はじめに
2023年1月24日(火)には自分の所有銘柄であるゼネラル・エレクトリック(GE)の2022年第4四半期決算発表があった。
年初にGEヘルスケア・テクノロジーズ(GEHC)をスピンオフしてからは割と順調に株価が推移していた気がするが、今回の決算内容でその傾向が継続するのか変化するのか。
以下決算内容を確認し整理しておく。
ちなみにGEHCのスピンオフは2023年1月3日のことなので、今回のGEの四半期決算の数値にはスピンオフされたヘルスケア事業も含まれている点には注意。
2022年第4四半期決算概要
以下の内容は、ゼネラル・エレクトリックの企業サイトより引用・抜粋。
- 2022年第4四半期の総売上高(Total Revenues)は217億8600万ドル、前年同期は203億300万ドルで前年同期比7%の増加
- 2022年第4四半期の調整後一株あたり利益(Adjusted EPS)は1.24ドル、前年同期は0.82ドルで前年同期比51%の増加
- 2022年第4四半期のフリーキャッシュフロー(純現金収支・Free Cash Flow)は42億8600万ドル、前年同期は37億800万ドルで前年同期比16%の増加
事業部別業績
【Aerospace(航空)】
受注は96億8200万ドルで前年同期比26%増加、売上は76億1500万ドルで前年同期比26%増加、収益は14億3400万ドルで前年同期比18%増加、マージンは18.8%で前年同期は20.3%。
マージンが前年同期比で減少しているのが気になったが、コスト圧力に加え事業成長のための投資などの影響もあり、通年で見ればマージンは前年に比べて増加している。
【Healthcare(ヘルスケア事業)】
ヘルスケア事業は先述の通り2023年1月にスピンオフされているため、全体の数値に2022年第4四半期分は含まれているものの詳しい内容についてはGEヘルスケア・テクノロジーズの決算発表で行われる。この資料も本文中ではなくAppendixとして紹介されている。
【Renewable Energy(再生可能エネルギー事業)】
受注は50億2900万ドルで前年同期比7%増加、売上は34億1300万ドルで前年同期比13%減少、収益は4億5400万ドルの損失で前年同期は3億1200万ドルの損失、マージンはマイナス13.3%で前年同期はマイナス7.4%。
主に風力タービン事業が低迷していることで年間を通して再生可能エネルギー事業部門が全体の足を引っ張っており、2022年の年間マージンはマイナス17.3%で2021年のマイナス5.1%から更に大きく低下している。
【Power(電力事業)】
受注は54億4200万ドルで前年同期比29%増加、売上は50億3000万ドルで前年同期比12%増加、収益は6億9200万ドルで前年同期比12%増加、マージンは13.8%で前年同期は6.6%。
2023年通期見通し
2023年の通期見通しは以下の通り。
今回から事業の見通しに関してはGE AerospaceとGE Vernova(PowerとRenewable Energyを合わせたもの)の2つとなっている。これは2024年初頭にGE Vernovaがスピンオフ予定であることと関係しているのだろう。
【全体】
- 既存事業売上成長率(Organic revenue growth):一桁台後半(HSD:High Single Digit)
- Adjusted EPS:1.60~2.00ドル
- Free cash flow:34~42億ドル
【GE Aerospace】
- 既存事業売上成長率(Organic revenue growth):10%台半ばから後半(mid-to-high teens)
- Operating profits(営業利益):53~57億ドル
- Free cash flow:Up
【GE Vernova】
- 既存事業売上成長率(Organic revenue growth):一桁台前半から半ば(low-to-mid single digits)
- Operating profits(営業利益):マイナス6~マイナス2億ドル
- Free cash flow:flat to slightly improved(横ばいからやや改善)
2023年の見通しは、2022年の流れを受けてAerospaceが好調なものの、Vernova特に再生可能エネルギーが引き続き低調と予想され、通年でのVernovaの営業利益はマイナスの見通しとなっている。
その他
その他決算発表及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。
- 第4四半期に約420万株を3億ドルで買い戻し
- 事業再編計画の一環で、オンショア風力事業の従業員を世界で約20%削減
- GE Vernovaのスピンオフ進捗状況とタイムラインについては3月9日予定のinvestor conferenceでお伝えする
- PTC(Production Tax Credit:再生可能エネルギーに関する生産税控除)の失効による需要の減少は2022年の再生可能エネルギーの業績に大きな影響を与えたが、インフレ削減法(Inflation Reduction Act)は今後の業界にとって真のゲームチェンジャー(real game changer)である
アナリストとのカンファレンスコールではフリーキャッシュフローと再生可能エネルギー事業に関する質問が多かった印象。またGEのカンファレンスコールではJPモルガンのStephan Tusa氏が出席し、その後数日でGEの投資評価をアップデートした結果でGE株が大きく動くことが多かったのだが、今回はTusa氏はカンファレンスコールに出席せず。調べてみるとどうも同日行われた3M(MMM)のカンファレンスコールに出席した模様。
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2022年第4四半期の総売上高(Total Revenues)は217億8600万ドル、市場予想の219億4000万ドルを下回っている
- 2022年第4四半期の調整後一株あたり利益(Adjusted EPS)は1.24ドル、市場予想の1.16ドルを上回っている
- 2023年通期の調整後一株あたり利益見通しは1.60~2.00ドル、市場予想の2.36ドルを下回っている
- 2023年通期のフリーキャッシュフロー見通しは34~42億ドル、市場予想は40億ドル
となっている。
まとめ
上記の様な決算を受けてGEの株価は
前日比1.17%の上昇。同日の米国市場が
まちまちではあるが前日からあまり変化が無かったのを考えるとまずまずの結果だったと言える。
ただGEの日中の動きとS&P 500を比べてみると
開場直後は前日比で大きく下落し、その後持ち直したものの一時前日終値を下回るなど不安定な動きとなっている。GE株は結果的にプラスで終えたが、まだ決算内容を消化しきれていない可能性もある。
やはりGE Vernovaの通年利益見通しがマイナスであることに代表される再生可能エネルギー事業の見通しが芳しくないのが気に掛かる。それを航空部門がカバーできるかどうかが2023年のポイントとなるのだろう。
2023年初来では
市場(S&P 500)が4.6%上昇しているのに対し、GEは20%を超える上昇でかなり好調な株価推移となっている。
この調子がしばらく続くといいのだが、この決算を受けてのアナリストの評価や3月9日予定のinvestor conferenceでの内容によってはその流れが変わる可能性もあるので、油断しないで動向に注意しておきたい。