はじめに
米現地時間2022年12月13日(火)、14日(水)には2022年8回目となるFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)が行われた。
前回11月まで4会合連続で75bpの利上げを決定していたが、それ以来各種指標がインフレ鈍化の兆しを見せており、今回は利上げを50bpに落とす予想が市場では主流となっていたが実際の決定、そして会合後のパウエル議長の会見は市場にどのような影響を与えたのか。以下内容を確認し整理しておく。
2022年12月13、14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)結果及びパウエル議長の発言まとめ
FOMC会合結果
以下は米連邦準備制度理事会(FRB)のサイトで現地時間14時に公開されたFederal Reserve issues FOMC statement(FOMC声明)より引用・抜粋。
内容はほぼ前回と変わらず大きな変化があったのは以下の点のみ。
- The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run. In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 4-1/4 to 4-1/2 percent.
委員会は最大の雇用と長期的にインフレを2%の率で達成することを目指しています。これらの目標を支援するため、委員会はフェデラルファンドレートの目標範囲を4.25~4.5%に引き上げることを決定しました。
フェデラルファンドレートの目標範囲が4.25~4.5%となっており、前回が3.75~4%だったので、今回は市場が予想していた通り50bps(0.5%)の金利引き上げとなっている。
しかし今回のポイントはFOMC声明と同時に発表される経済予測要旨(Summary of Economic Projections)と思われ
左下のフェデラルファンドレートの2023年予測中央値が9月の4.6%から5.1%へと0.5%上昇しており、来年も金利引き上げが続くことを示唆している。これは市場の想定外だったのではなかろうか。
パウエル議長の発言
以下はFOMC会合結果開示後のパウエル議長の会見における主な発言より。
- 次回FOMC会合(2023年1月31日、2月1日)での利上げ幅は今後入手するデータ次第
- インフレ率が持続的な形で2%へと低下していると委員会が確信するまで、利下げが検討されることはないだろう
- 物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要があるだろう
- 10、11月のインフレに関するデータは物価上昇圧力の緩和を示すものだが、インフレが下向いているとの確信を得るにはさらに多くの証拠が必要
- まだ十分に景気抑制的な政策スタンスではないというのが、我々が本日下した判断
- どの程度まで金利を引き上げるかはインフレの進展や金融情勢、政策をどれだけ制約的にする必要があるのかの判断に基づく
- (インフレ目標水準の引き上げを検討する可能性があるかという問いに)それは検討していない。いかなる状況下でも検討するつもりはない。我々はインフレ目標を2%に維持し、われわれが有する政策手段を使ってインフレ率を2%に回帰させる
- 物価の安定を取り戻すのに完全に痛みのない方法があれば良いがそれはない。我々は最善の方法を取っている
FOMC会合結果及びパウエル議長の発言を受けての市場
上記FOMC会合結果及びパウエル議長の発言を受けて市場にどの様な動きがあったか確認してみる。
米国主要3市場
上述の様に予想通り0.5%の利上げ発表で利上げペースは落ちたのだが、米国市場は発表と同時にいずれも下落。これは恐らく2023年の金利見通しが引き上げられたことが予想外だったことと、パウエル議長の会見でも利上げはまだ続くことが示唆されたことから市場に警戒感が強まったのだろう。
米国債長期金利(10年債)
米国債長期金利(10年債)の利回りの日中変化は以下の通り。
前日13日は開場前発表のCPI結果を受けて大きく利回りが低下し、14時発表のFOMC会合結果、経済予測要旨でやや利回りが上昇したもののその後は再び利回りは低下と不安定な動き。
ドル円為替
ドル円為替の日中変化は以下の通り。
やはり前日のCPI結果発表時の変動が大きく、FOMC発表後に一時136円近くまでドル高となったがその後急激に値を戻し、その後はじわじわとドル高となっている
まとめ
今回のFOMCは50bpの利上げと事前の予想通りだった訳だが市場は想定に反して下落して終えている。これはやはり経済予測で来年のフェデラルファンドレート予測中央値が9月時点より上昇しているため、利上げの減速は予想された程ではないと市場がみたためだろう。
とはいえ市場、米10年債、ドル円為替のいずれも前日のCPI結果で変動した程は大きく上下していないので、結果だけ見ると自分が思っていたよりも穏当にイベントを通過したとも言える。
気になる今後だが、本日15日(木)は小売売上高、失業保険申請件数、フィラデルフィア連銀製造業景気指数などの割と重要な指標が発表されるのでFOMC結果と併せて市場はそこそこ動きそうな気がするが、以降はあまり重要な指標がなく米国のクリスマス休暇と相まって落ち着いた動きになりそうな気がする。
ただ2023年の金利見通しが予想外だったことから、それ程重要とは思われない経済指標にも市場は敏感に反応して神経質な相場が続く可能性もある。
何とか前者の想定通り落ち着いた相場で年内を終えて欲しいものだ。