はじめに
昨日と同じ様な出だしで書いてみると、自分が就寝する前の2025年4月9日(水)の米国主要市場開始時はほぼ横ばいで上下動が激しい中で自分の米国株資産は2万ドルの減少前後を推移していたのだが、起きてみると
株式市場はいずれも急騰し、自分の米株資産もそれには及ばないものの
5%を超える上昇となっていた。理由は米政権が上乗せ分の相互関税を90日間一時停止したことによるものだが、昨日の色々を確認してみると上昇はしたが手放しには喜べない、というのが正直なところ。
以下、昨日の米市場での出来事を整理してみる。
2025年4月9日の米市場での出来事
【米株式市場開場前】
- 中国が米国からの輸入品への関税を84%に引き上げると発表(発動は10日より)
- ブルームバーグがトランプ大統領は8日の資金集めの催しで、間もなく医薬品への大規模な関税を発表する予定だと述べたと報じる
- 米株式市場より1時間早く開始する米10年国債利回りが4月4日から約50ベーシスポイント上昇
- ベッセント財務長官がFOX Businessのインタビューで以下の発言
- 損失を被り、レバレッジ解消を余儀なくされている大規模なレバレッジ運用会社がいくつかある
- 債券市場では今、こうしたレバレッジ解消の激動が起こっている
- 私が対話した企業や最高経営責任者(CEO)らは概ね、経済が非常に堅調という考えを示している
- 政権はウォール街より実体経済を優先する
- (相互関税について)同盟国と協定を締結することは可能と考えている
- 中国が実際に交渉に臨もうとしないのは残念だ。なぜなら、彼らは国際貿易システムにおける最悪の加害者だからだ
- 中国がすべきではないのは、通貨切り下げでこの状況から逃れようとすることだ
【米株式市場取引中】
- 欧州連合(EU)が、米国が先月EUの鉄鋼・アルミニウム輸出に25%の関税を課したことへの報復として、約210億ユーロ相当の米国製品に課す関税を承認し、15日から発動
- 米国が公正かつバランスのとれた交渉による解決に合意すれば、これらの対抗措置はいつでも停止される可能性があるとも声明
- トランプ大統領がSNSに以下の投稿(米株式市場開場後まもなく)
- BE COOL! Everything is going to work out well. The USA will be bigger and better than ever before!
問題ない!すべてうまくいく。アメリカはかつてないほど大きくより良くなる! - THIS IS A GREAT TIME TO BUY!!! DJT
今が買い時だ!!! DJT(Donald J Trump)
- BE COOL! Everything is going to work out well. The USA will be bigger and better than ever before!
- トランプ大統領がSNSに以下の投稿(米東部時間13時過ぎ)
- Based on the lack of respect that China has shown to the World’s Markets, I am hereby raising the Tariff charged to China by the United States of America to 125%, effective immediately. At some point, hopefully in the near future, China will realize that the days of ripping off the U.S.A., and other Countries, is no longer sustainable or acceptable.
中国が世界市場を軽視してきたことを踏まえ、私はここにアメリカ合衆国が中国に課している関税を125%に引き上げ、即時発効する。願わくば近い将来のある時点で中国は、アメリカ合衆国やその他の国々を搾取してきた時代がもはや持続可能でも容認できるものでもないことに気づくだろう。 - Conversely, and based on the fact that more than 75 Countries have called Representatives of the United States, including the Departments of Commerce, Treasury, and the USTR, to negotiate a solution to the subjects being discussed relative to Trade, Trade Barriers, Tariffs, Currency Manipulation, and Non Monetary Tariffs, and that these Countries have not, at my strong suggestion, retaliated in any way, shape, or form against the United States, I have authorized a 90 day PAUSE, and a substantially lowered Reciprocal Tariff during this period, of 10%, also effective immediately.
逆に、75ヶ国以上が商務省、財務省、USTRを含む米国の代表者に対し、貿易、貿易障壁、関税、通貨操作、非通貨関税に関する議論の解決策を交渉するために電話をかけてきたこと、そしてこれらの国々が私の強い勧告にもかかわらず、いかなる方法、形態、形態においても米国に対して報復措置を取らなかったことを踏まえ、私は90日間の一時停止と、この期間中の相互関税を大幅に引き下げた10%の関税を即時発効することを承認した
- Based on the lack of respect that China has shown to the World’s Markets, I am hereby raising the Tariff charged to China by the United States of America to 125%, effective immediately. At some point, hopefully in the near future, China will realize that the days of ripping off the U.S.A., and other Countries, is no longer sustainable or acceptable.
