はじめに
例年6月に結果が公表されている米連邦準備制度理事会(FRB)による米銀ストレステスト(テスト自体は年明けから実施)だが、ここ数日で急に動きがあったので以下それらについて確認して整理しておく。
2024年12月23日のFRB発表
以下は米東部時間12月23日16時にFRBのサイトで発表されたリリースより引用・抜粋。タイトルは「Due to evolving legal landscape & changes in the framework of administrative law, Federal Reserve Board will soon seek public comment on significant changes to improve transparency of bank stress tests & reduce volatility of resulting capital requirements」と長く、訳すと「法制度と行政法の枠組みの変化により、連邦準備制度理事会は銀行のストレステストの透明性を高め、結果として生じる資本要件の変動性を低減するための重要な変更について、まもなくパブリックコメントを求める予定」となる。
- ストレステストは、毎年変わる仮想的な不況シナリオの下での大手銀行の損失、収益、資本レベルを推定することにより大手銀行の回復力を評価するもので、資本は損失を吸収するクッションとして機能し、不況時でも銀行が家計や企業への融資を継続できるようにするもの
- 15年以上前に開始されて以来、ストレステストに参加した大手銀行の資本レベルは2倍以上、1兆ドル以上増加
- 理事会は以下の変更などを提案するつもりであるが、全体的な資本要件に重大な影響を与えることを意図したものではない
- ストレス下にある銀行の仮想損失と収益を決定するすべてのモデルを公開
- ストレステストの結果生じる資本要件の前年比変化を減らすために2年間の結果を平均する
- シナリオが最終決定される前に、テストで毎年使用される仮想シナリオについてパブリックコメントを求める
- 理事会は変化する法的状況を考慮して現在のストレステストを分析し、その回復力を向上させるために重要な点についてテストを修正することを決定した
- ストレステストとは別の方法で銀行システムに対する追加リスクを評価する探索的分析は継続し開示する。この分析は銀行監督と金融安定性の評価に役立てられ、銀行の資本要件には影響しない
2024年12月24日の米銀行業界団体の動き
以下はロイター通信、ブルームバークの報道より引用・抜粋。
- 米銀業界団体は12月24日、銀行に対する年次ストレステストが法律に違反しているとして米連邦準備理事会(FRB)を提訴
- 提訴したのは銀行政策研究所や米銀行協会、米商工会議所など。訴訟はオハイオ州コロンバスの連邦地裁で提起
- FRBが仮想的な経済混乱に対して大手銀行がどのようなパフォーマンスを示すかを判断し、それに応じて必要資本を割り当てるというやり方は適切な行政手続きにのっとっておらず、銀行資本に不安定で説明不能な要件や制限を強いて金融サービスのコストに影響を及ぼしている、と主張
- 原告側はストレステスト自体の廃止を求めているわけではないが、2024年のストレステストで使用されたモデルとシナリオ、および25年と26年のものについても違法だと裁判所に宣言するよう要請し、ストレステスト実施前にモデルについてFRBに意見公募を義務付けることなどを裁判所に求めている
まとめ
ストレステストに関する動きが連日あった訳だが、米銀行業界団体が求めているストレステストに関する詳細の開示や、パブリックコメントを募ることなどは前日にFRBが対応する動きを見せており、FRB/米銀行業界団体ともストレステストを無くすことは意図していない。それぞれが準備を進めて、たまたま発表がほぼ同じタイミングになったということなのだろう。
結局総論では大きな乖離があるようには見受けられないが、細かい部分で揉める可能性もあり今後の動きには注意していく必要があるだろう。ただ、24日(FRBの発表は23日の取引には影響せず)の大手米銀行株が
軒並み1%を超える上昇となり、市場と比べて
同等かやや高めとなっていることから、この動きは米銀株にとっては悪いことではないことを期待したい。