2025年1月FOMC結果とパウエル議長発言(2025/1)

はじめに

米現地時間2025年1月28日(火)、29日(水)に2025年初めてとなるFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)が開催された。

前回2024年12月のFOMC会合は市場予想通り0.25%の利下げだったものの、四半期に一度の経済予測要旨で2025年の利下げ予想が2回に留まった(市場予想では3回)こともあって株式市場は下落、債券利回りは上昇、ドル円為替はドル高へと大きく変動することとなった。

その後はクリスマス休暇前後で薄商いの中、株式市場は大きく上下動した後に下落傾向。年が明けて2025年にもなって下落傾向は続き、1月10日発表の米雇用統計が力強いものだったためにインフレ懸念が再燃して株式市場は更に下落。しかし1月15日発表の米消費者物価指数(CPI)でコアCPIの伸びが半年振りに鈍化したことでインフレ懸念は和らぎ、その頃から本格化した米企業の四半期決算も好調なことから、市場は上昇傾向となっている。

そんな状況の中で今回のFOMCでの利下げは据え置きが有力視されていたのだが、FOMCによる政策金利結果及びパウエル議長の会見の内容、それを受けて市場はどう反応したのかを確認し整理しておく。


2025年1月28日、29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)結果、経済予測要旨及びパウエル議長の発言まとめ

FOMC会合結果

以下は米連邦準備制度理事会(FRB)のサイトで現地時間14時に公開されたFederal Reserve issues FOMC statement(FOMC声明)より引用・抜粋。

前回からの主な変更点等は以下の通り。

【最近の経済】

  • 前回は「経済活動は堅実なペースで拡大、年初以来労働市場の状況は概ね緩和しており、失業率は上昇しているが依然として低い」、「インフレ率は委員会の2%目標に向けてさらに前進しているが、依然としてやや高い」
    ⇒「経済活動は堅実なペースで拡大、失業率はここ数ヶ月低水準で安定している、労働市場は引き続き堅調」、「インフレ率はやや高いままである」
    ⇒多少文言は変更されたが大意は変わらず。また「インフレ率は委員会の2%目標に向けてさらに前進している(Inflation has made progress toward the Committee’s 2 percent objective)」という言葉が今回は無くなっている(会見で質問あり)

【委員会の目的と現状】

  • 前回は「委員会は長期的に雇用の最大化と2%のインフレ率の達成を目指している」、「雇用とインフレの目標を達成するリスクはほぼ均衡していると判断している」、「経済見通しは不透明であり、委員会は雇用とインフレの双方に対するリスクに注意を払っている」
    ⇒一言一句変わらず

【今後の政策金利決定に関して】

  • 前回は「委員会は目標達成のため、フェデラルファンド金利の目標範囲を0.25パーセントポイント引き下げて4.25~4.50%にすることを決定した」
    ⇒委員会は目標達成のため、フェデラルファンド金利の目標範囲を4.25~4.50%に維持することを決定した
  • これ以外は前回と一言一句変わらず(フェデラルファンド金利の目標範囲に対する追加調整の範囲と時期を検討するにあたり、委員会は、入ってくるデータ、変化する見通し、リスクのバランスを慎重に評価する)

今回の政策金利決定は全会一致。

パウエル議長の発言

以下はFOMC会合結果開示後のパウエル議長の会見における主な発言より。

  • 金融政策スタンスが景気を抑制する度合いは以前より大幅に弱まっており、経済は強さを維持していることから、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない
  • 制約的な政策を早急に緩和すれば進展が妨げられる一方、過度に遅ければ雇用に悪影響が及ぶ可能性があるため、あらかじめ決められた方針はない
  • トランプ大統領の発言や政策に関して
    • 大統領の発言(最近FRBは利下げを進めるべきと発言)についてはコメントしないし、接触もない
    • 委員会はどのような政策が実施されるかを見守る姿勢であり、そうした政策が経済にどのような影響を及ぼすのかについて妥当と考えられる評価を下す前に、政策自体が明瞭になるのを待つ必要がある
    • 現在は重要な政策転換により不確実性が高まっているが、一時的なものと認識している
  • 次回FOMC会合(3月)で利下げを実施する可能性について
    • 利下げを急いでいない
    • FOMCはインフレ面でのさらなる進展を示唆する指標が続けて示されるのを確認したい
  • FOMC声明で「インフレ率は委員会の2%目標に向けてさらに前進している」という言葉が削除された理由について
    • 声明ではインフレに関する部分を短くすると決めただけ
    • (市場に何らかの)シグナルを送ることを意図したわけではない

FOMC会合結果及びパウエル議長の発言を受けての市場

米国主要3株式市場

主要3市場はいずれもやや下落。S&P 500の日中の動きを詳しくて見てみると

やや下落傾向で取引が始まり14時のFOMC声明発表と同時に下げ幅を拡大。これは声明で「インフレ率は委員会の2%目標に向けてさらに前進している」という言葉が削除されたことから、インフレ懸念が強まったためだと思うが、その後14時半からのパウエル議長の会見で、文言の削除は上述したように特にシグナルを送る事を意図したものではないとの説明を受けて値を戻している。

米国10年債

FOMC声明が発表された米国東部標準時14:00は上記チャートのCST(米国中部標準時)では13:00。S&P 500とは概ね反対の動きで取引開始から利回りはやや上昇し、FOMC声明発表時に一段高となったもののパウエル議長の会見が進むにつれて利回りはFOMC前の水準に戻っている。

ドル円為替

FOMC声明が発表された米国東部標準時14:00は上記チャートのGMT(英国標準時)では19:00。FOMC声明を受けてドル高となったものの、パウエル議長の会見が進むにつれて値を戻し、その後はドル安傾向が続き1ドル=155円台を割り込んで154円台半ばでの推移となっている。


まとめ

今回のFOMCでは政策金利据え置きが高い確率で見込まれており実際その通りだった。そしてFOMC声明での「インフレ率は委員会の2%目標に向けてさらに前進している」という文章の削除がインフレ懸念を想起させ市場は大きく動いたのだが、その後のパウエル議長の会見でその懸念は和らぎ、市場はFOMC前と同程度の水準となっている。

一方で今後の利下げ時期についての手掛かりはほとんど示されていない。FOMC声明発表前はFRBが年内に計約0.48%の利下げを行うとの見方だったが声明発表後は0.46%となり、FRBが年内に0.25%の利下げを2回行うとの観測がやや後退したことになる。

結果的に今回のFOMCイベントは無難に通過した訳だが、やはり気になるのは今後のトランプ大統領の政策だろう。トランプ氏が大統領に就任したのは1月20日であり、その政策の影響が経済指標に反映されていくのにはまだ時間がかかる。トランプ政権下で今後の経済指標がどうなるのか、そしてそれらを勘案してFRBがどう政策金利の舵取りをしていくのか、その結果自分の米国株資産にどの様な影響が出てくるのか。まだまだ気が休まらない状況が続きそうだ。

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