米2025年度予算のつなぎ予算案が可決(2024/12)

はじめに

米現地時間2024年12月21日になってから、掲題の通りアメリカ2025年会計年度(2024年10月から2025年9月末)の来年3月半ばまでのつなぎ予算案が可決され、バイデン大統領の署名がなされ、これにより一部政府機関の閉鎖はギリギリで回避された。

以下、今回のつなぎ予算案の概要と可決までの経緯について簡単に整理しておくことにする。


今回可決された米2025年度のつなぎ予算案概要と経緯

  • 2025会計年度の歳出法案成立までの間に政府閉鎖を回避するためのつなぎ予算法案は、9月にいったん下院で否決されたものの修正案が可決され、署名されている。
    • 修正前は2024年度歳出法と同規模での予算拠出を2025年3月20日までの6ヶ月間行うとしたものだったが、期限が2024年12月20日までの約3ヶ月間に短縮された
  • 上記9月のつなぎ予算案の期限が近付き、2025年度歳出法案の審議には時間が必要なことから、新たなつなぎ予算法案が模索されていた
  • 米下院は12月17日、2025会計年度の歳出法案成立までの間政府閉鎖を回避するための新たなつなぎ予算法案を発表。主な内容は以下
    • 2025年3月14日まで現状と同水準の支出を維持
    • ハリケーンなどの被害に対応するため、援助資金を約100億ドル追加
    • 農業法に基づく政策を2025年9月まで延長するなど、農村地域への支援強化
    • 2024年3月に発生したボルティモア港の事故によって崩落した橋の再建費用を連邦政府が負担
  • トランプ次期大統領が12月18日に上記つなぎ予算法案に対しSNSで反対する声明を発表。主に以下の2点を求める
    • 民主党への利益供与のないつなぎ法案とすること
    • 2025年1月2日から再び有効となる債務上限に関し、今すぐに引き上げを議論すること
  • トランプ次期大統領は、債務上限に関してバイデン政権の間に解決することを要請
    • 2025年に債務上限に直面することを許したことは、議会共和党員によってこれまで行われた最も愚かで無能なこと
    • トランプ次期政権で債務上限問題を解決しようとする愚かな共和党議員は予備選挙にかけられるべきだし、そうなるだろう
  • トランプ次期大統領らの批判を受けてつなぎ予算法案が修正される
    • 上述した4点は変わらず
    • 報道によると農業関連で盛り込まれていたトウモロコシなどから生成されるバイオエタノールの通年販売を承認する条項、議員歳費に関する条項、小児がん研究に対する資金を提供する条項など複数の条項が削除
    • また、トランプ氏の要望を反映して債務上限の適用を2027年1月30日まで停止する条項が盛り込まれる
  • トランプ氏はこの修正されたつなぎ予算法案を支持
  • 12月19日に米下院で修正されたつなぎ予算法案が否決される
    • 政府支出を拡大し、債務を増大させる案に共和党の保守派議員が反対し、賛成174、反対235で否決(共和党から38人の造反)
    • 仮にこの案が下院を通過していたとしても、現在民主党が多数派を握る上院での可決は難航が予想されていた
  • 12月20~21日につなぎ予算法案が上下両院で可決される
    • 債務上限の適用を停止する条項が削除された
    • 可決後の米下院ジョンソン議長のコメント
      • 正しいことをするために全員がまとまったことに感謝している。今年最後の仕事としてこれをこなした今、1月に大きく重要な新しい出発の準備ができた
      • 法案可決までの交渉の中でトランプ氏とマスク氏の両方と、頻繁にやり取りをした
    • 可決後の次期政府効率化省(DOGE)長官イーロン・マスク氏のSNS
      • 今の状況からして、議長は良い仕事をしたと思う
    • バイデン大統領は既に法案に署名する意向を示している
    • 上院の可決は21日になってからだったが、一部政府機関の閉鎖は回避された

まとめ

ということでつなぎ予算法案は可決され、取り沙汰された一部政府機関の閉鎖も回避された。

同日の米国市場は

取引開始時は前日比ほぼ横ばい程度だったが最終的にはまずまずの上昇で取引を終えており、つなぎ予算法案の影響は感じられない結果となっている。この日に発表された米個人消費支出(PCE)価格指数や、連邦準備理事会(FRB)当局者の発言により金利の先行き懸念が和らいだ方が重要視されたようだ。

とりあえず3月までのつなぎ予算案は可決されたが、1月20日からは11月に改選された議会勢力での議論となり、上下両院ともに共和党が多数となったことから、よりトランプ氏の意向が反映された形になるのだろう。

トランプ氏が求めている債務上限の撤廃は、トランプ氏が掲げている財政政策を財政赤字の規模に縛られることなく実施することが可能となるが、米国の財政赤字が増大する恐れもあるので、来年の歳出法案(本予算)議論がどうなるかについては注目しておきたい。

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