はじめに
2022年3月2日にCiti 2022 Investor Dayが開催された。
以下にその主な内容を確認・整理しておくと共に、同日のシティ株の動きについてもまとめておく。
Citi 2022 Investor Day概要
以下はシティグループの企業サイトより引用・抜粋。
構成は
- CEO Presentation
- Institutional Clients Group
- Personal Banking and Wealth Management
- Transformation
- Financial Overview
となっているが、それぞれのプレゼンテーション分量が多いので、主に1の「CEO Presentation」と5の「Financial Overview」部分を中心に確認する。
【収益改善への道】
- 中期(3〜5年)のRoTCE(Return on Tangible Common Equity:有形自己資本利益率)を11%〜12%と見込む
【2022年の収入見通し】
- 2022年のTotal Revenue(総収入)はアジア・メキシコの事業売却を除いて一桁台前半増加の見込み
- 2022年第1四半期のTotal Revenue(総収入)はアジア・メキシコの事業売却を除いて一桁台半ばの減少見込み
【短期的な経費の増加】
- 2022年のExpenseはアジア・メキシコの事業売却を除いて5~6%増の見込み
- 2022年第1四半期のExpenseはアジア・メキシコの事業売却を除いて10~12%増の見込み
【中期での経費正常化】
- 中期(3〜5年)のEfficiency Ratioをアジア・メキシコの事業売却を除いて60%以下と見込む
Efficiency RatioはExpense÷Revenueのため、この値が低いほど事業効率は良い事になる。
【その他】
スライドで提供されておらず口頭で説明されたもので気になった点は以下の通り。
- シティグループのロシア向けエクスポージャー(金融資産のうち市場の価格変動リスクや特定のリスクにさらされている金額)は98億ドル(2022年2月28日の証券取引委員会への提出資料より)
- 最高財務責任者(CFO)のMark Mason氏は会議の中でこの点に関し触れ、「我々はリスク管理部門と緊密に連携し、様々なシナリオの下でこのエクスポージャーが何を意味するか検討を重ねている。深刻なシナリオに基づくと損失額の上限はこのエクスポージャーの半分弱になってもおかしくないが、情勢次第では損失額がずっと小さくなる可能性もある」と発言
まとめ
上記の様な内容を受けてのシティグループ株は
1.66%の上昇。同日の米国市場と比べると
ほぼ同等の上昇幅だった。
しかしこれは終値を見た場合であって日中のシティ株の動きを見てみると
開場直後から大きく下落し一時は前日比4%以上下落し56ドルを割る局面もあった。上にまとめたCiti 2022 Investor Dayは米国市場開場前9:00に始まり休憩や昼食をはさんで6時間強行われたが、プレゼンテーション資料は米国市場開場前に開示されているのでその中身の短期的な経費増や低調な売上見通しが嫌気されたのだろう。
逆に10時過ぎぐらいからシティ株が上昇した理由は今一つ不可解。10時半からは小休憩で、その前後から昼食休憩までは各事業個別のプレゼンテーションであり、シティ全体のものではないのでそれ程株価に影響を及ぼしたとは思えない。
市場(S&P 500)と比較してみてもシティの10時過ぎからの上昇幅と類似している様には見えず、
同業で自分の所有株であるJPモルガン・チェース(JPM)と比べてみても
連動性は薄いので銀行業界特有の理由があったとも思えない。同日には米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長が下院金融委員会で半期に一度の議会証言を行っており3月の25bp利上げを示唆したことが影響したのかとも思ったが、これも米国市場開場前の段階でありシティ株が下落してから上昇した理由とは考えられない。また確認した範囲ではアナリストの投資格付け/目標株価アップデートも無かったようだ。
シティ株が3月2日の開場から大きく下落したのはCiti 2022 Investor Dayの短期的な内容が影響したと思われるのだが、そこから上昇した理由は判然としなかった。
就寝前は大幅下落を覚悟していただけに結果オーライと言えなくもないが、ただでさえウクライナ侵攻により市場が不透明な中での理由がはっきりしない株価上昇はやはり不安が残る。しばらくはシティの株価の動きとアナリストのアップデートが無いかどうか注意しておくことにしたい。