米2026会計年度つなぎ予算成立と直後の市場(2025/11)

はじめに

現地時間2026年11月12日(水)にトランプ大統領が米2026会計年度つなぎ予算に署名し、43日間に及んだ一部政府機関の閉鎖に取りあえず終止符が打たれることになった。

以下、成立したつなぎ予算案の内容とつなぎ予算成立直後の米市場の動きについて確認し、整理しておくことにする。


米2026会計年度つなぎ予算の概要

つなぎ予算成立の経緯

つなぎ予算不成立による米政府機関閉鎖と米国市場(2025/10)

でまとめて以降、成立に至る経緯については期間が長いこともあり、直近のみを簡単に。

  • 2025年11月10日
    • 米上院でフィリバスター(議事妨害)回避に必要な60票を得て、予算案通過
  • 2025年11月12日
    • 米下院で賛成222、反対209で可決
    • 同日トランプ大統領が署名

政府機関の閉鎖は43日間に及び過去最長。

成立したつなぎ予算の概要

  • つなぎ予算期限を2026年1月30日まで延長(これまでは11月20日まで)
  • 退役軍人・軍事建設、農業、立法関連の3歳出法案の承認(2026年9月30日まで)
  • 政府閉鎖期間中に解雇された職員の復帰、その間の給与の支払いおよび2026年1月30日までの新たな解雇の禁止
  • 民主党が求めていた医療保険制度改革法(オバマケア)の保険料補助の延長は盛り込まれず
    • 共和党が12月中旬までに上院で医療保険制度改革法(オバマケア)の保険料補助金の延長に関する採決を行うという約束を条件に上院を通過したが、約束は採決だけで可決される保証はない。加えて採決の実施が約束されているのは上院のみ

つなぎ予算成立後の各種動向

  • 政府は通常業務の再開に向けて動き出すことが可能となり、一部の連邦職員は早ければ13日にも職場復帰する見通し
  • ただし連邦機関の全面再稼働にはなお数日を要する可能性
    • ダフィー運輸長官は「1週間以内に航空便に対する制限を撤廃する方向で前向きな検討を始められると期待している」とコメント(閉鎖中、数千便の航空便が欠航)
    • 補助的栄養支援プログラム(SNAP)も実際の給付処理には時間がかかるとみられているとのこと(閉鎖中、数百万世帯への食料支援が停止)
  • 政府閉鎖の影響で10月分の雇用統計と消費者物価指数(CPI)が公表されない可能性が高い(ホワイトハウスのレビット報道官のコメント)
  • 10月は家計調査が実施されなかったため、雇用統計の半分しか入手できない。雇用者数の部分は得られるが、失業率は得られない(国家経済会議(NEC)ハセット委員長のコメント)

つなぎ予算成立直後、2025年11月13日の米国市場の動き

米国株式市場

てっきりつなぎ予算が成立して市場は安定するのかと思っていたのだが、自分の思いとは裏腹に主要3株式指数いずれも大幅下落。

政府機関閉鎖の影響でFRBの政策金利の重要な材料となる雇用統計と消費者物価指数(CPI)が公表されない/一部に留まる/信頼性が損なわれる可能性が顕在化し、実データに基づいた政策金利決定が出来ないことへの懸念、そして同日は複数のFRB政策金利決定者が利下げに関してまちまちな発言をしたことから、米経済/金利の先行き不透明感が強まったことが株式市場が下落した要因と思われる。

CMEのフェドウォッチツールによると

11月13日の12月FOMCでの0.25%利下げ確率:50.7%

1日前の12月FOMCでの0.25%利下げ確率:62.9%

1週間前の12月FOMCでの0.25%利下げ確率:69.6%

1ケ月前の12月FOMCでの0.25%利下げ確率:95.5%

と1ヶ月前はほぼ確実視されていた利下げ可能性が、最新では半々となっている。

米国10年債

取引開始直後から利回りは大きく上昇(債権売り進む)。その後は方向感に欠ける動きではあったものの、前日の利回りから1%程度上昇した範囲での推移となっている。

上述した様に12月FOMCでの利下げ確率が後退したことで、債券売りが進んだのだろう。

ドル円為替

米国株式市場が開場する米東部標準時9:30は上記チャートのGMT(英国標準時)では2:30PM。

米国株式市場開場前に1ドル=154円後半だったドル円為替は開場直後に1ドル=154円前半に。しかし米国株式市場開場中に再びドル高となり米国市場閉場時(上記チャートでは9:00PM)1ドル=154円半ば。その後は1ドル=154円半ばでの動きが続いている。

金利政策の不透明感が強まったことで方向感の定まらない動きとなっているのだろうが、株式市場や債券市場ほどの大きな変動とはなっていない。

ただ14日の米国市場開場を前にしてドル安が進行中。このままでは1ドル=154円を切る可能性が高い。


まとめ

つなぎ予算が成立したことで市場に安堵感をもたらすかと期待していたのだが、実際には上述の通り政府機関閉鎖の影響から、政策金利決定に際しての重要なインプットとなる雇用統計と消費者物価指数(CPI)が公表されない可能性が顕在化したため、12月FOMCでの利下げが不透明となった結果、株式市場は大きく下落、債券利回りは上昇(債権売り)、ドル円為替はややドル安という結果をもたらした。なまじ上昇を期待していただけに個人的にはショックが大きい結果となった。

そして14日の米国市場開場前の時間外取引でも主要3株式指数は下落しており、1日では吸収しきれなかった可能性が高い。

また可決されたつなぎ予算自体も医療保険制度改革法(オバマケア)の保険料補助の延長に関して共和党/民主党及び上院/下院の隔たりは大きく、新たな期限の1月30日までに合意に至るかは正直かなり疑わしい。個人的には再び政府機関の閉鎖という事態もあり得ると思う。

今後は各種経済指標の内容にいつも以上に市場が反応すると思われ、また公的機関のデータが十全ではない中、12月FOMCでどういう判断が下されるのかを睨んで神経質な市場の動きが続くことになるのだろう。そしてFOMCがどういう結果となったとしても、その次には米予算の動向で市場は揺れることになるだろう。気の休まらない時期が続きそうだ。

補記

上に14日も大きく下落する懸念を書いていたのだが、実際には

序盤は下落したもののやや持ち直して、ダウ工業平均がそこそこ下落となったのを除けばほぼ横ばいで取引を終えている。

相変わらず短期の市場の動向を読むセンスは自分にはないことを痛感すると共に、やはり長期投資/バイアンドホールドで米国株投資をしてきたのは間違っていなかった、と再認識。

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