はじめに
米現地時間2025年9月4日朝に米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)が2025年8月の米雇用統計を発表した。
前回2025年8月1日発表の7月米雇用統計は
2025年8月発表の米雇用統計と米市場の大幅下落(2025/8)
でまとめた通り、非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に下回り、併せて5月、6月のデータも大幅に下方修正されたことで、それまで堅調とされていた労働市場が実はそうではなかった可能性が高いのではという見方が出て来て市場は大きく変動。その後も米雇用統計で見られた結果/傾向が、その他経済指標にも現れるか(一部を除いて概ね市場予想通りだった)、FRBは次回9月FOMCでの利下げをどう判断するのかなど8月の市場の動きに与えた影響は大きかった。
そのため今回の米雇用統計が前回と同じような傾向を示すのかどうか、そして市場がどう反応するかに非常に注目が集まっていた。
以下、今回の米雇用統計内容を確認し、それを受けて市場がどう反応したのかについて整理しておくことにする。
2025年9月4日米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)発表の2025年8月米雇用統計
以下の情報は米労働省労働統計局の発表資料より引用・抜粋。
- 季節調整済み失業率は4.3%(前月は4.2%)、市場予想も4.3%
- 非農業部門雇用者数は前月比2万2000人増、市場予想の7万5000人増を下回っている
失業率4.3%は市場予想通りとはいえ2021年以来約4年振りの高水準。また今回も6月の非農業部門雇用者数が当初の1万4000人増から1万3000人減と下方修正され、2020年12月以来4年半ぶりの減少となっている(7月の非農業部門雇用者数は7万3000人増から7万9000人増へ時上方修正)。
同日の市場の動き
米国株式市場
序盤は米ブロードコム(AVGO)が新規顧客からAI半導体100億ドルの受注を発表したことが好感(取引開始後は13%を超える上昇)されていずれも前日比プラスで始まったものの、米雇用統計を受けての先行き不透明感が強まったことで主要3指数ともいずれも前日比下落となっている(ブロードコムも最終的には9.4%上昇)。
今回の米雇用統計発表後のCMEフェドウォッチでは9月の0.25%の利下げ確率が93%、0.50%の利下げ確率が7%となっている。
米国10年債
米雇用統計が発表された米国東部夏時間8:30は上記チャートのCDT(米国中部夏時間)では7:30。
取引開始から前日比で利回りは低下して始まり、米雇用統計が発表されると更に利回りは低下して10年債利回りは一時4月以来の低水準となって取引を終えている。
やはり予想外に弱い非農業部門雇用者数を受けて米経済の先行き不透明感が増し、比較的安全とされる債券に株式市場から資金が流入したことが利回り低下の要因だろう。
ドル円為替
米雇用統計が発表された米国東部夏時間8:30は上記チャートのGMT+1(英国標準時+1)では13:30。
米雇用統計発表までは1ドル=148円台前半で安定して推移していたが、米雇用統計発表により大幅なドル安となり一時は1ドル=146円台に。その後ややドル高となったが1ドル=147円半ばを下回る水準で週の取引を終えている。
やはり今回の米雇用統計で9月FOMCでの利下げがほぼ確実視され、日米金利差が縮小するとの見方からドルが売られ円が買われたということなのだろう。
まとめ
今回の米雇用統計はまたしても非農業部門雇用者数が市場予想に届かずに株式市場は下落、米債券は利回り低下、ドル円為替はドル安となった。
前回8月発表の7月米雇用統計ほどの株式市場下落とはならなかったものの、米雇用統計以外の経済指標においても雇用の増加ペースの鈍化、求人件数減少、賃金の伸びが緩やかとなっている傾向が見受けられるため、労働市場の底堅さに対する懸念は強まる結果となっている。
今回の米雇用統計、9月11日発表予定の米消費者物価指数(CPI)などを受けて9月16、17日開催のFOMCでFRBがどう利下げを判断するのか、またFRBがFOMCと同じタイミングで公表する四半期に一度の経済予測要旨(Summary of Economic Projections)における今後の利下げに対する見通しがどうなるか、そして市場がどう反応するのかに気を付けておきたい。
今回の米雇用統計結果のように米株安とドル安が重なると、自分の円ベース米国株資産は
一日で酷いことになってしまうので、この様な事態には陥らないことを願いたい。