はじめに
昨日2021年3月1日(月)の米国市場は、先週木、金の大幅な下落から反発してダウ工業平均が1.95%、S&P 500が2.38%、NASDAQが3.01%の全面高。
自分のポートフォリオも
とケロッグ(K)を除いて前日比上昇。ちなみにケロッグの下落は、
と同業他社も市場に比べると冴えない動きだったので、ケロッグがどうこうというよりは業種自体が低調だったのだろう。
それはさておき昨日の上昇の中自分の所有銘柄で気になったのはエクソン・モービル(XOM)。エクソンより上昇率が高い銘柄は複数あるのだが、昨日エクソンは掲題の発表をしており現在のエクソンの動きを考えるにはいい機会なので、その内容について整理しておくことにする。
2021年3月1日のエクソンの発表
以下はエクソン・モービルの企業サイトより引用・抜粋。
- Exxon Mobil Corporation said today that Michael Angelakis and Jeffrey Ubben have joined its board of directors.
エクソン・モービル・コーポレーションは本日、Michael AngelakisとJeffrey Ubbenが取締役会に加わったと発表しました
この後に両名の経歴や、最高経営責任者(CEO)Darren Woods氏の歓迎のメッセージが続くのだがここでは割愛。
ここでのポイントはJeffrey Ubben氏の取締役任命だろう。Jeffrey Ubben氏の経歴を簡単にまとめると以下の様になる。
- 2000年に有名なアクティビスト投資会社であるValueAct CapitalPartnersを設立・運営
- 2020年6月にValueAct CapitalPartnersから退き、社会的または環境的視点を持つ企業への投資(いわゆるESG(Environment/Social/Governance)投資)に焦点を当てたInclusive CapitalPartnersを立ち上げ
- ValueAct期間中は石油会社BPに出資したり、過去3年はAES(エネルギー会社)の取締役を務めていた
Jeffrey Ubben氏の取締役任命の意味合い
大まかな背景としてエクソン・モービルは、一部の競合他社が最近クリーンエネルギーへの移行について話し始めたにもかかわらず、石油価格の回復と競合のアップストリームへの投資不足による供給不足を期待して今後数年間で原油生産を増やす計画であり、まだ長期的に旧来の炭素燃料へ固執しているように市場には受け止められている。
特に2020年は、長期に渡る新しい石油およびガス事業への支出の増加とCOVID-19によって引き起こされた原油価格の暴落にさらされ過去40年で初めて年間損失となり、株価も大幅に下がったこともエクソンの戦略に対する懸念が高まっていた。
このような状況も相まって、直近の四半期決算でも少し触れたがESGを標榜する投資家グループ/ヘッジファンドのエクソンへの要求が大きくなっている。
要求を非常に簡単にまとめると、
- クリーンエネルギーに重点を置いた財務の改善
- それを成し遂げるためのエネルギー業界に経験のある取締役の任命
ということになる。
エクソンも要求に対し昨年来
- 取締役の新任
- 新しい低炭素事業の設立を発表
- 石油関連設備投資額の削減
- 温室効果ガス排出量削減の新たな目標提示
といった施策を打ち出してはいるものの、市場/投資会社/ヘッジファンドからは他社に比べて遅い、効果が薄いなどの批判が多い。
今回のJeffrey Ubben氏の取締役任命もそういった批判・要求への対応の一環なのだろう。
この発表を受けて投資会社/ヘッジファンドのコメントは以下の通り。
【DE Shaw】
- “significant capital markets and capital allocation experience to the boardroom and will provide meaningful value to the Company”
「重要な資本市場と資本配分の経験を取締役会にもたらし、会社に有意義な価値を提供する」
【Engine No.1】
- “We remain confident our nominees bring the right experience and skills to help put ExxonMobil on a path to sustainable, long-term value creation for the benefit of all shareholders.”
「私たちはすべての株主の利益のため、エクソン・モービルを持続可能な長期的な価値創造への道に導くため(我々の推薦する)候補者が適切な経験とスキルをもたらすと確信しています」
DE Shawは一定の評価を示しているようだが、Engine No.1は満足しておらず彼らが推薦する4名の取締役候補者を任命するよう圧力をかけていく方向のようだ(ちなみにエクソンの取締役の定年は72歳で現行メンバーの4人が72歳か今年72歳になる)。
まとめ
この発表が昨日のエクソンの株価にどの様な影響があったかは冒頭の通り市場そのものも大幅上昇だったので分かりにくいが、少なくとも大幅なマイナス要因とは捉えられてはいないようだ。今後のエクソンの戦略が投資会社/ヘッジファンドと協調したものになっていくのかが気になるところ。
過去1年のエクソンの株価を見てみると、
2020年11月から上昇基調で1年前比ではプラスになっているものの、過去5年間で見ると
長期的な下落傾向からの抜け出したとはとても言えないだろう。
今週はExxonMobil’s 2021 Investor DayやOPECプラスの会合といったエクソンの株価に影響しそうなイベントがあるのでそちらにも注目し、戦略・業績・株価に好影響を及ぼす内容であることを期待したい。