シティグループの誤送金9億ドルと株価について(2020/8)

はじめに

先週8月14日(金)に掲題のシティグループが9億ドルの誤送金をしたとの報道があった。その内容について確認すると共に、それがシティの株価にどのような影響を与えたかについて整理してみることにする。


シティの9億ドル誤送金の内容

色々報道を見ると細かな内容も説明されているのだが、あくまでシティを中心に簡単に整理してみることにする。以下の情報はいずれも日本時間2020年8月19日時点。

■シティグループが化粧品会社レブロン(NYSE:REV)と取引している金融会社に誤って9億ドルを送金

■シティはレブロンの融資事務の代行をしていた

■シティが回収した資金は半分未満にとどまっている

■金融会社の一部はシティへの資金返還を拒否し、そのうち3社はレブロンへの融資が債務不履行となっており、もともと同社が返済すべきだった資金だと主張

■シティは17日にニューヨークの連邦地裁に起こした訴訟で、米化粧品会社レブロンと取引している金融会社に誤って送金した9億ドル超の一部返還をブリゲード・キャピタル・マネジメントに求めた

■訴状によると、ブリゲードは融資元本1億7470万ドルについて利子150万ドルを受け取るはずだった。その代わりに1億7620万ドルを得て「送金が間違ってなされた極めて明白な証拠」があるにもかかわらず返金を拒んでいるという

■「シティバンクが十分に認識していることだが、同行(シティ)は推定40のファンドに送金した。これらファンドはブリゲードを投資・担保管理役として起用しているのであって、ブリゲード自体は貸し手ではない。従ってシティが訴訟で返金を求めている資金は、ブリゲードにはない」と、ブリゲードは18日に裁判所に文書で表明

大体上記の様な事がシティ9億ドルの誤送金のまとめとなる。


これを受けてのシティの株価

これらの報道を受けてのシティの過去5日間の株価は以下の様になっている。

これを市場と比較してみると、

市場がほぼフラットなのに対して17日から大きく落ち込んでいる。やはりこの報道が大きく影響を与えたのかと思ったのだが念のため他の銀行株と比べてみると、

となり、18日はシティの下げがやや大きいが他の銀行株も17日以降は下落しており、この誤送金とは別の要因でシティ株ひいては銀行株が下落したことが伺える。恐らくは17日、18日の米国10年債利回りが低下したためだろう。


まとめ

ということで報道されていたシティの9億ドル誤送金についてまとめてみたが、それが大きくシティ株に影響したということは無さそうだ。

とはいえ逆に銀行株全体がやや軟調なのが気に掛かる。現地時間の8月19日には米連邦準備制度理事会(FRB)がFOMCの議事録(7月28日、29日開催分)を公表の予定なので、その内容によっては金融株は大きな影響を受けるかもしれない。

早く落ち着いて欲しいものだが、COVID-19、米中対立、そしてそろそろ大統領選(現地時間8月18日にバイデン氏が民主党の正式候補として指名)も絡んできて方向感が見えない市場の動きが続きそうな気がする。


蛇足

自分は所有していないので本当に蛇足だが、上記でシティが融資事務の代行をしていた化粧品会社のレブロンについて。

■レブロンに融資していたブリゲードやHPSインベストメント・パートナーズ、シンフォニー・アセット・マネジメントなどがレブロンの債務再編を巡り同社を提訴している

■シティの9億ドル誤送金に関連して、ブリゲートの担当者はレブロンが融資の返済を一切していないことを明らかにしている

この様な報道がなされたためレブロンの株価は、

2日間で10%超の下落。もしシティの9億ドル誤送金がなければ、こういったレブロンに関連した情報も報道されなかった可能性が高いのでとばっちりを受けた感がある。

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