はじめに
米現地時間2026年4月28日(水)、29日(木)に2026年3回目のFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)が開催された。
前回2026年3月17、18日のFOMC会合は市場予想通りの金利据え置き、四半期に一度の経済予測要旨でも前回(2025年12月)と変わらず年内1回の利下げの見込みであったため市場への影響はあまりなかったが、その後パウエル議長が会見で中東情勢の不確実性を繰り返し強調し、利下げの時期が遅れることが示唆されたため株式市場では下落幅が拡大、債券利回りが上昇、ドル高が加速する結果となった。
その頃は(現在も不透明だが)中東情勢の見通しが全く立たず、その影響が米経済にどの様な影響を与えるかも定かではなかったが、4月に入って発表された米CPI(3月の調査)ではやはりガソリン価格が大幅に上昇したことで総合CPIも大幅に上昇となった。ただし市場予想とほぼ同じで、変動の大きい食品及びエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは小幅上昇となったが市場予想を下回っている。
4月に入って一時停戦が続いており、株式市場もやや上向きとなっている状況の中で、FRBが現状をどのように見ているのかが非常に注目されていた。
以下、今回のFOMC結果及びパウエル議長の会見はどういう内容となったのか、またそれらを受けて市場はどう反応したのかを確認し整理しておく。
2026年4月28日、29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)結果及びパウエル議長の発言まとめ
FOMC会合結果
以下は米連邦準備制度理事会(FRB)のサイトで現地時間14時に公開されたFederal Reserve issues FOMC statement(FOMC声明)より引用・抜粋。
前回からの主な変更点等は以下の通り。
【最近の経済】
- 前回は「入手可能な指標は経済活動が堅調なペースで拡大していることを示唆、雇用の伸びは低水準にとどまり、失業率はここ数ヶ月ほとんど変化していない。インフレ率はやや高い水準を維持」といった趣旨の文章
⇒「入手可能な指標(Available indicators)」が「最近の指標(Recent indicators)」に変わっている。前回までは歳出法案未成立により、一部公的機関の経済指標に遅れなどがあったことを反映
⇒「雇用の伸びは低水準にとどまり(Job gains have remained low)」に「平均的に(on average)」という語句が追加
⇒「インフレ率はやや高い水準を維持(Inflation remains somewhat elevated)」が「インフレ率は高止まりしており、これは世界的なエネルギー価格の上昇を部分的に反映している(Inflation is elevated, in part reflecting the recent increase in global energy prices)」と「somewhat 」という単語が削除され、後半にエネルギー価格高騰への言及が追加されている
【委員会の目的と現状】
- 前回は「委員会は長期的に雇用の最大化と2%のインフレ率の達成を目指している」、「経済見通しに関する不確実性は依然として高い水準にある」、「中東情勢の展開が米国経済に及ぼす影響は不透明」、「委員会は雇用とインフレの双方に対するリスクに注意を払っている」といった趣旨の文章
⇒「経済見通しに関する不確実性は依然として高い水準にある」、「中東情勢の展開が米国経済に及ぼす影響は不透明」という2文が、「中東情勢の展開は経済見通しに対する高い不確実性の一因となっている(Developments in the Middle East are contributing to a high level of uncertainty about the economic outlook)」という1文に統合されている
【今後の政策金利決定に関して】
- 前回は「委員会は目標達成のため、フェデラルファンド金利の目標範囲を3.50~3.75%に維持することを決定した」、「フェデラルファンド金利の目標レンジの追加調整の範囲と時期を検討するにあたり、委員会は今後入手するデータ、変化する見通し、そしてリスクバランスを慎重に評価」、「委員会は、最大限の雇用を支援し、インフレ率を2%の目標に戻すことに強く取り組んでいく」、といった趣旨の文章
⇒今回は前回と一言一句変わらず
【金融政策の決定に関して】
- 前回は「金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は引き続き経済見通しに対する入手可能な情報の含意を注視していく」、「委員会の目標達成を阻害しかねないリスクが顕在化した場合、委員会は金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある」、「委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力とインフレ期待、金融・国際情勢に関する指標を含む幅広い情報を考慮に入れる」、「委員会は、準備金残高が十分な水準まで減少したと判断しており、引き続き十分な準備金を維持するために、必要に応じて短期国債の買入れを開始する」と言った趣旨の文章
