ジャクソンホール会議を受けダウ1000ドル超下落(2022/8)

はじめに

昨日2022年8月27日(金)にワイオミング州ジャクソンホールで米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演が行われた。

ここ最近はインフレへどう対応するかのFRB関係者の発言によって市場が動くことが多いので注目していたのだが、結果は

といずれも3%を超える大幅な下落となった。

以下、パウエル議長のジャクソンホールにおける講演内容を確認し、何故市場が大きく下落したかについて整理しておくことにする。


2022年8月26日のジャクソンホール会議におけるパウエル議長講演内容

そもそもジャクソンホール会議とは

連邦準備制度理事会を構成する12地区連銀の一つであるカンザスシティ連邦準備銀行が主催し、世界経済や金融政策の課題について世界各国の中央銀行関係者らが参加して議論を交わす年次経済政策シンポジウムで例年8月に開催されている。

シンポジウム自体は1978年から開催されているが1978年から81年までは開催地がそれぞれ異なっており、主として農業経済政策がシンポジウムのテーマだった。1982年以降から内容/形式も現在と同様となり開催地がジャクソンホールに固定され「ジャクソンホール会議」と通称される様になっている。

近年はジャクソンホール会議でのFRB議長講演は市場を大きく動かす材料にはほとんどなっておらず、講演当日にS&P 500の変動幅が1%を超えたのは過去10年間で一度だけだったのだが、先述の様に今年はFRB関係者の発言によって市場が大きく動くことが多くパウエル議長の講演が注目されていた。

8月26日のジャクソンホール会議におけるパウエル議長講演内容

以下は米連邦準備制度理事会のWebサイトから主な内容を引用・抜粋。

  • Reducing inflation is likely to require a sustained period of below-trend growth. Moreover, there will very likely be some softening of labor market conditions. While higher interest rates, slower growth, and softer labor market conditions will bring down inflation, they will also bring some pain to households and businesses.
    インフレを低下させるためにトレンドを下回る成長が一定期間持続する必要がある公算が大きい。さらに労働市況も軟化する可能性が非常に高い。金利上昇や成長鈍化、労働市場の軟化はインフレを低下させるが、家計や企業に痛みをもたらすだろう
  • These are the unfortunate costs of reducing inflation. But a failure to restore price stability would mean far greater pain.
    残念ながらインフレ抑制には(こうした)不幸なコストが伴うが、物価安定の回復失敗はより大きな痛みを意味することになる
  • Restoring price stability will likely require maintaining a restrictive policy stance for some time. The historical record cautions strongly against prematurely loosening policy.
    物価の安定を回復するには景気抑制的な政策スタンスを一定期間維持することが必要となる可能性が高い。歴史は早急過ぎる政策緩和を強く戒めている
  •  While the lower inflation readings for July are welcome, a single month’s improvement falls far short of what the Committee will need to see before we are confident that inflation is moving down.
    7月のインフレ指標が低下したことは歓迎すべきことだがFOMCとしてはインフレが鈍化していることを確信する必要があり、単月の改善では十分と言える状況から程遠い
  • Our decision at the September meeting will depend on the totality of the incoming data and the evolving outlook.
    9月(のFOMC)会合での決定は入手するデータと変化する見通しの全体像に左右される

ジャクソンホールでのパウエル議長講演を受けて市場が下落した理由

上記パウエル議長の講演内容は、成長鈍化などの痛みを伴ったとしてもインフレが抑制されるまで当面金融引き締めが必要という見解を示すもので、当局が利上げペースを緩めるにはまだ時間がかかると市場に受け止められた事が市場下落の要因だろう。

また自分の記憶ではここ最近のパウエル議長の講演で「pain(痛み)」という言葉が使われたことは無かったと思うので、より強い形でのメッセージであった事も講演内容と共に下落幅が大きくなった要因の一つではないだろうか。


まとめ

この同じ8月26日には米商務省経済分析局が7月の米個人消費支出(PCE:Personal Consumption Expenditure)を発表しているのだが、

変動の大きい食品、エネルギーを除いた個人消費支出(PCE)は前月比0.1%で市場予想の0.5%を下回り、前年比では4.6%で市場予想の4.7%を下回っている。

これは米国市場開場前に発表されており市場は開場直後はほぼ前日比横ばいだったのだが、10時から行われたパウエル議長の講演以降は右肩下がり。市場はパウエル議長講演の内容を待っていた事もおり、かつ講演内で単月の改善では十分と言える状況から程遠いと述べたことで7月のPCEはあまり市場に影響を及ぼさなかった。

気になるのは今後の米国市場の動きなのだがなかなか判断が難しそうだ。パウエル議長はインフレが抑制されるまで当面金融引き締めが必要としているものの9月の具体的な利上げ幅については言及しておらず、あくまでデータと見通しの動向次第としている。

そして9月のFOMC会合は9月20、21日の予定であり、その前の9月13日に米労働省が8月の消費者物価指数(CPI)を発表するので、9月の利上げ幅がどの程度になるかはCPIの結果が影響しそうだ。

しばらく神経質な市場の動きが続きそうな気がするが、ある程度長い目で見た場合に急激な景気減速とならずにインフレが落ち着き、市場が安定して欲しいものだ。

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