- トランプ大統領のホワイトハウスでの記者団への発言(米株式市場終盤)
- 債券市場は非常に扱いにくい。私はそれを注視していた。しかし今見ると、素晴らしいことだ
- 昨夜、人々は少し不安になってた。人々は少し行き過ぎていると思った
- 私が今日やったことは大きな動きではなかった。私が「解放記念日」にやったことが大きな動きだったのだ
【米株式市場閉場後】
- ロイター報道によると米ホワイトハウス当局者は一部関税の90日間停止措置について、メキシコとカナダからの輸入品には適用されないと明らかにした
- メキシコ、カナダからの輸入品のうち、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の対象外の製品に対する25%の関税と、エネルギーに対する10%の関税は引き続き有効
- 中国が米現地時間10日より84%の関税を発動
2025年4月9日の米市場の動き
S&P 500
開場直後から前日終値水準を挟んで神経質な動きをしていたのだが、トランプ大統領の相互関税関税の90日間一時停止と10%関税への変更を受けて前日比7%程度まで急騰。その後も徐々に上げ幅を拡大し、前日比9.52%上昇で取引を終えている。
米10年債(過去5日間)
4月9日は取引開始から利回りが急上昇(つまり債権が大幅に売られた)し、トランプ大統領の関税一時停止の発表を受けてやや利回りが低下したものの限定的で、結局前日比で3%を超える利回り上昇で取引を終えている。ただし9日の債券への入札自体は最高落札利回りが4.435%と、入札締め切り時点の予想を下回り順調ではあった。
ドル円為替
トランプ大統領の関税一時停止の発表前までは1ドル=144円~145円台前半での荒い動き。発表後は1ドル=148円までドル高になったもののその後はじりじりとドル安となり、上記チャートでは見切れているが10日米国市場開場前には1ドル=145円台半ばと関税一時停止の発表前に近い水準に戻っている。
自分が必ずしも手放しでは喜べない点
以下の点が4月9日の関税一時停止で市場が上昇したにもかかわらず、自分が必ずしも手放しでは喜べない点。
- 米政権の関税一時停止は90日間
- あくまで90日間という期間限定であり、その期間中に合理的な合意が各国と出来るかは不透明
- 関税一時停止はあくまで上乗せされた相互関税分のみ
- 上乗せされた相互関税分は停止されたが、代わりに結局各国一律10%の関税が課されることになったに過ぎない
- カナダ、メキシコへの25%関税は継続
- 自動車及び自動車部品、鉄鋼・アルミニウムへの25%関税も継続
- 中国への追加関税が前日の104%から125%へ
- 中国がこれにどう反応するか不透明
- 関税一時停止にもかかわらず米10年債の利回りはそれほど低下せず、直近で大きく上昇
- トランプ政権下での関税政策が世界経済を圧迫するとの懸念が高まるにつれ、安全資産とされる米国債が買われて利回りは低下するが、ここに来ての大幅上昇は理由が不明で異常とも言える(中国による報復で米国債売却という見方も一部にはあるが不明で有力視はされていない)。米国債を売却して他国の国債が購入されている可能性もある
- 利回りに敏感な銀行株のシティグループ(C)を多数持っているので、米国債の動きは大きな懸念材料
- ドル円為替も大きなドル高への変動はなし
- 関税一時停止を受けてドル高にはなったものの、徐々にドル安傾向となっているのは景気後退への不安が根強く、ドルと比較して安全とみられる円の購入が進んでいる可能性
- 医薬品セクターへの関税措置の可能性
- 関税一時停止に埋没してたしまったが、自分が寝る前は医薬品セクターはブルームバーグの報道を受けて大きく下落。自分もブリストル・マイヤーズ スクイブ株をそれなりに持っているので今後の懸念材料
まとめ
以上、中国を除いた米国による相互関税(上乗せ分)の90日間一時停止(ただし一律10%の関税は課される)により2025年4月9日の米国株式市場は大きく上昇したが、関税を巡る懸念材料はまだまだ残っていると個人的に思っている点を整理してみた。
結局のところ、各国への上乗せ分関税分は一時停止されたものの代わりに一律10%の相互関税が課されることになり(これは以前であれば大きなマイナス材料)、メキシコ、カナダへの関税及び鉄鋼・アルミニウム、自動車へのは関税はそのまま残っており、中国へは125%への関税と3月頭のメキシコ、カナダへの関税発動に加えて中国との関税摩擦の異常な高まり(中国から米国への関税は10日に84%になった)を考えると2月末よりも確実に悪い状態にあることに変わりは無く、更に加えて上に挙げたような懸念事項もくすぶっている状態に過ぎず、米国、そして世界を巻き込んだ景気減速への懸念は未だ根強く残っていると思う。
そして以下に代表される
トランプ大統領の相互関税に関する発言で揺れる市場(2025/3)
2025年4月7日の関税を巡る情報で大きく乱高下した米国株式市場
トランプ政権の関税政策/発言で大きく動く市場という構図は、まだまだ続くのだろう。
10日は予定通り中国の報復関税が84%になったこともあり、4月9日の米国株式市場上昇に安心することなく、今後の市場/トランプ政権の動きに引き続き注意していきたい。