はじめに
米現地時間の2022年12月19日(月)には、長らく続いていた掲題のシティの5億ドル誤送金問題がようやく決着を見たようだ。
以下最終的な判決がどうなったかについて確認しておくことにする。
2022年12月のシティ5億ドル誤送金問題の地裁での判決
これまでの経緯
今回までの経緯については
シティの5億ドル誤送金問題に高裁での判決下る(2022/9)
整理しているが簡単にまとめると
- 2020年8月にシティが融資事務を代行している化粧品会社レブロン(NYSE:REV)と取引している債権者に誤って9億ドルを送金
- シティの要請で返金した債権者もあったが、一部のレブロン債権者は返金を拒否したため約5億ドル訴訟に発展
- 2021年2月に連邦地裁の判決でシティが敗訴したが、シティは不服として控訴
- 2022年9月に控訴裁判所(日本で言う所の高裁)で、シティに返還請求権が認められる逆転判決
となる。
今回の判決とそれに至る経緯
- マンハッタンの連邦地裁が訴えを棄却(dismissed)
- Jesse Furman判事のコメント
- 保留中の動議は全て意味が無くなります(Any pending motions are moot)
- すべての協議はキャンセルされます。裁判所書記官は事件を終結するように指示されています(All conferences are canceled. The Clerk of Court is directed to close the case)
この様に訴えが棄却されるに至ったのは、
- 12月5日、銀行(原告)と貸し手(被告)はFurman判事に被告のうち3人は訴訟を終わらせる合意に署名する準備ができており、他の被告との交渉において「実質的な進展」があったと報告
- 12月16日、原告と被告はFurman判事に債権者10社全てが返金するという合意に署名し、誤った支払いの約4分の3がシティバンクに返還されていると報告
という合意があったため。
掲題で一応と書いているのはFurman判事が、和解が完了しない場合に訴訟を再開するため当事者に60日の猶予を与えるとしており、万が一の可能性で決着がつかない可能性もあるため。
まとめ
直近のシティグループ株の推移を市場(S&P 500)と比較してみると
判決のあった翌日20日の開場後にシティ株は市場より上昇したものの終値では市場と同程度で、結局シティとS&P 500の推移はほぼ変わらずとなり、今回の判決はシティ株にほとんど影響を及ぼしていないことが判る。
前回9月の判決の際もあまりシティ株には影響が無かったが前回はまだ先行きが不透明であったので何となく納得感はある一方、今回は最終的な決着となり誤送金の約4分の3が返還されていることを考えるとシティ株に影響が無いように見えるのは今一つ釈然としない部分がある。
そして誤送金問題はシティ有利で決着したもののその原因となったデータ管理に関して
またシティグループ(C)にデータ管理不備、他(2022/11)
まだ問題があることを考えると今後に関する不安は残る。
何とか来年1月末までの期限に少なくとも11月にFRB(米連邦準備制度理事会)とFDIC(Federal Deposit Insurance Corporation:連邦預金保険公社)から指摘された不備を改善して、今後の不安要素を減らしてほしいものだ。