はじめに
2020年11月18日(現地時間)、掲題の通りボーイングの737MAXの運航停止措置が解除された。以下にこれまでの流れを整理しておくことにする。
ちなみに運航再開の報道があった2020年11月18日のボーイングの株価は
3.21%の下落。同日のダウ工業平均が1.16%、S&P 500も1.16%、NASDAQが0.82%それぞれ下落していたのだが、それを差し引いても大きい下落となった。この点についても考えてみたい。
737MAXが運航再開に至るまでのおさらい
折に触れてボーイング737MAXについてはまとめてきたが、ここで簡単に整理しておく。
2018年10月:インドネシアのライオン航空737MAX型機で墜落事故が発生し、乗員乗客189人が死亡。この時点では株価等に大きな影響は無し
2019年3月:エチオピア航空が運航するボーイング737MAX型機が墜落して搭乗していた157人が死亡。この際に株価が大きく下落し、各国が同型機の運航を停止
2019年6月:737MAXに新たな潜在的リスクが発見される。
2019年7月:ボーイングの2019年第2四半期決算時に、当時のCEOが当局との認証飛行を9月に実施した後、早ければ10月にも737MAXの運航が再開されると確信していると発言
2019年10月:737MAXに搭載された機体の姿勢を自動で制御する「MCAS」と呼ばれるシステムに関して、社内の技術責任者がうまく機能しない可能性があることを運航の認可を受ける前に指摘していながら、アメリカ連邦航空局(FAA)に報告していなかったことが明らかになる
2019年11月:この時点でボーイングはこの四半期中にMAXフライトコントロールソフトウェアアップデートのFAA認証、機体引き渡し再開を12月、運航再開へ向けたトレーニングを1月に開始することを目標としていた
2019年12月:ボーイングがFAAの承認が2020年にずれ込むため、1月から737MAXの生産を一時停止すると発表。同月にはCEOが交替
2020年1月:ボーイングが現時点では737 MAXの運航再開は2020年半ばに開始されると推定していると発表
2020年5月:737MAXの生産をワシントン州の工場で緩やかなペースで再開したと発表。規制当局の承認を得た上で第3四半期に引き渡しを再開するとの見通しを示す
2020年6~7月:ボーイング737MAX型機が試験飛行実施。すべてが順調に進んだ場合でも9月まで運航再開を承認しない可能性が高いとの報道
2020年10月:ボーイング737MAX、欧州での運航再開報道
2020年11月18日:米連邦航空局(FAA)がボーイング737MAXの運航停止措置を1年8ヶ月ぶりに解除
主だった所ではこんなところだろうか。
まとめ
2019年中に運航再開と思っていたのだが2020年にずれ込み、そして737MAXとは別にCOVID-19のため、ボーイングの業績が更に悪化して配当も停止、と散々な状態が続いていたのだが、ようやく一つの課題がクリアされたことになる。
とはいえ冒頭の通りこのニュースを受けてもボーイング株は下落。これは個人的には過去1週間に737MAXの運航再開に関する報道がなされており、そこで既に上昇していたためだと思う。以下は過去5日間のボーイング株のパフォーマンス。
という事で今後のボーイング株はどうなるのだろうか。737MAXの運航再開は確かに良いニュースではあるのだが、以下の様な問題もあるのでこのまますんなりと上昇基調となるのかは判断が悩ましい。
- 新型コロナウイルス感染の再拡大
- 欧州との貿易関税問題
- そもそも737MAXに対する不信感
過去2年間の株価パフォーマンスを振り返ってみると以下の様になる。
こうしてみるとボーイングの株価に与えた影響は737MAXもそれなりにあったが、COVID-19の方が大きい事がよく分かる。ただ悪い意味での相乗効果があるので一概には言えないのだが。
そう考えるとやはりコロナワクチン接種が広がり、効果が表れるまでCOVID-19前の株価に戻るのは期待できないような気がする。2021年の春先ぐらいまでは気長に待つとするか。完全リタイアした今は早めの配当再開を本当は期待したいのだが、それはあまりに性急すぎるだろう。