中東情勢の更なる緊迫化が米国市場に与えた影響(2024/10)

はじめに

つい数日前に

サウジアラビアの原油増産検討報道について(2024/9)

というまとめをし、報道を受けて原油価格は下落し報道が事実であれば(その後現時点でサウジアラビアの反応を含め追加報道はない)更に下落傾向となる可能性が大きくなると書いていたのだが、昨日10月1日のニューヨーク原油先物価格は

1バレル=67ドル前後から上昇し70ドルを超える水準と数日前の想定とは異なる動きとなっている。

これは掲題の通りこれまでも緊迫化していた中東情勢がイランによるイスラエルへのミサイル攻撃開始が報じられ、地政学的リスクが一段と認識されることになったためだろう。

以下、中東情勢の更なる緊迫化に伴い米国市場がどう動いたのかについて確認しておくことにする。ただし中東情勢自体については自分では不明な点が多いため省略する。


2024年10月1日の米国市場

米国主要3株式市場

イランによるイスラエルへのミサイル攻撃開始が報じられたのは米国株式市場開場とほぼ同じ午前9時半前後。開場と同時にそれを受けてS&P500、NASDAQ総合が下げ幅を拡大し、午後になってやや持ち直したものの中東情勢をにらんで不安定な動きの中で主要3市場とも下落して終えている。

また同日米東海岸とメキシコ湾岸の港湾労働者が約50年ぶりの大規模ストライキに突入しているのも悪材料だっただろう。このストの成り行き次第では経済成長/FRBの利下げに影響を与える可能性も取り沙汰されている。

米国10年債

上記米国債券市場チャートのCDT(米国中部夏時間)はEDT(米国東部夏時間)より1時間遅い。

取引開始と共に前日より大きく利回りが低下しているのは、ホワイトハウスがイランがイスラエルに対して弾道ミサイル攻撃を行う差し迫った兆候があると明らかにしていたためだろう。そして実際に攻撃のあった9時半前後(上記チャートでは時差のため8時半前後)で一段と利回りが低下している。しかし、その後は状況を見極めようとする動きや当日発表された8月の雇用動態調査(JOLTS)で雇用が軟調であり労働市場の減速が示され、次回米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利下げに変わりはないとみられることが評価されたことから午後になって利回りはやや持ち直して取引を終えている。

ドル円為替

上記ドル円為替チャートはBST(英国夏時間)でありEDT(米国東部夏時間)とは5時間の時差がある。

やはりイランのイスラエル攻撃が行われたBST14時半(EDT9時半)頃にドル円為替はドル安に転じたが、その後は方向感に乏しい動きの中でややドル高傾向で攻撃前の水準に近くなり、143.5ドル近辺での動きが続いている。

ニューヨーク原油先物価格

チャートは冒頭に挙げたので割愛。

上に挙げた米国株式市場、米国10年債、ドル円為替に比べると約5%と変動幅が一番大きくなっている。他は上で述べてきた通り、経済指標やストライキなどの影響が加味されたが、原油先物価格については中東情勢による供給懸念が主な観点だったからだろう。


まとめ

中東情勢の更なる緊迫化に伴い米国市場がどう動いたのかについて確認してみた。

イランのイスラエル攻撃の報を受けニューヨーク原油先物価格が大きく上昇したのは想定通りだったが、それ以外のその他米国市場は自分が想定したよりも影響は限定的だった気がする。

米国市場の動向を整理する中で、同日の経済指標や約50年ぶりの米東海岸とメキシコ湾岸の港湾労働者による大規模ストライキ突入、復旧に数十億ドル規模の事業が必要で数年かかるとされるハリケーンの被害の企業業績への懸念といった出来事/状況が中東情勢の緊迫化と共に(原油先物価格以外は)米国市場への影響が大きかった気がする。ただ中東情勢はこれまで以上に今後どうなるかが混沌としてきたため、10月1日の米国市場への影響が限定的だったとはいえ地政学リスクが続くことはこれまで以上に頭に入れておく必要がある。

そして個人的には米国市場を整理する中で判った50年振りの港湾労働者のストライキの影響が気にかかる。もしストライキが長引く様な事態に陥れば、それはCOVID-19下で企業業績の重しとなったサプライチェーンの混乱を想起させるし、11月のFOMCで有力とされていたFRBの利下げ判断にも影響を及ぼすかもしれない。

ここまで挙げてきた市場に影響を及ぼす出来事/状況に加え、日本の首相が交代したことによるドル円為替への影響、11月頭に迫ってきた米大統領選の結果、10月半ばからの米企業の主に6~9月期の決算発表といったものも控えており、今後米国市場がどうなるかは極めて不透明な状況。何とか穏当に乗り切ってもらいたいものだ。

最後にここ2ヶ月

2024年7月末から8月初めの1週間で資産が約1450万円減少

S&PとNASDAQが2024年最悪の週間下落(2024/9)

月初に米国株式市場が大きく下落していたので、この10月もそういった事態に陥らないことを切に願いたい。

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