エクソンの委任状争奪戦暫定結果と気候変動対策関連(2021/5)

はじめに

昨日(米時間)2021年5月26日(水)には、今日日本でもそれなりに大きく報道されていたが、以前

エクソンの委任状争奪戦/プロキシーファイト(2021/3/17)

でまとめたエクソン・モービル(XOM)とアクティビスト投資家であるEngine No.1の委任状争奪戦(プロキシーファイト)の暫定結果が明らかになった(暫定としているのは昨日の2021 Annual Meeting of Shareholders時点では集計が確定していないため)。

以下その内容を整理するとともに、同日あった業界の気候変動対策についての別情報なども確認しておくことにする。


2021年5月26日のエクソン・モービルの発表

以下はエクソン・モービルの企業サイトより引用・抜粋。

タイトルは

  • ExxonMobil announces preliminary results in election of directors
    エクソン・モービルが取締役選任の暫定結果を発表

内容は

  • ExxonMobil said today that based on preliminary vote estimates by its proxy solicitor, shareholders have elected eight of ExxonMobil nominees to the board of directors and two of Engine No. 1 nominees.
    エクソン・モービルは本日、代理勧誘者による予備投票の見積もりに基づきエクソン・モービルの候補者8名を取締役会に選出し、Engine No.1の候補者2名を選出したと発表しました
  • Vote results for five nominees were too close to call
    5人の候補者の投票結果は接戦で確定しませんでした

というもので、この後会長兼最高経営責任者(CEO)Darren Woods氏の、新しい取締役を歓迎する、これまでエクソンは株主のサポートを受けながら低炭素ソリューション、コスト削減、収益改善に取り組んできており、更にそれらを推進していきたいという株主のフィードバックを尊重する旨が述べられている。

そして取締役投票の暫定結果が述べられているがまとめると

  • 再任されたエクソン・モービルの取締役は8名
  • Engine No.1が推薦した候補者から2名が選出
  • 5名(エクソン側4名、Engine No.1側1名)の結果は未確定
  • Engine No.1が推薦した候補者1名は選出されず

となっている。補足するとエクソンの取締役会は12名から構成されている。また、再任されたエクソンの取締役8名の内2名(Michael Angelakis氏、Jeffrey Ubben氏)は、

エクソン(XOM)が著名アクティビストを取締役に(2021/3)

でまとめた様に2021年3月に選出されたばかりで、Jeffrey Ubben氏はアクティビストとして知られている人物。


市場の反応

昨日のエクソン株の動きは以下の通り。2021 Annual Meeting of Shareholdersは米中部時間(CT:9:30。東部時間ETでは10:30)に開催されている。

青線はS&P 500、ピンクはニューヨーク原油先物。

株価は

と1.17%の上昇。同日のダウ工業平均が0.03%、S&P 500が0.19%、NASDAQが0.59%いずれも上昇したのに比べてもまずまずの上昇振り。

こうした動きを見ると、取締役投票の結果はエクソンの「昨日の」株価には悪い影響を与えなかったようだ。これはある程度予測の範囲内だったためだろうか。

Engine No.1自体のエクソン株保有は以前にも触れたように約0.02%にしか過ぎないのだが、5月25日に資産運用世界最大手のブラックロック(BlackRock Inc.)が、エクソンの取締役会メンバーの選任にあたり、Engine No.1が提案する4人の候補者のうち3人に賛成票を投じた、と報じられたり(ブラックロックはエクソン株を約6%保有する第三位の株主)、またカリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)、ニューヨーク州公的年金基金(New York State Common Retirement fund)と言った規模・影響力の大きい年金基金も、以前から投資ポートフォリオのCO2排出量削減を進めており、Engine No.1を支持する旨の報道が以前からなされていたしこともあり、この結果もある程度織り込み済みだったということなのだろう。

