はじめに
昨日2022年1月11日にボーイング(BA)の商用航空機受注・納入データが更新され昨年1年間の受発注結果が判るようになった。
競合のエアバスは前日10日に同データを公開しており、これで両社の2021年の商用航空機受注・納入データの比較が出来るようになった。
各種報道でもまとめられているが、自分も整理しておくことにする。
2021年のボーイング、エアバスの商用航空機受注・納入比較
画像はいずれもボーイング、エアバスの企業サイトより引用・抜粋。
【ボーイング】
【エアバス】
2021 | |||
YTD Deliveries(納入) | YTD Gross Orders(総受注) | YTD Net Orders(純受注) | |
エアバス | 611 | 771 | 507 |
ボーイング | 340 | 909 | 535 |
Order(発注)がGrossとNetに分かれているのはキャンセルを含む受注内容の変更があるため。
2021年のデータではボーイングは納入では以前差を付けられているが、純受注ではエアバスを上回っている。これは2018年以来のことで、2019年のボーイング737Max機墜落事故とそれに伴う運航停止措置が多くの国で解除されたことが影響していると思われ、340機の納入のうち245機が737Max。
これに前年2020年のデータを加えると以下の様になる。
2021 | 2020 | |||||
YTD Deliveries(納入) | YTD Gross Orders(総受注) | YTD Net Orders(純受注) | YTD Deliveries(納入) | YTD Gross Orders(総受注) | YTD Net Orders(純受注) | |
エアバス | 611 | 771 | 507 | 566 | 383 | 268 |
ボーイング | 340 | 909 | 535 | 157 | 184 | 184 |
ボーイングが2020年から大きく納入・受注を伸ばしていることがよく分かるが、納入の絶対数ではエアバスがボーイングを大きく上回っている。これは2018年以来のこと。
まとめ
上記のような発表を受けて昨日のボーイング株は
3.21%の上昇。昨日の米国主要3市場はFRBパウエル議長の議会証言によって上昇に転じ、ダウ工業平均が0.51%、S&P 500が0.92%、NASDAQが1.41%いずれも上昇しているが、それらに比べてもなかなかの上昇具合。納入・受注共に前年より大幅に伸びたことが要因だろう。これで787 Dreamlinerの問題が解決すればさらに納入・受注が伸びることも期待できる。
過去1年間のボーイング株を見てみると
やや上昇してはいるものの3月からは上下動が激しいが基本は右肩下がりで、2021年12月半ばには200ドル割れにもなっている。COVID-19が未だ拡大を続けている中での旅客需要が安定していないことが一因だろう。一方で流通に使用される貨物機需要はCOVID-19の影響で逆に増加していると思われ、先の総受注内での貨物機受注は84機で前年2020年の23機から大きく増加している。
過去1年を振り返ってみると、COVID-19の状況により旅客需要すなわち商用機需要が変動するとの連想に株価が割と敏感に変動するのに加え、商用航空機に関する品質問題が多発しているためCOVID-19が一時的に落ち着いて市場が上昇基調となってもボーイング株はさえない状況となったりもしている。それを踏まえると今後のボーイング株の動向を想定するのは本当に難しい。
2022年1月26日にある2021年第4四半期決算発表があるが、まだまだ先の読めない動向が続くのだろう。自分のボーイング株は2016年6月に最後に購入しているため
取得価額比プラスではあるのだが、2019年から配当停止が続き完全リタイアをして配当金生活を送っている自分にとっては扱いの難しい銘柄。なまじ取得価額比プラスなだけにボーイング株を売却して他の配当株に乗り換えるのは、売却後の利益にかかる税金、それを元とする住民税や健康保険料のことを考えると躊躇われる。少しでも良いので配当を再開してくれればいいのだが数年はかかるのだろう。