⇒今回は前回と一言一句変わらず
今回の政策金利決定は8対4。これは1992年10月以来、最も大きく意見が割れた決定とのこと。Miran理事が0.25%の利下げに投票し、Beth M. Hammack氏、Neel Kashkari氏、Lorie K. Logan氏の3名が将来的な利下げ再開を示唆する文言(inclusion of an easing bias in the statement)に反対したとのこと。ここで言う「easing bias」はFOMC声明では明言されていないが、恐らく「フェデラルファンド金利の目標レンジの追加調整の範囲と時期を検討するにあたり、委員会は今後入手するデータ、変化する見通し、そしてリスクバランスを慎重に評価」の中の「追加調整(additional adjustments)」という語句を指すと思われる。
パウエル議長の発言
以下はFOMC会合結果及び経済予測要旨開示後のパウエル議長の会見における主な発言より。
- インフレは高止まりしておりエネルギー価格上昇がその一因だが、足元の政策スタンスは適切であり、(政策スタンスは)目標に向けた進展を後押しする
- 中東情勢が不確実性を高めており、二大責務の双方へのリスクがある
- 消費者支出は堅調で、失業率はほとんど変化していない
- 雇用の伸び鈍化は労働力人口の伸び鈍化を反映しており、労働需要は軟化している
- 短期的なインフレ期待は高まっているが、長期的なインフレ期待は2%と整合的
- 経済見通しは極めて不確実で、エネルギー価格の上昇は短期的なインフレを押し上げる
- 質疑応答
- 金利政策の現状/方針について
- 政策スタンスはどの方向にも動ける非常に良い位置にある
- 政策に既定路線はない
- FRBには協調的かつ慎重な審議プロセスがあり、決定は集団の意見を反映
- 強い意志を持つ19人とのコンセンサスを得るのは難しく、今回はガイダンスについて活発な議論があった
- 当局者の大多数が文言の変更を望まなかった。私も今回、変更する必要はないと思ったし、文言変更の決定を急ぐ必要はない
- 今後30~60日の間に何が起こるかで状況が変わる可能性がある
- 金利見通しについて
- 現在は中立金利の上限、わずかに引き締め的な水準にあると考えている
- 利下げを検討する前に、エネルギーと関税の影響が低下するのを確認したい
- 利上げと利下げの可能性が同程度あり得ると見る当局者の数が増え、中立姿勢への変更を支持する当局者の数も増えた
- 今すぐ利上げが必要だと言っている当局者はいない
- 経済・雇用・インフレについて
- 経済成長は堅調で、ショックを乗り越えて力強く前進している
- 失業率は自然失業率にかなり近い
- 労働市場はまだ若干冷え込んでいるが、労働市場がインフレの原因とは見ていない
- インフレこそ取り組むべき課題であり、インフレ率を2%に戻すことに尽力している
- インフレ率の2%目標を達成するという揺るぎないコミットメントは変わらない。市場はFRBがインフレ2%を達成すると信じている
- 関税・エネルギー供給の影響について
- 関税による物価上昇は一時的なものとする仮説のもとで取り組んできたが、その影響が今後2四半期で現れる時が来たと考えている
- あらゆる供給ショックはインフレと失業率の上昇を招く可能性がある
- 石油の影響は欧州・アジアに比べ米国は小さいが、ガソリン価格上昇を人々が経験していることは十分認識している
- ガソリン価格は(ホルムズ海峡)がどれだけ閉鎖されるかに左右され、エネルギー価格の急騰はまだピークに達していないと考えている
- FRBの独立性について
- FRBの独立性は法律で定められているが、FRBの独立性は危機に瀕している
- FRBに対する一連の法的攻撃について懸念しており、政権による法的措置は前例がない
- 追加措置の脅威が続くことはFRBの職務遂行能力を脅かしており、FRBが政治的影響を受けない存在として信頼されることが米国の経済的基盤の一部として重要
- 次期議長について
- Kevin Warsh氏はトランプ氏に立ち向かうと証言しており、私はその言葉を信じる
- Warsh氏の就任を祝福するし、FOMC議長に選出されるだろう
- 私の意図は干渉することではない。次期議長と協力し、できる限り支援する
- 私が影の議長になることは決してないし、議長の役割を尊重する
- パウエル氏の進退について
- 司法省の捜査が完全に終了するまで退任しないという立場は変わらない
- 4月24日の(自身を巡る)司法省の捜査終了の発表を歓迎する
- 週末に、司法省から刑事告発がない限り捜査を再開しないとの保証を得た
- (議長を降りる)5月15日以降も理事として留任するが目立たない形で理事を務める
- (FRBに留まることは政治的かという質問)私はそうは思わない
- 適切だと判断した時点でFRBを去るつもり
- 金利政策の現状/方針について
FOMC会合結果及びパウエル議長の発言を受けての市場
米国主要3株式指数

