トランプ氏が一部EUへの関税発動撤回と市場の動き(2026/1)

はじめに

現地日付2026年1月17日(土)にトランプ大統領がグリーンランドを巡って自身のSNSにEU8ヶ国に関税を課すと投稿を行い、それを受けて2026年1月20日(火)の米国株式市場(1月19日(月)はMartin Luther King, Jr. Dayで米国市場は閉場)が急落したことについては

トランプ氏がグリーンランド巡り一部EUへ関税表明(2026/1)

トランプ氏の一部EUへ関税表明を受けて市場急落(2026/1)

で整理した。

その際には

「米国とデンマーク/グリーンランド及びEU間の隔たりは大きいように思われ、また関税についてはトランプ大統領のSNS投稿のみで詳細が不明なため、早期に妥協点が見出せるかは微妙な状況」

「この日の下落で市場にある程度状況が反映されたと思いたいが、ダボス会議でのトランプ大統領の演説内容、それを受けての今後の状況次第では更なる下落局面もあるだろう」

などと書いていたのだが、掲題の通り1月22日にトランプ大統領が一部EUへの関税発動撤回を発表している。

以下、トランプ大統領の一部EUへの関税発動撤回を含めたグリーンランドを巡る動きのアップデートと市場の動きについて確認し、整理しておく。


トランプ大統領の一部EUへの関税発動撤回を含めたグリーンランドを巡る状況アップデート

以前の状況については

トランプ氏がグリーンランド巡り一部EUへ関税表明(2026/1)

トランプ氏の一部EUへ関税表明を受けて市場急落(2026/1)

を参照。日付/時間についてはいずれも現地日付/時間。

  • 2026年1月21日、欧州中央銀行(ECB)のChristine Lagarde総裁のフランスRLTラジオにおけるインタビュー
    • (更なる関税措置は)短期的に見れば、当面の影響は比較的小さい
    • インフレはわずかに影響を受け、おそらく上昇するだろう。しかしインフレ率は1.9%に抑えられているため、影響は最小限にとどまるだろう
  • 2026年1月21日、欧州委員会のUrsula von der Leyen委員長のストラスブールにおける欧州議会での発言
    • 我々は岐路に立っている
    • ヨーロッパは対話と解決を優先するが、必要であれば、団結し、緊急に、そして断固とした態度で行動する準備は万全です
    • 国際秩序の変化は、単に地殻変動的なだけでなく、永続的なものです
    • 私たちは今、むき出しの力によって定義される世界に生きています
    • 私たちの多くはそれを好まないかもしれないが、私たちは今の世界の現状に対処しなければならない
  • 2026年1月21日、欧州議会は2025年7月末にスコットランドのターンベリーで成立した合意に基づく、米国製品に対する輸入関税の多くを撤廃する法案などの審議作業を一時停止すると決定
    • 議会後、欧州貿易委員会Bernd Lange委員長は今後通知があるまで合意を保留するとコメント
  • 2026年1月21日、JPモルガン最高経営責任者Jamie Dimon氏のダボス会議での発言
    • 私は関税賛成派ではない。一般的に言って、それは良い考えだとは思わない
  • 2026年1月21日、トランプ大統領のダボス会議での演説(演説は1時間超に及んだため関係部分のみ)
    • (グリーンランドに関して)私が武力を行使すると考えられていたようだが、武力を行使する必要はない
    • 武力は使いたくないし、使わない
    • 米国以外にグリーンランドの安全を確保できる国はない
    • 米国によるグリーンランド取得について再協議するため、即時交渉を求める
    • Yesと言えば我々はとても感謝するだろうし、Noと言えば我々は覚えているだろう
    • (米国のグリーンランド取得は)小さな要求に過ぎず、北大西洋条約機構(NATO)への脅威ではなく安全保障の強化につながる。米国はNATOから何も得られていない
    • (欧州については)好きだが、正しい方向に向かっていない
  • 2026年1月21日、トランプ大統領のSNSへの投稿
    • Based upon a very productive meeting that I have had with the Secretary General of NATO, Mark Rutte, we have formed the framework of a future deal with respect to Greenland and, in fact, the entire Arctic Region.
      NATO事務総長Mark Rutte氏との非常に有意義な会談に基づき、グリーンランド、そして北極圏全体に関する将来の合意の枠組みが策定された
    • This solution, if consummated, will be a great one for the United States of America, and all NATO Nations. Based upon this understanding, I will not be imposing the Tariffs that were scheduled to go into effect on February 1st.
      この解決策が実現すれば、アメリカ合衆国、そしてすべてのNATO加盟国にとって大きな利益となるだろう。この理解に基づき、2月1日に発効予定だった関税は発動しない
  • 2026年1月21日、CNBCインタビューにおけるトランプ大統領の合意の枠組みについてのコメント
    • 彼らは鉱物資源権に関与することになるだろうし、我々も同様だ
    • ヴァンス副大統領、ルビオ国務長官、ウィトコフ特使、そして必要に応じてその他関係者が交渉を担当し、私に直接報告する
    • この合意は永久に続くだろう
  • 2026年1月21日、FOXニュースのインタビューにおけるNATO事務総長Mark Rutte氏のコメント
    • グリーンランドが今後もデンマークにとどまるかどうかという問題は取り上げられなかった
  • 2026年1月22日、NATO事務総長Mark Rutte氏の記者団へのコメント
    • (北極圏の安全保障について)NATOで上級司令官らと協議し、必要な措置を策定する。これは極めて迅速に実現できると確信している。2026年中、できれば早期を期待している
    • 北極圏以外のNATO加盟国もこの取り組みへの関与を望むはずだ
    • (グリーンランドの鉱物資源開発について)21日のトランプ氏との会談では議論されなかった
    • 具体的な交渉は米国、デンマーク、グリーンランドの間で継続されるだろう
    • 北極圏での取り組み強化がウクライナ支援に影響を及ぼすことはない
    • (NATO諸国はトランプ氏の言葉を信頼できるか)トランプ氏の言葉は常に信頼できる

