はじめに
米国時間2023年9月13日(水)に2023年8月の米消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が米労働統計局から発表された。
前回のCPIはほぼ市場の想定範囲だったためか米国株式市場は前日比でほぼ変わらず。ただし米国債やドル円為替にはそれなりの変動があった。米国債は午後に行われた30年債の入札影響、ドル円為替はCPI結果を受けて日米金利差がまだ続くだろうとの観測からドル高になったものと思われる。
その後8月下旬のジャクソンホール会議におけるパウエル議長の講演では、「critical(極めて重要)」という単語を使い今後のFOMCでデータ分析とリスク管理をより重視する姿勢を打ち出しているため、今回のCPI結果によっては大きく市場が動く可能性があった。
実際のCPI結果、そしてそれを受けて市場はどう動いたのか。以下に確認して整理しておく。
2023年9月13日米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)発表の2023年8月消費者物価指数(CPI)
以下の情報は米労働省労働統計局の発表資料より引用・抜粋。
- 2023年8月の前月比消費者物価指数(季節要因調整済)は0.6%上昇、市場予想も0.6%の上昇
- 2023年8月の前年比消費者物価指数(季節要因調整済)は全品目では3.7%上昇、市場予想は3.6%の上昇。変動の大きい食品及びエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは前年比4.3%上昇、市場予想も4.3%の上昇
- 家庭用食品(Food at home)は前年比3.0%上昇。2023年7月は前年比3.6%上昇
- 電気代(Electricity)は前年比2.1%上昇。2023年7月は前年比3.0%上昇
- 住居費(Shelter、主に家賃。サービス分野で最大の構成要素でCPI全体の約3分の1を占める)は前年比7.3%上昇。2023年7月は7.7%上昇
変動の大きい食品及びエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは前月比0.3%の上昇で市場予想は0.2%の上昇となっている。
同日の市場の動き
米国市場
3市場とも似たような動きで午前と午後に下落の局面があってダウ平均はマイナスとなったが結果的には前日比で大きな変化はなし。総合CPIは前月比の伸びが過去1年で最高の0.6%だったものの、ガソリン代の上昇が大きく市場予想とも同じ。市場により重要視されるコアCPIは前年比では低下したものの、前月比では半年ぶりに上昇するという判断がしづらい結果だったことが影響して方向感が乏しい結果となったのだろうか。
米国10年債
米国10年債は取引開始後は方向感に乏しい動きだったものの、昼あたりから利回りの低下が顕著となって取引を終えている。コアCPIが約2年ぶりの小幅な伸びにとどまったことを受けて、米連邦準備理事会(FRB)が来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利を据え置く可能性が高まったとの見方が時間経過と共に強まったためと思われる。
ドル円為替
CPIの発表があった米ET8:30は上記ドル円チャートのBST1:30。発表直後は方向感のない動きだったがややドル高。しかしその後も方向感がつかめない動きの中でややドル安傾向となっている。債券市場と同様次回FOMCで金利据え置きとなる見方が強まったためだと思われる。
まとめ
今回のCPI結果も前回と同様ほぼ市場の想定通り。ただ株式市場は前日とほぼ変わらず、米国債利回りは低下、ドル円為替はややドル安とCPIを受けての反応にはバラつきがあった。
ただしいずれも変化幅はそれ程大きくなく、冒頭のジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演から経済指標の内容次第で大きな変化になるかもしれないと思っていた事態は避けることが出来たので悪くない結果だったと言える。
実際自分の米国株ポートフォリオも全体では
前日比ほぼ変わらずで概ね市場とそれ程大きな差異はなかった。
ところが実際の個別株を見てみると
1%以上の変動をしている銘柄が結構あり、個別銘柄にはバラつきがある結果となった。こういうケースの場合は大体個別銘柄もそれ程動きが無いことが多いのでこの結果は意外。ポートフォリオ全体としては無難にイベントを乗り切ったと思ったのだが、個別銘柄への影響はまちまちであり今後に懸念を抱かせる結果というのが正確だったようだ(もちろん個別株にはCPI結果以外の個別要素が上下動に影響した銘柄もあるのだが)。
次回のFOMC会合は9月19、20日となるがそれまでにも政策金利に影響を及ぼすであろう経済指標は複数あるので、まだ方向感がつかめない展開が続きそうな気がする。