トランプ大統領の相互関税措置署名と市場の動き(2025/2)

はじめに

米国日付2025年2月13日(木)にトランプ大統領が相互関税に関する措置に署名した。

元々トランプ氏は大統領選の公約として関税強化を掲げており、2025年1月20日の大統領就任時に一律関税を課すのではという危惧はあったのだがその際には発行せず。その後カナダ、メキシコ、中国への関税を課すとしたが、結局カナダ、メキシコへの関税は延期され、中国には10%の追加関税が課されている

そんな状況の中でトランプ大統領は2月12日(水)に米国からの輸入品に関税を課す全ての国に相互関税を課す命令について「後でやるかもしれないし、あすの朝やるかもしれないが、われわれは相互関税に署名することになるだろう」と記者団に話し、2月13日(木)の米国市場取引開始前には「今日は重要な日だ:相互関税だ(Today is the big one: reciprocal tariffs)」と自身のソーシャルメディアTruth Socialに投稿していた。そして実際にトランプ大統領は13日(木)に冒頭の通り相互関税に関する措置に署名をしている。

以下、トランプ氏が署名した相互関税に関する措置の内容を確認すると共に、それを受けて市場がどう動いたかについて整理しておくことにする。


トランプ大統領が2025年2月13日(木)に署名した相互関税に関する措置

以下はロイター通信、ブルームバーグ等の報道より引用・抜粋。

【今回署名された相互関税措置の概要】

  • この日の指示は具体的な相互関税導入に至るものではなく、貿易相手国が米国製品に課している関税の調査開始を指示する覚書
  • 貿易関係の再均衡化を図るため、国ごとに新たな課税を提案するよう通商代表部(USTR)と商務省に指示

【ホワイトハウスの発表】

  • 米国に対する最大の貿易黒字国、米国に対し高関税を課している国を対象に優先的に調査に着手する
  • 関税率は他国が米国に課す関税率に合わせて設定され、米国産品への関税だけでなく、過度な規制、付加価値税、政府補助金、為替政策、知的財産保護の不備など米国製品の流通の阻害につながる非関税障壁への対抗措置を目指すものになる
  • 相互関税は2月13日に発動されず、トランプ政権の通商・経済チームが各国の関税措置や貿易関係を精査した上で、数週間以内に発動される可能性がある

【トランプ大統領の記者団へのコメント】

  • 公平性の観点から相互関税を課すと決定した。各国が米国に課している関税と同額を課す。それ以上でもそれ以下でもない
  • 相互関税に加え、自動車、半導体、医薬品に対して輸入税を課すつもり
  • それぞれの国は関税を引き下げるか、撤廃することができる
  • 付加価値税を採用している国についてはそれを関税と見なす
  • 関税回避を目的とした第三国経由の商品輸送は認めない

【トランプ氏が商務長官に指名しているハワード・ラトニック氏のコメント】

  • 対象となる国に個別に対応していく
  • 検討は全て4月1日までに終わり、その後大統領は直ちに(関税措置を)発動できるだろう

2025年2月13日(木)の市場の動き

米国株式市場

主要3市場はいずれもなかなかの上昇。S&P 500の日中の動きを見てみると

13日は米労働省が発表した1月の卸売物価指数(PPI)が前年比3.5%上昇と市場予想(3.3%)を上回ったのだが、米連邦準備理事会(FRB)が政策金利の観点で重視するコア個人消費支出(PCE)価格指数の算出における主要な項目が穏やか、もしくは下落していたこともあって、前日発表の米消費者物価指数(CPI)とは異なりインフレ抑制に期待を持たせるものであったため、株式市場は上昇の流れにあった。

そしてトランプ大統領が相互関税に関する措置に署名/発言した米東部時間14時位から更に上昇幅を拡大して取引を終えている。今回の関税措置が一律関税ではなかったことや、即時発動ではなかったことで市場に安心感が広かったのだろう。

米国10年債

債券市場のチャート米国中部標準時(CST)は米国東部標準時(EST)と1時間の時差がある。

PPIの結果を受けて取引開始と共に利回りが大きく低下したが、トランプ大統領の関税措置が発表されたCST13時頃からの動きは限定的で、その影響はほとん無かった。

ドル円為替

ドル円為替チャートの英国標準時(GMT)は、米国東部標準時(EST)と5時間の時差があるので、PPI発表時は上記チャートの13:30、トランプ大統領の関税措置署名は19:00頃。

まずPPI発表を受けて1ドル=153円台後半から153円台前半までドル安傾向が続き、トランプ大統領の関税措置が明らかになった頃に更にドル安となり1ドル=152円台後半となり、概ねその辺りでの取引が続いている。


まとめ

昨日就寝する前は、冒頭の様にトランプ大統領「今日は重要な日だ:相互関税だ(Today is the big one: reciprocal tariffs)」とSNSのTruth Socialに投稿していた事だけが判り、その中身については判らなかったために目覚めたらどうなる事かと思っていたのだが、結果的には自分が考えていたほど株式市場は酷い結果とはならなかった。

その理由としては

  • トランプ氏が米大統領選で掲げてきた、全ての輸入品に対する一律関税とは異なる相互関税である点
  • 2月13日の即時発動ではなく、4月初までの期間がありそうな点

が挙げられるだろう。それに加えて同日発表のPPI結果が、前日の米消費者物価指数(CPI)とは異なりインフレ鎮静化に期待を抱かせるものだったことが、株式上昇の流れを作っていたことも大きい。

とりあえず今回の関税措置は乗り切ったが、今回の措置を受けてどの様な国にどの様な関税措置を課すつもりなのかは4月初にならないと判らないだけで、全てが解決した訳ではない。また関税ではカナダ、メキシコへの関税も取り止めになったのではなく2月初から1ヶ月延期されただけであり、その結果も気にかかる。

昨日の米消費者物価指数(CPI)の際に触れた様に、インフレ関連の経済指標やFOMC結果により市場は神経質な動きが続きそうな事に加えて、今回の様なトランプ政権の政策が市場に及ぼす影響も無視出来ないため、自分が考えている以上に落ち着かない日々が続きそうだ。

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