はじめに
先日ゼネラル・エレクトリック(GE)が2020年10月6日に米証券取引委員会(SEC)へ提出した8-K資料の中で、「ウェルズ・ノーティス」(証券取引法違反の可能性についてGEに対して民事差止訴訟を起こすことをSECに推奨することを検討していることをGEに通知する)を受領したことを受けて、GEの株価が大きく下落したことについては、
でまとめているのだが、その後1日おいてGEの株価が予想に反して上昇していた。以下は過去5日間のGEの株価推移。
以下に何故GEの株価が上昇したかについて確認しておく。
2020年10月6日以降のGEに関するニュース
2020年10月7日、バンク・オブ・アメリカは目標株価、格付け据え置き
バンク・オブ・アメリカのアナリストAndrew Obin氏は、GEの投資格付けBuy(買い)の評価と11ドルの目標株価を維持。
- “While a negative headline, we view GE as already having taken action here,”
「否定的な見出しではあるが、GEはすでに(ここで)行動を起こしていると我々は考えています」 - Obin氏のノートによると、SECはGEの保険事業における収益と利益の過去の会計処理に疑問を投げかけているが、GEはすでにその事業に95億ドルの費用を負担し、義務を確保するために145億ドルの新規資本を追加する措置を講じているとしている
- またGEは調査による潜在的なペナルティに直面する可能性があるが、最近の民事罰金は最小限に抑えられており、過去5年間でSECの民事罰の上位5%が平均7100万ドルであり、GEが管理するのは比較的簡単であると述べている
2020年10月8日、Moody’sは格付けBaa1を維持
SECからGEへの「ウェルズ・ノーティス」は信用ネガティブ(Credit Negative)であるが、ニュースに応じてGEの信用格付け(Baa1/P-2, negative)を引き下げる予定はないとした。
2020年10月8日、ゴールドマン・サックスが格付け「Buy」でカバレッジを再開
ゴールドマン・サックスのアナリストJoe Ritchie氏は、GEの最高経営責任者(CEO)Larry Culp氏の2年間の在職期間中の順調な進展を理由に、GEのカバレッジを目標株価を10ドル、投資格付けBuyで再開した。
- Ritchie氏はGEのフリーキャッシュフローは、利益率の高い事業がコロナウイルスパンデミックの最悪状態から回復し、来年に向かって改善するとしている
- また、10月28日の第3四半期決算に向けて、株価とその長期価格目標の両方に上振れの可能性があるとしている
まとめ
これらの報道を受けてウェルズ・ノーティスの受領が開示された後、GEの株価は上昇したらしい。ゴールドマン・サックスの格付けに関する情報は昨日の米国市場閉場後の事なので、10月9日の時間前取引でもGEの株価は先に挙げたグラフの左上にある様に大きく上昇している(ただ時間外取引は必ずしも当てにならないのだが)。
先日ウェルズ・ノーティス受領報道の際に自分は、
「問題はこのプロセスが進むにつれて、過去のGEの財務情報が変化したり、今後追加の償却を行う必要が出てくる可能性など、GEが見込んでいる今後の収益・キャッシュフロー向上へ向けてのプランに影響が出てくる可能性がある点。」
と書いたのだが、上記報道からすると
- 「ウェルズ・ノーティス」の影響は限定的あるいは織り込み済み
- 従ってフリーキャッシュフローは先月の情報通り改善傾向にある
という見方が正しいのかもしれない。個人的にはそうであって欲しいのだが、どうなる事か。2020年10月28日に予定されている2020年第3四半期決算発表までは、はっきりしない株価推移が続くのだろう。