はじめに
2023年1月26日(木)には自分の所有銘柄であるダウ・インク(DOW)の2022年第4四半期決算発表があった。
「決算内容とアナリストとのカンファレンスコールではエネルギー・原材料コストの高騰とインフレ圧力、そして為替の影響が利益に影響を及ぼしており、その傾向は今後も続くと思われる。」
「個人的にはダウ・インクは欧州・中東・アフリカ・インド(EMEAI)地域の売上が35%程度を占めており、これからの北半球の冬場に向けて特に欧州でのエネルギーコストが懸念されるので、次四半期の決算もそれ程期待できない気がしている。」
と書いていたのだが実際にはどうなったか。以下にその決算内容を確認し整理しておく。
ダウ・インク2022年第4四半期決算概要
以下の情報はダウ・インクの企業サイトより引用・抜粋。
- 2022年第4四半期の総売上(Net Sales)は118億5900万ドル、前年同期は143億6400万ドルで前年同期比17%減
- 2022年第4四半期の一時項目を除く一株当たり利益(Operating Earnings Per Share)は0.46ドル、前年同期は2.15ドル
EPSが前年に比べて大きく減少しているのは、インフレ進行に伴いエネルギー及び原材料コストが上昇した事によるところが大きい。
事業部別業績
包装・特殊プラスチックの売上高は16%減の60億7300万ドル。出荷量が4%減少し、価格(Local Price)も9%低下、為替が3%の逆風となっている。営業EBIT(Earnings Before Interest and Taxes:支払利息控除前当期純利益)、営業EBITマージンが大きく減少しているのは、価格の低下、エネルギー及び原材料コストの上昇によるもの。
素材・インフラストラクチャの売上高は前年比20%減の36億5300万ドル。価格(Local Price)が1%減少し、出荷量も14%減少、為替が5%の逆風となっている。営業EBIT、営業EBITマージンが大きく減少しているのは、需要の低下と特にEMEAI(Europe, the Middle East, Africa, and India)におけるエネルギー及び原材料コストの上昇によるもの。
パフォーマンスマテリアル・コーティングの売上高は前年同期比20%減の20億5800万ドル。価格(Local Price)が2%減少し、出荷量も13%減少、為替が5%の逆風となっている。
営業EBIT、営業EBITマージンが大きく減少しマイナスに転じているのは、価格の下落と需要の低下に伴い稼働率を調整したため。
2023年通期見通し
2023年通期の考慮要因(FY2023 MODELING CONSIDERATIONS)は以下の通り。
アナリストとのカンファレンスコールでの説明では以下の点が説明されていた。
- Equity Earnings(投資収益):前年比3億~4億ドル減少
- Turnaround Costs(改革コスト):前年比3億ドル減少
- Year-End Share Count(年末の株式発行数):7億1000万株(前年とほぼ変わらず)
- CapEx(資本的支出):22億ドル(2022年の18億2300万ドルから増加)
2023年第1四半期の見通しは以下の通り。
一番売り上げの低いパフォーマンスマテリアル・コーティング部門以外はいずれも今四半期に比べて売上減少となる見込みで、全体の売上は110億~115億ドルとしている。
その他
前回の決算発表で2023年にコストを10億ドル圧縮する計画の概略を提示していたが、今回はより詳細な情報を提供している。
前回は10億ドルのコスト削減の内容については説明されていなかったが、今回は
- 2000人の人員削減により5億ドル
- 営業経費(OpEx)の削減により5億ドル
と内容を明らかにしている。また2023年第1四半期に関連費用として5億5000万~7億2500万ドルを計上する見込み。
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想を比較してみると、
- 2022年第4四半期の総売上(Net Sales)は118億5900万ドル、市場予想の120億ドルを下回っている
- 2022年第4四半期の一時項目を除く一株当たり利益(Operating Earnings Per Share)は0.46ドルで、市場予想の0.58ドルを下回っている
- 2023年第1四半期の売上見通しは110億ドル~115億ドル、市場予想は130億2000万ドル
となっている。
まとめ
上記の様な決算を受けてダウ・インク株は
前日比0.40%の上昇。同日の米国市場が
いずれもハイテク銘柄中心に上昇しているのと比べるとやや見劣りはする。
とはいえ上記ダウ・インクの決算内容は市場予想を下回り、自分の印象ではかなり悪かったと思う。実際日中の動きを見ると
開場直後の不安定な動きから前日比2%下落している。その後は上昇して前日比プラスで終えているが市場に引きずられた感が強い。今後の動きには注意が必要だろう。
ただ、冒頭に挙げた前回決算時に懸念したほどダウ・インク株の動きは悪くない。前回決算の2022年10月20日から
は約30%上昇しており、S&P 500を20%程上回るパフォーマンスとなっている。今後も自分の想定に反して無難な株価推移をしてくれるといいのだが。