同日の米国市場の動き

米国株式市場

米国主要3株式指数はいずれも前日比1%を超える上昇だったが、前日の下落をカバーするには至らず。S&P 500の日中の動きを詳しく見ると

ダボス会議でのトランプ大統領の演説は予定よりもやや遅れて米国株式市場の取引開始と重なっており、演説で武力行使の可能性を否定したことで開場直後の前日比0.5%上昇程度から1%程度まで上昇。しかしその後はそれ以上の踏み込んだ情報が出なかったためか開場直後の0.5%程度上昇の水準での推移が続いていた。そして米国市場2:30PM前にトランプ大統領がSNSでEU8ヶ国への関税を取り止めたことを投稿すると、前日比1.5%まで上昇。ただ合意の枠組みの詳細は明らかではなく、今後も交渉が続くとのことから再び上昇幅を縮小し、前日比1.18%上昇で取引を終えている。ダウ工業平均、NASDAQ総合も概ね同様の動き。

米国10年債

米国株式市場開場の米国東部標準時9:30は上記チャートのCST(米国中部時間)では8:30。

前日比ほぼ変わらずで取引開始となったが、トランプ大統領のダボス会議での演説を受けて利回りは低下。その後は方向感がはっきりしないながらもやや利回りは低下傾向。そしてトランプ大統領の一部EUへの関税撤回のSNS投稿を受けて更に利回りは低下して取引を終えている。

ドル円為替

トランプ大統領のダボス会議での演説は上記ドル円チャートのGMTの14:00前から始まった。それを受けて1ドル=157円台後半から1ドル=158.20円程度までドル高に。その後は同水準での推移が続いていたが、トランプ大統領のSNS投稿を機に更にドル高となり一時1ドル=158.5円台に。そして日本市場が始まると一段高となって現在は1ドル=158円台後半での推移となっている。


まとめ

以上、トランプ大統領の一部EUへの関税発動撤回を含めたグリーンランドを巡る動きのアップデートと市場の動きについてまとめてみた。

ダボス会議でのトランプ大統領の演説でグリーンランドへの武力行使を否定したこと、そしてSNS投稿でEU8ヶ国への関税を撤回したことが好感され、株式は上昇、国債利回りは低下、ドル円為替はドル高となった。

ただしNATO事務総長Mark Rutte氏との合意/枠組みの詳細については明らかになっておらず、この件が完全に決着した訳ではないので今後の動向には引き続き注意が必要だろう。結局のところ、この件はどういう形で落ち着くのだろうか。

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