動画配信ディズニープラス発表と競合各社(NFLX、Apple等)

はじめに

先月3月19日に楽天証券からウォルト・ディズニー(DIS)による21世紀フォックスの買収のお知らせが入ってきたのだが、昨日2019年4月12日にウォルト・ディズニーの株価が一気に10%超上昇したので、動画配信の競合他社も含めその状況を整理しておく。


ディズニー・プラスの発表

以下は、ロイターの記事より引用。

  • 米ウォルト・ディズニー11日、アナリスト向け説明会で、新たな家族向け動画配信サービス「ディズニー・プラス」の詳細を明らかにした
  • 年内(11月12日)に米国でサービスを開始し、随時海外でもスタートする。料金は月7ドルもしくは年間70ドル
  • テレビ番組や映画の新作・名作を配信し、広告は放映しない。ディズニーの映画やテレビ番組のほか、「マーベル」、「スター・ウォーズ」、「ナショナル・ジオグラフィック」、「シンプソンズ」などを視聴できる
  • 加入者の目標は6000万 – 9000万人。2024年度の黒字計上を目指す。オリジナル番組の制作には2020年度に10億ドル強、2024年までに約20億ドルを投じる予定
  • ロイターがアナリストを対象に実施した調査によると、サービス料は月額7.5ドル程度が見込まれていた。米国内加入者数は2020年までに約720万、21年までに1366万人に増える見通し
  • ディズニーは動画ストリーミング用機器やゲーム機にディズニー・プラスを配信するため、動画ストリーミング用機器メーカーのロク(Roku)や、ソニーと契約を結んだ
  • 11日の説明会では、ディズニー幹部が傘下のスポーツ専門チャンネルESPNのストリーミングサービス「ESPNプラス」を中南米地域に導入する可能性に言及したほか、傘下の動画配信サービス「Hulu」の海外事業拡大を検討していることも明らかにした
  • 同社はまた、Huluのサービス加入者が2024年度までに4000万 – 6000万人に増えると予想、23年度か24年度までに米国事業が黒字になるとの見通しを示した。Huluの現在の加入者は2500万人、今年度は15億ドルの赤字が見込まれている

ウォルト・ディズニーの株価

主にこの報道のおかげで、以下の様に1日で約11%株価が上昇している。

ここひと月程の株価の動きは以下の通り。

3月18日から25日まで下落が続いていたのは、ディズニーに起因するものというよりは、アメリカ市場全体の傾向。それ以降は上昇基調だが、昨日の上昇が突出して高いことがわかる。

ディズニー株はこれで過去最高値(2018年11月9日の@120.19ドル)を更新し、年初から16.2%上昇したことになる(ダウ平均株価は1%高)。


動画配信関連株の考察

ここまで昨日のウォルト・ディズニーの発表、株価の動きを見てみると、3月半ばの21世紀FOX買収完了の時点でもう少し考えて、3月の購入銘柄としてウォルト・ディズニーを考えるべきだったか、と思わないでもない。

ただ、3月に購入したAT&T(T)のウォルト・ディズニーと同期間のチャートは以下の様になっており、

年初からも約10%上昇しているし、配当率はウォルト・ディズニーの約4倍で、むしろディズニーが1日で10%超上昇した、という事を忘れれば現時点ではそれ程悪いわけではない。自分に銘柄選択の能力(特に短期)は無いのだから、高望みはしないこと。

それよりも、今後の自分が保有している動画配信関連銘柄の行く先が気になるので整理してみる。考察の対象としては、自分が所有しているウォルト・ディズニーとAT&T、所有していないが先月に「アップルTVプラス」を発表したApple、Netflix、Hulu(非上場)だろうか。以下はいずれも2019年4月13日時点での米国の情報。

ウォルト・ディズニー

名称:ディズニー・プラス

サービス開始時期:2019年11月12日予定

料金:月6.99ドル

主要コンテンツ:ディズニーの映画やテレビ番組、21世紀FOXの作品など

その他:Huluの筆頭株主でもある(60%)。他社に提供しているディズニー関連コンテンツを2019年中に引き上げる予定

AT&T

名称:未定

サービス開始時期:2019年末

料金:未定

主要コンテンツ:映画に特化したパッケージ、オリジナル番組と大ヒット映画も加えたパッケージ、前述の2つのパッケージに加えてワーナー・メディアの膨大なライブラリーや外部から調達した作品をあつめたパッケージの3つのパッケージから構成される予定

その他:Huluの株主でもある(10%)。既存の動画配信サービスとして「DirecTV NOW」(元AT&T系)や「HBO Now」(元ワーナー系)がある

Apple

名称:アップルTVプラス

サービス開始時期:2019年秋

料金:未定

主要コンテンツ:自社オリジナル動画のほか、映画やテレビ番組を提供。スティーブン・スピルバーグ氏などに作品を依頼しているほか、若い世代に向けたコンテンツもそろえると強調

その他:世界で14億台超のApple製品

特にウォルト・ディズニーの発表で株価が大きく変動ということもなかった。

Amazon.com

名称:prime video

サービス開始時期:2007年9月~(Amazon Unboxとして)

