中国新興AIの注目に伴う市場下落と自分への影響(2025/1)

はじめに

2025年1月27日(月)の米国株式市場は

ダウ工業平均は上昇したものの、ハイテク銘柄の比重が大きいS&P 500、NASDAQ総合は大きく下落。特にNASDAQは3%を超える下落となっている。

これは掲題に挙げた中国の新興企業DeepSeekが急速に人気を拡大し、AI分野を主導する米企業の見通しに懸念が広がったためと思われる。

以下、DeepSeekについての情報と米AI関連銘柄、そして自分の資産への影響を整理しておくことにする。


DeepSeek人工知能(AI)モデルと直近の動向

以下は主にブルームバーグ、ロイター通信、ZDNET、CNET等の記事より引用・抜粋。

  • DeepSeekは中国の杭州を拠点とする梁文峰氏が2023年7月に設立した企業
  • 2025年1月20日、DeepSeekは数学的推論やコーディング能力でOpenAIの最新モデル「o1」と同等性能を持つ大規模言語モデル「DeepSeek-R1」を公開
  • 使用・複製・改変・再配布を自由に許可するMITライセンス(マサチューセッツ工科大学(MIT)で開発されたオープンソースソフトウェア(OSS)のライセンス)下でのオープンソース提供と従来比95〜97%の低コストAPI(Application Programming Interface))価格が特徴
  • DeepSeek-R1とOpen AI o1の主なベンチマーク比較(太字が上回っている)
    • AIME 2024(高度な数学問題)
      • DeepSeek-R1は79.8%、Open AI o1は79.2%
    • MATH-500(AIME 2024より高度な数学問題)
      • DeepSeek-R1は97.3%、Open AI o1は96.4%
    • Codeforces(プログラミングスキル)
      • DeepSeek-R1は96.3%、Open AI o1は96.6%
    • GPQA Diamond(多段階推論)
      • DeepSeek-R1は71.5%、Open AI o1は75.7%
    • MMLU(一般知識)
      • DeepSeek-R1は90.8%、Open AI o1は91.8%
    • SWE-bench Verified(ソフトウェア工学関連)
      • DeepSeek-R1は49.2%、Open AI o1は48.9%
  • DeepSeekからの詳細な説明は無いが、Open AIなどと比べて開発費用は安価らしい
    • アメリカは最先端半導体の対中輸出を制限しているため、規制水準を下回るH800 Nvidiaチップを約2000個(560~600万ドル)使用して、初期のAIモデルを開発したとされている
    • 米企業はAI開発に多額の投資をしており、先日にはトランプ大統領が民間部門による人工知能(AI)インフラへの最大5000億ドルの投資(Stargate Project)を発表
  • ユーザー価格設定も安価(太字が安価)
    • 入力コスト(100万トークン)
      • DeepSeek-R1は0.55ドル、Open AI o1は15.0ドル
    • 出力コスト(100万トークン)
      • DeepSeek-R1は2.19ドル、Open AI o1は60.0ドル
  • 市場調査会社AppfiguresによるとDeepSeekのモバイルアプリはこの週末(1月25、26日)に急速にダウンロード数が増加し、米国日付1月27日(月)朝時点でApp Storeでは111ヶ国、Google Playでは18ヶ国で無料アプリのトップ10リスト入りしている
    • 1月24日(金)の時点でDeepSeekのモバイルアプリはApp StoreとGoogle Play の両方で100万ダウンロード程度だったが、1月27日(月)朝時点で260万ダウンロードに急増

まとめてみるとDeepSeek-R1の性能はOpen AI o1とほぼ遜色ないながらも、開発に要した費用は米AI投資に比べてはるかに安価であり、かつユーザーが使用するコストも安価となっているため、米AI投資の費用対効果やこれまで/これからのAI投資に関する懸念が強まったということになるだろう。


米国市場及び自分の個別株の動き

冒頭で見た様に1月27日の米国市場は、上記の様にDeepSeekの人気が急速に高まる中で、AIが米国の半導体メーカーからデータセンターまでサプライチェーン全体で需要を促進するという見方に疑問が広がったことで関連ハイテク銘柄を中心に大きく下落。

主な関連銘柄を見ると

  • エヌビディア(NVDA、半導体):16.97%下落
  • オラクル(ORCL、AI開発):13.79%下落
  • デジタル・リアルティ(DLR、データセンター運営):8.73%下落
  • デル・テクノロジーズ(DELL、AI用サーバー):8.70%下落
  • アルファベット(グーグルの親会社GOOGL、AI開発):4.20%下落

などと軒並み大きく下落。

自分が所有しているポートフォリオ銘柄にはハイテク関連の銘柄はほとんどないのだが、それでも数少ない関連銘柄であるシスコ・システムズ(CSCO、データセンターにかかわるネットワーク機器)とGEベルノバ(GEV、データセンターへの電力供給)は

いずれも下落。特にGEベルノバは1日で90ドル、21.5%の急落となってしまっている。シスコが100株、GEベルノバが120株と保有数は少ないのだが、GEベルノバ株はそれでも1日で90.49ドル×120株=10,858.8ドルと1万ドルを超える下落となった。

GEベルノバについては直近の決算まとめ時

「AIへの積極的な投資がいつまでも続くわけでもないので、どこかで反動が来る可能性も頭には入れておきたい。」

と書いてはいたのだが、まさかこのタイミング、この様な形でこれ程下落するとは想像もしていなかった。


まとめ

まずは今後AI関連銘柄がどういう動きをするのかに要注目。DeepSeekの躍進が一時的なものなのか、今後も続くのかはある程度時間を経ないと判らないだろう。また中国企業のDeepSeekは他の中国製AIモデルと同様に中国でセンシティブと見なされるトピックについては自主検閲を行っており、情報セキュリティの観点での懸念もある事がどう捉えられていくのかも気になるところ。

そして自分の米国株投資だが、GEベルノバが1万ドル以上下落したもののAI関連/大型ハイテク銘柄はほとんどなく、同日決算のあったAT&Tの上昇がGEベルノバの下落分を相殺してくれたため、

ダウ工業平均には及ばなかったが、幸いにも上昇して取引を終えている。

これまでのAI関連銘柄上昇に伴う恩恵は少なかったし、今後DeepSeekによる下落が一時的だった場合の恩恵も受けられないのだが、自分の投資スタイルは株式売却に伴うキャピタルゲインではなく、長期投資/バイアンドホールドでのインカムゲインで配当金生活を送るスタイルなので、配当金が(ほとんど)無い大型ハイテク銘柄を所有しないスタイルを今後も続けていくことになるだろう(まあ既に完全リタイアしているので、新たな米国株を購入する機会はほとんどないのだが)。

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