2020年1月15日の米中「第一段階」通商合意調印内容まとめ

はじめに

昨日2020年1月15日には掲題の通り米中「第一段階」通商合意の調印がなされた。その具体的な内容については調印まで明らかになっていなかったのだが、昨日の調印を受けて内容が報道されたのでその内容を整理しておくことにする。


米中「第一段階」通商合意内容

以下は各社報道から引用・抜粋したものを自分なりに整理したもの。太字の部分は個人的にやや気に掛かるところ。

調印文書に明記されたもの

  • 対米貿易黒字の縮小に向けた中国による今後2年間で2000億ドル相当の追加購入計画の概要。2000億ドルの具体的な内訳は以下の通り。ただし、中国財務省は留意点に触れており、
    ①米中は商業面を考慮し市場価格で購入することに留意
    ②米中は農産物を中心に購入時期は市場状況に応じて決める可能性あることに留意
    としている点には注意が必要。

    • 農産物:320億ドル
    • エネルギー製品:524億ドル
    • 製品:777億ドル
    • サービス:379億ドル
  • 米国側は「第1段階の合意」を受けて、2月中旬をメドに、19年9月に発動した制裁関税第4弾(1200億ドル分)の関税率を15%から7.5%に引き下げる
  • 中国の企業および政府機関による米国の技術と企業機密の窃取に対し中国側が取り締まりを強化するとの公約(知的財産保護)。具体的には以下の合意が盛り込まれた
    • 「中国は企業秘密や商標などで権利保護を強化する」
    • 「当局による外国企業への技術移転の強要を禁止する」
    • 「戦略的技術の取得を目的にした中国企業による海外企業買収を中国が支援・指示することをやめる」
    • 「海賊版のオンライン販売阻止などへの取り組み強化や、企業機密を窃取した者に刑事罰を科すこと」「合意発効後30日以内に、知的財産に関する公約の履行方法を説明する行動計画を提出する」
  • 金融サービスで中国が外資規制を緩和すること
  • 貿易上の優位性を得るための為替操作を中国が控えること
  • 合意を確実に履行させるための制度。「中国が公約を実行していないと判断した場合は90日以内に対中関税などで制裁することが可能」と盛り込まれている。ただしライトハイザー代表は15日「この合意は中国が機能させたいと望んだ場合にのみ機能する」と発言している
  • 過去の米政権が中国との間で行っていた経済対話も再開

今回の合意に含まれなかったもの

  • 中国の国家資本主義モデルの中核を成す補助金の改革などの問題
  • 米国が中国からの輸入に課している制裁関税第1~3弾(2500億ドル分)は25%の関税率でそのまま

まとめ

今回の合意は大体今まで報道されていた通りの内容で目新しさには欠けるというのが正直なところ。アメリカ東部時間の15:30頃に調印がなされたようだが、それを受けてのダウやS&P 500の動きは上昇はしていたが、

劇的ではなかったことから市場的には織り込み済みの内容が主だったと言えるのだろう。

今後米中交渉がどう進むかについては、合意署名に先立ちライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が記者団に以下の様に発言している。

1.トランプ政権として当面は第1段階合意の実行に重点を置いた

2.さらなる交渉はその後になるだろう

3.初期段階の実行には春までかかる可能性がある

この発言から、トランプ大統領が関税を撤廃するとしている第2段階合意に関しては、協議開始の時期や合意取りまとめにかかる期間は不明なままであることが見て取れる。

ここ数年続いていた米中貿易交渉に関する合意が限定的とはいえ調印されたことについては素直に受け止めるべきだろうが、完全な関税撤廃まではまだまだ時間がかかりそうだ。

この状況から今後の状況を読み解けるのであれば、長期投資/バイアンドホールドという投資スタイルに固執することなく手を打つのがベストなのだが、残念ながらその能力は自分には無い。従って実務上は特に何かをすることもなく、なるべく早くこの問題が解決するのを期待するだけになってしまう。

ただ、こういった状況を認識しているのとしていないのとでは、追加投資の際の検討に違いが出てくると思うので、適宜こういった整理を行うのは自分の納得感を高める点ではやはり必要だと思う。もし、こういった整理をせずに米中貿易交渉の影響を受けて資産が大きく下がったりした場合には、そのダメージはより一層大きくなるだろうから。

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