AT&T(T)2025年第1四半期決算発表(2025/4)

はじめに

2025年4月23日(水)には自分の所有しているAT&T(T)の2025年第1四半期決算の発表があった。

前回2025年1月の2024年第4四半期決算はダウ工業平均以外の市場がハイテク銘柄を中心に下落した中で6%を超える上昇となったのだが、

「今後のAT&T株だが、今回の決算内容は確かに今後への期待を抱かせるものではあったが、この様な決算が継続的に続いてくれるかどうかが注目ポイントだろう。次回決算も好内容で、下半期に予定している自社株買いへの確信が持てることを願いたい。」

と書いており、まだ継続する株価上昇については懐疑的だった。

しかし、その後主にトランプ政権の関税政策に起因する市場の大幅下落の中で、AT&T株はそこまで大崩れしていない印象がある。

そんな状況の中、今回の決算内容とそれを受けてのAT&T株はどうなったか。以下に内容を確認し整理しておく。


AT&T2025年第1四半期決算概要

以下の内容はAT&Tの企業サイトより引用・抜粋。

  • 2025年第1四半期の総売上高(Total Operating Revenues)は306億2600万ドル、前年同期の300億2800万ドルから2.0%増加
  • 2025年第1四半期のAT&T帰属の純利益(Net Income Attributable to AT&T)は43億5100万ドル、前年同期の34億4500万ドルから26.3%増加

  • 2025年第1四半期の調整後一株当たり利益(Adjusted EPS)は0.51ドル、前年同期の0.48ドルから6.3%増加

  • 2025年第1四半期のフリーキャッシュフローは31億4600万ドル、前年同期は27億7300万ドル

事業部業績

【Communications(通信)事業】

  • Operating Revenues(売上):295億6000万ドル、前年同期比2.4%増
  • Operating Income(営業利益):61億8900万ドル、前年同期比3.6%増
  • Operating Income Margin(営業利益マージン):23.7%、前年同期比0.3%増
  • 月額料金を支払う携帯電話契約数(Postpaid phone)は32万4000増

【ラテンアメリカ事業】

ラテンアメリカ事業はメキシコにおけるワイヤレスと機器サービスのみで、コミュニケーション事業に比べて事業規模が極めて小さいので以下の図表数値のみ参考として。

2025年通期見通し

2025年の通期見通しは以下の通り。いずれも前回から変わらず。

  • Revenue Growth(売上成長率)
    • Consolidated Service Revenues(連結): low-single-digit(一桁台前半)
    • Mobility Service Revenues: higher end of the 2% to 3% range(2~3%の範囲の上限)
    • Consumer Fiber Broadband Revenues:mid-teens(10%台半ば)
  • Adjusted EBITDA(調整後EBITDA):3% or Better(3%かそれ以上)
  • Capital Investment(設備投資):220億ドル(220億ドル程度)
  • Free Cash Flow:160億ドル超
  • Adjusted EPS(調整後EPS):1.97~2.07ドル

