はじめに
日本でも報道されていたが、ボーイング(BA)は737MAXが2度の墜落事故を起こし346人の死者を出したことを巡って司法省から刑事捜査を受けていた問題で、25億ドルを支払って和解することがダラスの連邦裁判所に7日提出された文書で明らかになった。
以下にその内容を整理しておくと共に、今月に入ってあったボーイングの投資格付けのアップデートについても確認しておく。
ボーイングと司法省の和解内容
以下はボーイングの企業ページより引用・抜粋。
- ボーイングは約25億ドルの罰金・補償を支払うことで司法省と和解
- 支払金の内訳は、制裁金が2億4360万ドル、737MAXの顧客に対する補償金が17億7000万ドル、事故の遺族向けに設立する補償基金が5億ドル
- 今回の和解を受けボーイングは3年間訴追手続きを猶予され、その間に合意事項を順守すれば起訴は取り下げられる
また同じ発表の中で
- Boeing’s announcement of the agreement was accompanied by an 8-K filing with the Securities and Exchange Commission, which reflected that the Company had taken a $743.6 million charge to earnings in connection with its commitments under the agreement.
ボーイングの合意発表には、証券取引委員会への8-Kの提出が伴いました。これは当社が合意に基づくコミットメントに関連して収益に7億4360万ドルの費用を負担したことを反映しています
としている。
今回の司法省との和解と業績への影響
まずは上に述べた様に今後司法省との和解に基づき罰金・補償金が収益から捻出されることになる。ただ、この和解金は想定されていたよりも少額だったようで、市場の反応は限定的だったように思われる。
一方で、今回の和解はあくまで司法省とのものでありボーイングの法的問題の終焉を意味するものではないという事は忘れてはいけないだろう。
実際に米国証券取引委員会と連邦航空局はそれぞれ別々の調査を行っている最中でもある。
2021年1月4日Bernsteinのボーイング投資格付けのアップデート
投資格付け:Market PerformからUnderperformへ下方修正
目標株価:221ドルから199ドルへ下方修正
【BernsteinのアナリストDouglas Harned氏の見解要旨】
- “We had seen Boeing as fairly valued since the stock rose after announcements on high efficacy vaccines for covid-19,”
「covid-19の高効能ワクチンの発表後に株価が上昇して以来、ボーイングはかなり評価されていると考えていました」 - “The 737 MAX is now in service and deliveries have restarted (no surprise, but slightly behind our forecast).”
「737MAXは現在稼働中であり引き渡しが再開されました(当然のことですが、予測よりわずかに遅れています)」 - “the five-year delivery and free cash flow outlook was only about half of our 2018 outlook,”
(しかし)「5年間の納品とフリーキャッシュフローの見通しは、2018年の見通しの約半分にすぎませんでした」 - “Recently, the 787 has come under more pressure, which we do not believe the market fully appreciates.”
「最近787はより大きなプレッシャーにさらされていますが、市場が十分に評価しているとは思えません」 - “we lower our 2020-21 free-cash flow estimates.”
(その結果)「我々は2020-21年の純現金収支の見積もりを引き下げました」 - “We estimate 787 issues could significantly hurt free cash flow through cost of repairs, compensation to customers, timing of engine cash payments, and less operating leverage.”
「787の問題は、修理費用、顧客への補償、エンジンの現金支払いのタイミング、経営レバレッジの低下を通じて、フリーキャッシュフローに大きな打撃を与える可能性があると推定しています」
自分も737MAXに注意しがちであったが、787に関する懸念に言及しているのが興味深い。
まとめ
この様な状況を受けて年初来のボーイングの株価は以下の様になっている。
Bernsteinの格付け下方修正により5.3%下落したものの、市場の上昇につられて持ち直したが、司法省との和解報道でやや下落という流れになった。
先日737MAXの運航再開時に2021年1月27日に予定されている2020年第4四半期決算について触れているので特段の個人的なアップデートは無いのだが、今回の787に関する懸念と司法省との和解は考慮されていなかったので気に掛かるところ。
来週には司法省との和解に関して色々な見解が出てくると思われるのでそれらを確認しておくことにし、787に関しては1月末の決算発表時により気を付けてチェックすることにしよう。