。短期的には放映権損失に伴うコスト削減により利益を押し上げる効果はあるものの、長期的には広告販売やユーザー維持に悪影響を及ぼすというのがその理由で、自分も納得感がある。
当然ワーナーブラザース・ディスカバリーの経営陣は報道されているような点を考慮した上で交渉しているのだろうが、誤った判断を下さないことを願いたい。もっとも独占交渉期間中に合意できなかったことが既に間違いだった気もするのだが・・・。