いずれも前日比下落で始まったが、ダウ工業平均はそのまま大きな変動は無い一方でmS&P 500とNASDAQ総合は前日比プラスに転じる局面もあるなど変動があった。ただし、変動幅自体はそれほど大きくはない。これは同日の株式取引閉場後にアマゾン(AMZN)、アルファベット(GOOGL)、メタ・プラットフォームズ(META)、マイクロソフト(MSFT)のマグニフィセント・セブンの内の4社が決算発表を控えており、様子見基調が強かったためと思われる。
日中のS&P 500の動きを見てみると

14時のFOMC声明発表直後は下落したものの反発するなど方向感が定まらない動き。その後パウエル議長の会見が進むにつれて上昇したものの、上昇幅は限定的となっている。
これは先に述べた大型ハイテク銘柄の決算発表を控えての様子見模様と、今回金利は据え置かれたものの、FOMCの政策決定で大きく意見が分かれたことや、中東情勢の混乱に伴うエネルギー価格上昇を巡る不透明感を反映してのことだろう。
米国10年債

FOMC声明が発表された米国東部夏時間14:00は上記チャートのCST(米国中部時間)では13:00。
原油価格の値上がりもあってか取引開始後に利回りは前日比で上昇した後、やはりFOMC待ちのスタンスが強かったためかほぼ横ばいで推移。そしてFOMC声明及びパウエル議長の会見で利下げを急がない姿勢(追加調整(additional adjustments)の文言に対する反対意見など)が示唆されたことで再び上昇傾向となって取引を終えている。
ちなみにCMEのフェドウォッチツールでは年内は金利据え置きが有力視されたままで、FOMCを経てもほとんどパーセンテージは変わっていない(年内はすべて5%以内の変動)。
ドル円為替

FOMC声明が発表された米国東部夏時間14:00は上記チャートのGMT(英国標準時)+1では19:00。
FOMC発表前から円安傾向が続いており1ドル=160円台前半。FOMC発表後に多少変動はあったがほぼ誤差と言って良い程度。その後1ドル=160.4円を超えたあたりでややドル安傾向となった。そして日本市場が本格化すると再びドル高となり一時1ドル=160.7円台まで上昇。ここまでが上のチャートの状況。
しかし夕方に片山財務相が「かねてより断固たる措置に言及をしてきたところだが、いよいよかねてから申し上げてきた断固たる措置を取るタイミングが近づいている」などと発言したことで、大きくドル安となり1ドル=160円前後に。その後もドル安は進み1ドル=159.5円を割り込んだところで、一気にドル安が進み1ドル=155円台に突入している。変動幅の大きさからして恐らく当局による為替介入があったものと思われるが、これを書いている現時点ではまだ本当に為替介入があったかは明らかになっていない。以下は片山財務相の発言以降も含めたチャート。

まとめ
以上FOMC声明及びパウエル議長の会見を受けての市場の動きについて整理してみた。
FOMC声明が8:4と票決が大きく割れたこと、中東情勢に伴うエネルギー価格上昇が及ぼす影響が未だはっきりせず今後の金利政策が不透明であったこと、そしてマグニフィセント・セブンのうち4社の決算発表を控えていたことなどもあってか、いずれの市場も変動幅は限定的だった(ドル円為替は翌日4月30日に別の要因で大きく変動したが)。
変動幅が大きくなかったという点では無難にFOMCイベントを乗り切った感もあるが、個人的には先延ばしになった印象の方が強い。今後のインフレ、雇用に関する経済指標に中東情勢がどういう形で表れてくるのか、そしてそれに対して市場どう反応するかについて引き続き注意していきたい。