はじめに
2021年9月から
米債務上限問題に関するアップデートその2(2021/12/11)
と米国の債務上限問題に関して適宜アップデートしてきたが、2021年12月16日にバイデン大統領が債務上限引き上げに関する法案に署名をしてひとまずこの問題は回避された。
以下に前回からのアップデートを含めて整理しておく。
2021年12月13日週の米債務上限問題に関する動き
【12月14日】
- 米上院が連邦政府の債務上限を2兆5000億ドル引き上げ、31兆4000億ドルとする法案を可決
- 上院での採決結果は賛成50、反対49(定数100)
- 上院での法案可決には本来60票が必要だが、この債務上限問題に限って単純過半数での議決を可能とする法案が先週成立していたため可決
【12月15日】
- 上院での可決を受けて下院でも同法案を可決
- 下院での採決結果は賛成221、反対209(定数435)
【12月16日】
- バイデン大統領が債務上限引き上げに関する法案に署名
今回の米債務上限引き上げの結果
- 民主党上院トップのチャック・シューマー院内総務によると、今回の法案で2023年初めごろまでの連邦政府の資金需要に対応できる見込み
- 先週の市場(S&P 500)の動きは以下の様になっており、債務上限問題の進展は市場にあまり影響を及ぼさなかった模様
まとめ
ということで秋から気になっていたアメリカの債務上限問題はおよそ1年間の猶予をまた得たことになる。そして取りあえずの決着となったにもかかわらず思ったよりも市場には影響がなかった。
これは前回にも書いたが
「米債務上限問題は解決することが市場の上昇要因となるのではなく、解決しなかった場合に市場の押し下げ要因になるに過ぎないということだった可能性が高い。」
ということなのだろう。
短期的に大きなマイナスの影響が市場に出なかったが、1年後にはまた同じ問題が論じられることになるだろうし、2022年年11月にはアメリカで中間選挙があるためその結果次第では今回よりも市場に与える影響が大きくなる可能性がある点は頭に入れて置いた方がいいかもしれない。
また単純に債務上限が引き上げられデフォルトの可能性が回避されたとはいえ、米国の債務には注意が必要だろう。例えば現在米議会で議論されているBuild Back Better Actは1.75兆ドル規模とされているが実際の支出規模は膨らむ可能性もある。また議会予算局(CBO:Congressional Budget Office)の試算では、BBB法により今後10年間で約3670億ドルの財政赤字が発生する見通しともされている。その後イエレン財務長官は、内国歳入庁(IRS)による徴税強化に関するCBOの増収見込み(2070億ドル)は過少で、財務省の試算ではその増収分を4000億ドル程度であり同法案のコストは十分に支払われると主張している。こういった事を考えると本当に2023年初めまで財源が確保できるのかもやや不安な点もある。
色々思う所はあるのだが、今回は米債務上限問題が市場への大きなマイナス影響が無かったことを素直に喜ぶべきだろう。