Free Cash Flow及びAdjusted EPSにはDIRECTVの数値は含まれず。

その他

その他決算及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。

  • 2024年の好業績に続き、2025年も好調なスタートを切ることができた
  • 経営陣が最も重視している2つのトピックについて
    • 当社の戦略を推進する中核的な事業原則
      • 5Gと光ファイバーを網羅する最大の統合プロバイダーとしての当社の差別化されたポジションが、高価値顧客関係の成長を牽引している
      • 第1四半期の業績は当社の差別化戦略が功を奏していることを改めて証明した
      • 当社は、今年度、無線通信業界の純増数と全体的な活動レベルがさらに正常化すると予想していたが、これまでこの予想は現実となり主要プロバイダーが新規顧客層の減少を巡って競争する中で、オファーやプロモーションに変化が見られた
      • 1月は低調だったが、当社はオファーを微調整し四半期の残り期間を通じてこうした状況下でも非常に健闘した
      • 当社の成長の主因は光ファイバーと5G戦略の成功、そして顧客獲得と維持への投資の増加、そして高価値顧客関係の持続的な成長の推進にあるということで事業基盤は非常に強固であり、2025年に向けた戦略と計画は順調に進んでいると確信している
    • 見通しが悪化したマクロ経済環境下においても、2025年の財務ガイダンスを達成し、第2四半期に計画通り自社株買いを開始できる見込みである理由
      • 政権がより公平な世界貿易の実現と国内製造能力の向上という称賛に値する目標を促進するための政策を推進する中で、米国企業はすべて現在、事業の可視性が低下している
      • 他社と同様に、我々も世界貿易の均衡を取り戻すためのこの取り組みを注視しており、それが経済全体に与える影響も懸念される
      • 発表された関税は、スマートフォンなどのデバイスだけでなく、ネットワークや技術機器のコストも上昇させる可能性がある
      • 現在相互関税の90日間の一時停止とサプライチェーンの可視性に基づき、年初に示した2025年の財務ガイダンスの範囲内で、予想されるコスト上昇に対応できると考えている
      • これは景気循環を通じた当社の重要な接続サービスに対する需要の歴史的な回復力、裁量的経費の削減そして今年後半に計画していたコスト削減策の加速という当社の決定によるもの
      • これにより、アナリスト・投資家向け説明会で発表した資本還元プログラムの拡大を実行できるという自信が得られ、今四半期に自社株買いを開始する予定
      • この環境は依然として流動的であり、相互関税の最終的な影響に基づいて、さらに最新情報を提供する
  • 第2四半期のモビリティ事業の動向について
    • 月額料金を支払う携帯電話契約数(Postpaid phone)の純増数は堅調に推移しており、総増数と解約数は概ね当社の予想と一致
    • 4月初旬の相互料金改定の発表以降アップグレードは予想を上回る傾向にあり、これが消費者のアップグレード行動の加速につながったと考えている
    • アップグレード率が引き続き高水準で推移すれば、下半期からの牽引役となる可能性がある
  • 光ファイバーネットワーク
    • 3年少し前、2025年末までに光ファイバーネットワークの拠点数を3000万以上にするという目標を設定したが、有機的な構築、Gigapower、その他の商用オープンアクセス契約を組み合わせることで、2029年までに光ファイバーの拠点数を5000万以上にするという目標に向けて着実に前進しており、今年半ばまでにこの目標を達成できると確信している
    • AT&T光ファイバー加入世帯の10世帯中4世帯以上が当社のモビリティサービスにも加入しており、統合型サービスの普及率は引き続き上昇している
  • 資本配分
    • 通期の設備投資額は引き続き220億ドル規模の見込み
    • 第1四半期にはバランスシートの強化をさらに進め、純負債を約10億ドル削減
      • 好調なフリーキャッシュフローと資産売却および戦略的投資による純収入によるもの
      • 為替変動による負債への影響は、その他の負債に計上された相殺分によって完全にヘッジしている
    • 当四半期末の調整後EBITDAに対する純負債は2.63倍で、昨年末の2.68倍から減少。引き続き調整後EBITDAに対する純負債を2.5倍規模とするネットレバレッジ目標を掲げて事業運営を行う
    • 先ほど述べた様に、今四半期中に100億ドルの承認額に基づく自社株買いを開始し、少なくとも30億ドルは年末までに完了し残りは2026年中に完了する予定
  • 質疑応答
    • 関税によるコスト増の影響
      • 端末コストの動向を考えると、現在端末のコストが(関税とは別に)4年前、あるいは3年前と比べてもかなり高騰していることを認識することが重要
      • 関税が端末単価上昇の次の要因となる場合、当社は全く同じ対応、つまり顧客のニーズを理解し、その過程で顧客サポートの方法を調整していく
      • コストをエンドユーザーに転嫁しつつ、最終的に当社の事業において適切な利益水準を生み出すために当社が負担できる範囲のビジネスモデルに組み込むことになるだろう
    • 3月にAT&TがLumenのマスマーケット向け消費者向け光ファイバー事業を買収する交渉をしているという報道があった点
      • 噂や憶測についてはコメントしない
      • 以前にも述べたが、引き続き資本集約度が少し低い、当社事業への魅力的な追加機能、ボルトオン機能、アドオン機能を見つける機会を模索していく
    • 今年の解約率について
      • 今年は契約の解約数が増え業界全体の成長率がよりも低くなると予想していた
      • 2023年と同程度の解約率が見込まれる
      • 一方新規顧客獲得数に関しては第2四半期これまで非常に良好な業績を継続しており、市場での総加入者数をに満足している
    • モビリティ事業EBITDAガイダンスの3%から4%の上限達成への自信について
      • この四半期はプロモーション費用を含みつつ3.5%の成長を達成した
      • また年後半に予定していたコスト削減策の一部を前倒しで実施する
    • 現在の消費者動向について
      • 今のところ消費者行動のダイナミクスにおいて、ビジネスのパターンやトレンドから外れるような変化は見られない
      • (価格上昇を)先取りして購入する人、あるいは逆に購入を先延ばしにする人がいるかもしれないが、どのくらいの規模、期間にわたって持続するのか、そしていつ変化するのかは判らない
      • たとえ一部の消費者がアップグレードを選択したり、追加購入の選択を先延ばしにしても、当社のより価値重視のプランで成長を続ける機会の組み合わせは有効であると考えている

市場予測との比較

今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、

  • 2025年第1四半期の総売上高(Total Operating Revenues)は306億2600万ドルで、市場予想の303億5000万ドルを上回っている
  • 2025年第1四半期の調整後一株当たり利益(Adjusted EPS)は0.51ドルで、市場予想の0.52ドルをやや下回っている
  • 2025年第1四半期の月額料金を支払う携帯電話契約数(Postpaid phone)は32万4000増で、市場予想の25万8300増を上回っている
  • 2025年第1四半期のフリーキャッシュフローは31億4600万ドル、市場予想の31億7000万ドルを下回っている

となっている。


まとめ

上記の様な決算結果を受けてAT&T株は

前日比0.85%の上昇。同日の米国市場が

ハイテク銘柄を中心に大きく上昇したのと比べると見劣りがする。まちまちな決算結果だったとはいえ、5Gモバイルと光ファイバーのバンドル戦略が堅調であることに基づく通期見通しの維持や自社株買いの発表などを考えるともっと上昇しても良かったと思うのだが。関税の影響が続くと消費者へのコスト転嫁が進むとしたことが嫌忌されたのだろうか。

決算翌日を含めた年初来のAT&T株の推移を市場(S&P 500)と比べてみると

冒頭に挙げた通りAT&T株はトランプ政権の関税措置発動以降も大崩れすることなく、約20%上昇している。

今後のAT&T株だが、年初来の株価や決算発表での経営陣の想定が正しいとすると堅調な株価推移が期待できそうな気もする。ただあくまで経営陣の目論見が正しければ、という前提があり、関税などが想定以上の悪影響を及ぼす可能性もまだ拭いきれない。自分の不安が単なる杞憂に過ぎないことを望みたい。

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