一部報道では「歴史的」や「惨敗」といった単語も目に付いたが、少なくとも「昨日の」エクソン株に与えた影響は軽微だった。


同日の気候変動対策関連ニュース

シェブロンの年次株主総会

同じ日にシェブロン(CVX)も年次株主総会があり、全ては確認していないのだがそこでも気候変動対策に関連する出来事があったようだ。大きいところでは

  • 中長期的にエネルギー製品からのSCOPE 3排出量を大幅に削減するよう求める株主提案が株主投票の61%を獲得

これはシェブロンが、SCOPE 3の排出量をレポートするため既に実行可能な措置を講じているとして株主に提案に反対票を投じることを推奨していた株主提案案件。

ちなみにSCOPE 1~3は温室効果ガスに関する

  • SCOPE 1:企業が所有または管理しているものからの直接排出量
  • SCOPE 2:企業が購入したエネルギーからの間接的な排出量
  • SCOPE 3:企業に所有、管理されていない資産から間接的に発生する排出量

といった定義で、SCOPE 3は監視が最も難しいとされている。

ロイヤル・ダッチ・シェルの温暖化ガス削減目標

これまた同じ日にオランダの裁判所でロイヤル・ダッチ・シェルの温暖化ガス削減目標についての裁判の判決が行われており、

  • ロイヤル・ダッチ・シェルの温暖化ガス削減目標は十分でないとし、2030年までに2019年比で45%削減するよう命じる判決

が言い渡されている。ロイヤル・ダッチ・シェルは上訴するとのこと。

ちなみにシェルが発表している気候変動に関する戦略は温暖化ガス排出量を生産量当たりで

  • 2023年までに2016年比6%以上
  • 2030年までに2016年比20%以上
  • 2035年までに2016年比45%以上
  • 2050年までに100%削減する

という目標。

付け加えると、エクソン・モービル(シェブロンも)は100%削減(ネットゼロ)への計画を発表していない(いずれも2020年代半ばから後半までの削減目標は提示しているが)。


まとめ

2021年第1四半期決算のまとめの際に

「委任状争奪戦については今回の決算ではアナリスト1名から現行取締役に関する質問はあったがその程度。報道も時折なされているのだが、その情報を受けてエクソン株が大きく動く事は無かった様なので、実際に結果が出るまではあまり気にしなくて良いのかもしれない。」

と書いていた結果の確認をしてみた。

株価自体は上にも挙げた様に目立つほどの変動ではなく、下落もしなかったので短期的な株価という面ではまずは一安心といったところか。

ただ調べている最中にエクソンに加え、シェブロンやロイヤル・ダッチ・シェルでも気候変動/温室効果ガスに関する出来事があり、自分が思っていたより削減に向けた動きが加速していることが判明したのが個人的には驚きであり収穫でもあった。単に自分の意識が低いだけかもしれないが、エクソン株を購入した2003年3月(10株のみ。期間が空いて2014年から買い足し現在1180株)時点ではそこまで考えて購入などしていなかった。まさかこういう事態になるとは。

そしてこの気候変動/温室効果ガスへの取り組み加速が自分の所有しているエクソン・モービル株の株価・業績・配当にどの様な具体的な影響を及ぼすのかがさっぱり見えないのが個人的に大きな問題。昨日の株価は予想したほどの変動は無かったが今後どうなるのだろうか。

昨年2020年10月末に完全リタイアをし配当金生活を始めた自分にとっては、株価は下がっても構わないのだが、配当が減配・停止となるような状況だけは避けてほしい。ただでさえ今月自分の主力配当銘柄のAT&Tが来年以降減配になることが判明したばかりなので。

エクソンの配当は直近では4月末に発表(9四半期連続同配当。昨日の株価で税引前配当率約6%)だったので、次回の発表は7月末の第2四半期決算発表の前となるだろうが、それまでもエクソン株に何らかの大きな動きが無いかについて注意深く確認していくしかないか。

確かにDarren Woods氏がCEOになってからCOVID前でも業績はパッとしなかった(配当が2年以上据え置きな事からも判る)ので、新しい取締役会がエクソンの株価・業績・配当・将来に好影響を及ぼすと良いのだがなあ・・・。

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