はじめに
昨日2020年10月13日の米国市場開場前に、自分の所有銘柄であるシティグループ(C)の2020年第3四半期決算発表があった。
第2四半期決算以降シティに関しては以下の様な悪いニュースばかりまとめてきたのだが、
シティグループの誤送金9億ドルと株価について(2020/8)
シティのリスク管理に関する懸念で株価5%超下落(2020/9)
シティ、課徴金4億ドル支払いと業務改善に同意(2020/10)
昨日の決算発表はどうだったのか。以下にその内容を整理しておく。
シティグループ2020年第3四半期決算発表の概要
以下の内容はシティグループ企業サイトの発表資料より抜粋・引用。
- 収入(Revenues)は173億200万ドルで前四半期より12%減、前年同期比7%減
- 純利益(Net Income)は32億3000万ドルで前年同期比34%減
- 1株あたり純利益(EPS)は1.40ドルで前年同期比32%減
- 純金利マージン(調達金利と貸付金利の差)は前四半期の2.17%から2.03%に減少
懸念していた貸し倒れ引当準備金(Net ACL(Allowance for Credit Losses)Build)は3億1400万ドルの積み増しで、前四半期の56億300万ドルからは大幅に減少。
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2020年第3四半期の収入(Revenues)は173億200万ドル、市場予想の172億ドルを上回っている
- 2020年第3四半期の1株あたり純利益(EPS)は1.40ドル、市場予想の0.92ドルを上回っている
となっている。
昨日のシティの株価
ここまで書いてきた情報を見る限りそれ程悪くはない気がするのだが、決算発表を受けてのシティの実際の株価は、
と大幅下落。確かに他の銀行株も以下の様に下落しているのだがこれ程ではない。
シティの下落要因についてもう少し詳しく整理してみる。
決算を受けてのシティ株下落要因
営業費用の増加
まず1つは既に挙げたCitigroup – Summary Financial ResultsにあるOperating Expenseが増えている事。
そしてOperating Margin(営業利益率)がYTD(Yeat To Date)で6%増になっており、青点線で囲まれているので一見良さそうに見えるのだが、前四半期の2020年第2四半期の同データを見てみると、
前四半期のYTD(Yeat To Date)のOperating Marginは20%だったのに比べて大きく落ち込んでることが分かる。
これは以前言及した
シティ、課徴金4億ドル支払いと業務改善に同意(2020/10)
を考慮するとさらに営業利益を損なう可能性があるので、今後のOperating Marginに不安が残る。
景気見通しの下方修正
以下もシティの決算発表資料からの引用・抜粋。CECLは2016年6月16日に財務会計基準審議会(FASB)によって発行された新しい信用損失会計基準(モデル)でCurrent Expected Credit Lossesの略。現在(の)予想損失などと日本語では言われている。
このページ左下のBase Macroeconomic Variablesで、U.S. Unemployment(米失業率)とU.S. Real GDP(米実質GDP)についての予測をしており、これに基づいてCECLを算出している。
現在予想損失はさておき、問題はこのBase Macroeconomic Variablesが前四半期から実質GDPを引き下げていること。この点がシティの今後の業績に影響を及ぼすことが懸念され、株価への影響が出たのではないかと思われる。
まとめ
シティグループの2020年第3四半期決算を確認したが、やはり他の銀行に比べてリスク管理に関する当局からの指摘対応にかかるコストが負担となる気がする。
決算発表後のアナリストとのカンファレンスコールでも以下の様な質疑が発生している。
ウェルズ・ファーゴのアナリストMike Mayo氏の業務改善にかかる費用についての以下の質問に対して
- You’re already spending $1 billion. You say some of this is a one-year spend. I guess you have to do a review, so you don’t really know the exact spending to fix these problems. But should we think of $1 billion? Should we think of $2 billion?
あなたはすでに10億ドルを費やしています。あなたはこのいくつかが1年の支出であると言います。私はあなたがレビューをしなければならず、これらの問題を解決するための正確な支出を本当に知らないと思います。ですが、10億ドルを考えるべきでしょうか? 20億ドルを考えるべきでしょうか?
最高財務責任者(CFO)のMark Mason氏は長々と直接的な回答をせずに間接的な説明をして結局は、
- It’s hard to pinpoint a number, as you’ve said.
あなたが言ったように、数を特定するのは難しいです
と述べるに留まり具体的な数値は出せなかった。
ちなみにカンファレンスコールでは最高経営責任者(CEO)のMike Corbat氏に対して、ご送金の問題や、CEOへの報酬疑問視、なぜ直ちに辞任しないのか(9月に来年2月に退任すると発表している)といった質問もあり、それらへの回答・説明が不十分な印象を受けた。
今後の見通しについて明確な数値での提供は無かったのだが、上記の様な決算内容、アナリストとの質疑を踏まえると、今後のシティ株の急上昇というのは考えにくい気がする。
最後に気になる配当については、今回の決算資料及びアナリストとのカンファレンスコールでは言及されなかった。通常であれば今月中には次回の四半期配当のアナウンスがあるはずなので注意しておきたい。