はじめに
日本のニュースサイトでも本日ヘッドラインとして出ていたようだが、掲題の通り2019年3月に半年で2度目の大事故を起こしたボーイング737MAXに新たな潜在的リスクが発見されたとのこと。以下にその内容を整理しておく。
米連邦航空局(FAA)の発表資料
以下はブルームバーグ及びロイターの記事より引用・抜粋。
- “The FAA recently found a potential risk that Boeing must mitigate,” the agency said in an emailed statement on Wednesday. The statement didn’t provide any specifics.(水曜日電子メールで送付した発表資料で、「FAAは最近、ボーイングが軽減しなければならない潜在的リスクを見つけた」と表明。ただ具体的な説明はなかった。)
- The Federal Aviation Administration discovered that data processing by a flight computer on the jetliner could cause the plane to dive in a way that pilots had difficulty recovering from in simulator tests, according to two people familiar with the finding who asked not to be named discussing it.(事情に詳しい関係者2人によれば、FAAは737MAXに搭載されているフライトコンピューターのデータ処理が原因で機体が急降下する可能性があり、シミュレーター訓練でパイロットが機体を水平に戻そうとしたが難しかった)
- While the issue didn’t involve the Maneuvering Characteristics Augmentation System linked to the two accidents since October that killed 346 people, it could produce an uncommanded dive similar to what occurred in the crashes, according to one person, who wasn’t authorized to speak about the matter.(関係者によれば、10月以来2件で346人が死亡した墜落事故は、この失速防止装置「MCAS」に関する問題とは無関係だが、事故時に起きたのと似た突然の急降下を引き起こし得る。この関係者は公の場でコメントする立場にないとして匿名で語った)
- Gordon Johndroe, a Boeing spokesman, said the company agreed with the FAA finding and was addressing the issue as well as a broader software redesign that’s been underway for eight months.(ボーイングの広報担当、ゴードン・ジョンドロー氏は、同社はFAAの調査結果に同意するとし、8ヶ月前から続けているより幅広いソフトウエアの設計変更に加え、この問題にも対処していると述べた)
- “Addressing this condition will reduce pilot workload” by making it easier to respond to an uncommanded stabilizer motion, Johndroe said.(突然の尾翼水平安定板(スタビライザー)の動きに対応しやすくなり、「これによりパイロットの負担は減るだろう」と説明)
- “The safety of our airplanes is Boeing’s highest priority,” he added. “We are working closely with the FAA to safely return the Max to service.”(「当社の最優先課題は航空機の安全性である」とした上で、「安全なMAXの運航再開に向けFAAに協力している」と語った。)
- The new issue means Boeing will not conduct a certification test flight until July 8 in a best-case scenario, the sources said, but one source cautioned it could face further delays beyond that. The FAA will spend at least two to three weeks reviewing the results before deciding whether to return the plane to service, the people said.(事情に詳しい複数の関係者によると、このリスクは先週実施したシミュレーター試験で発見された。このためボーイングが認証試験飛行を実施するのは早くとも7月8日以降となり、その結果をFAAが2、3週間かけて検証した後に運航再開の可否を判断することになるという)
- Last month, FAA representatives told members of the aviation industry that approval of the 737 MAX jets could happen as early as late June.(FAAの当局者は先月、国連の専門機関、国際民間航空機関(ICAO)に対し、早ければ6月下旬にも737MAXの米国での運航再開を見込んでいると報告していた)
まとめ
このニュースは2019年6月26日米国市場閉場後に発表されたので、昨日のボーイングの株価に影響は無かったのだが、本日6月27日は急落するのだろうなあ。というのも、つい先日事故が発生してから初めて大規模受注をした際に株価が5%超上昇したのだが、その際には当然この潜在的リスクは明らかになっていなかった訳で。しかも「The new issue」と新たな問題というのがなあ。この先まだ次の「新たな問題」が発見されたりしないよねえ。
また、この状況を受けて737MAXの運航再開は更に伸びてしまう。実際ユナイテッド航空は、この報道の後、9月3日までボーイング737MAX機を運航スケジュールから外すと発表している(8月を通じて約1900便がキャンセルとなる)。運行停止が伸びれば伸びるほど、引き渡しが出来ない状況が続き、それに応じてコストも嵩むはず。
この様な状況を踏まえると、株価はまた下落基調が続くのだろうと思う(ただ自分の個人的思いは往々にして外れるのだが…)。ただ、株価よりも人命優先で、なるべく早く安全を確認して頂きたいというのが個人的な思い。