料金:8.99ドル

主要コンテンツ:オリジナル作品、映画、TVドラマなど

その他:2016年4月に米国ではAmazon Primeからprime videoが分離。加入者数は約2600万人超(Amazon Primeは1億人超)

アマゾン・ドット・コムも特に他社の動画配信の発表で株価が大きく変動することは無かった。

Netflix

名称:Netflix

サービス開始時期:2007年1月~

料金:8.99ドル~(最安値のnon-HDプラン。2019年1月に7.99ドルから値上げ。最も加入者の多いtwo HD streamsプランは10.99ドルから12.99ドルに値上げ)

主要コンテンツ:Netflixオリジナル、映画、TVドラマなど

その他:27言語対応。加入者約1億4000万人

興味深いのは、それぞれApple、ウォルト・ディズニーの動画配信の発表があった翌日に大きく下落している点。Apple、アマゾン・ドット・コム、ウォルト・ディズニー、AT&Tともこれほど顕著な株価の動きはしていない。

Hulu

名称:Hulu

サービス開始時期:2008年1月~

料金:5.99ドル~(広告ありプラン。2019年2月に7.99ドルから値下げ。広告なしプランは11.99ドルで据え置き)

主要コンテンツ:映画、TVドラマなど

その他:加入者約2500万人。主要株主はウォルト・ディズニー60%、コムキャスト30%、AT&T10%

データを調べてみるだけでも、各社の戦略(価格、経験、コンテンツなど)に違いがあってとても興味深い。ただ上に挙げた以外にも、上記各社の間でコンテンツを提供する/しないの交渉も行われているという報道もあるし、具体的な情報が出揃っている訳でもないので、今後の株価の見通しは個人的には立てづらい。


自分の所有している動画配信関連株と今後の購入

とはいえ、自分が現在2019年4月で所有しているウォルト・ディズニー(DIS)150株、AT&T(T)7,990株の今後について、今後の購入可能性を踏まえて考えてみる。

ただ両社とも動画配信だけの企業ではないので、その視点だけで見るのは避けるようにしないといけないだろう。各種財務データに関しては見方が色々あるので、ここでは詳細は割愛。

ウォルト・ディズニー(DIS)

21世紀FOXの買収に713億ドルを費やしている点で、キャッシュフローが気に掛かるのだが、買収後すぐに21世紀FOXの資産を今回のディズニー・プラスに活かしているのは好材料ではないだろうか。ディズニーの営業利益の約4割強をメディアネットワーク事業が挙げており(下に2018 Annual Reportより抜粋)、今回のディズニー・プラスが上手くいけば今後の株価も期待できるのだろう。だからこそ株価が10%超上がったと思われる。やはりウォルト・ディズニー(そして21世紀FOX)が持っているコンテンツは強力と市場も見ているようだ。

では個人的にウォルト・ディズニーを次回購入予定の2019年6月に購入するか、と考えると買わない可能性が高い。というのも今回の株価上昇で恐らく配当率が1.5%程度から更に下がる点、今回の上昇で割安/値頃感が他の保有銘柄に比べると薄れた点の2点がネックになる。

AT&T

こちらもタイム・ワーナーの買収で約850億ドルを費やしており、キャッシュフローが気に掛かる。また株式上では2018年6月に買収が完了しているのにも関わらず、それを活かした新サービスがまだ具体的に発表されていないのも懸念材料。2019年3月にリストラを含めた事業再編の報道があったが、ウォルト・ディズニーの買収に比べて、その相乗効果が見えにくくスピード感が遅く思える。AT&Tの事業セグメントごとの営業利益割合は以下の様になっており(2018 Annual Reportより抜粋)、

買収したワーナー・メディアと元々のエンターテインメント事業(DirecTV NOWなど)で営業利益の42%を占めており、ウォルト・ディズニーとほぼ同じ割合となる。従って、今後予定されている新サービスの影響は大きいだろう。またAT&Tは通信事業でもVerizonやSprint、T-Mobileなどとの競争も激しい。今年は5G関連の実装が色々進むのでそちらの方も気になるところ。

そういった点を踏まえて次回購入予定の2019年6月にAT&T株を購入するかを考えてみると、なかなか難しい。前回2019年3月に既に購入しており、自分の所有銘柄の中で2番目の割合になっていて投資が比較的集中していること(1番はシティグループ(C))、配当率が6%台と配当重視の点から言うと悪くないのだが、キャッシュフローを考えるとちょっと配当率が高過ぎる気がすること、そして上に挙げた通信事業、エンターテインメント事業双方で競合との競争が激しそうなことが懸念される。


まとめ

ディズニー・プラスの発表を契機として、動画配信関連株、そして自分が所有しているウォルト・ディズニーとAT&Tの購入について考えてみた。

自分の投資が長期投資/バイアンドホールドであり、購入タイミングも定期的(3月、6月、9月、12月)というスタイルなので、6月の購入に向けての情報整理が出来たのではないだろうか。

次回の購入銘柄は必ずしもここで考えた動画配信関連株だけではない訳だが、自分の所有銘柄が今(2019年4月)23銘柄あり、購入タイミングの直前に調べようと思うと検討時間が足りなくなる可能性があるので、こういった事柄を契機として所有銘柄の状況を適宜整理しておくことは重要だろう。

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