上半期予定のマースのケラノバ買収は未だ完了せず(2025/7)

はじめに

自分の所有銘柄であるケラノバ(K)は2024年8月に

マースが自分の所有株ケラノバ(K)の買収を発表(2024/8)

でまとめた様に同業の米マースが359億ドル(一株当たり@83.50ドル)で買収することを発表しており、以下の直近ケラノバ決算まとめの際には

ケラノバ(K)2025年第1四半期決算発表(2025/5)

  • マース社と共にグローバルなスナック食品大手の一員として次の章に向けて準備を進めつつ、世界経済の不確実性が続く中で不測の事態への対応策を計画し、対策を講じている
    • 規制当局の承認を含む慣例的な完了条件に従う必要があり、引き続き2025年上半期中に完了すると予想(元々の買収発表時と変わらず)

と2025年上半期での取引完了に向けて順調に進んでいると思っていたのだが、上半期が終了した6月末時点でマーズ/ケラノバ両社からの発表は無く、当然自分が使っている楽天証券からも何の連絡も無かった。

不思議に思って年初来のケラノバ株の推移を確認してみると

マースによる買収発表以降は、市場(この場合はS&P 500、赤線)がトランプ政権の関税政策に大きく下落した局面でも80ドルを超える水準で推移してたケラノバ株が6月半ばから下落していることに気が付いた。

調べてみると欧州委員会による調査のため、マースによるケラノバ買収が上半期に成立しなかった模様。以下、マースによるケラノバ買収に関する欧州委員会による調査について判ったことを整理しておくことにする。


マースによるケラノバ買収に関する欧州委員会による調査

以下は主にロイター通信の報道より引用・抜粋。

2025年5月19日(月)

  • 欧州委員会はマースによるケラノバ買収に関する買収を承認するかどうかを6月25日までに決定すると規制書類で明らかにした
  • 欧州委員会は予備審査中に救済措置の有無にかかわらず取引を承認できるが、深刻な懸念がある場合には4ヶ月に及ぶ調査を開始することができる

2025年5月27日(火)

  • 欧州委員会はマースによるケラノバ買収に関する規制書類で、通知から10日以内に第三者に取引、特に「提案された集中」について意見を述べるよう求めた

2025年6月18日(水)

  • 関係筋によると、欧州連合27ヶ国で独占禁止法監視機関の役割を果たす欧州委員会は、一部の欧州連合諸国におけるマースのケラノバ買収による一部製品の高い市場シェアと、強力なブランド群を懸念している
  • マースは競争上の懸念に対処するため資産売却を迫られる可能性がある
  • 関係筋によると、6月25日に終了するEU競争当局によるこの取引の予備審査中に、そうした懸念を和らげる救済策をマース社が提示する可能性は低い

この報道後やはり6月18日にロイター通信が追加の報道

  • マースはケラノバに対する360億ドルの買収案を審査している欧州連合(EU)の独占禁止規制当局に対し、救済策を提示していないことが、欧州委員会のウェブサイトで19日(時差の関係で19日、米国では18日)に明らかになった
  • マースが救済策を提示する期限は6月18日だった
  • EUの独占禁止監視機関は6月25日に終了する予備審査の終了後、この取引に関する本格的な調査を開始する予定

2025年6月26日(木)

  • 米連邦取引委員会(FTC)がマースによるケラノバの買収を承認。以下はFTCの声明
    • この取引は反競争的合併の基準を満たさない
    • 消費者を傷つける方法で競争を阻害する取引を躊躇なく阻止するが、そのような懸念のない取引は阻止しない
    • 我々の仕事は、法廷で証明できるアメリカの法律違反があるかどうかを判断することであり、そしてそうでないと結論づけたなら我々の仕事はその場から離れることだ
  • EUの独占禁止監視機関はマースによるケラノバの買収に関する本格的な調査を開始
    • マースは小売業者に対する交渉力を高める可能性がある。その結果、マース社は、例えば交渉の際に、より高い価格を引き出すために、この増大した影響力を利用することができる
    • 提案されている取引は2025年5月16日に欧州委員会に通知された。欧州委員会は2025年10月31日までの90営業日以内に決定を下す
  • マース社のコメント
    • 米国での決定に満足しており、EUを除くすべての規制当局の許可を得ている
    • 2025年末には取引が完了する予定

まとめ

以上マースによるケラノバ買収が予定の2025年上半期に完了しなかった理由である欧州規制当局の動きについてまとめてみた。

現状では米規制当局の承認は得たものの、EU規制当局はこの買収に懸念を示し2025年10月末までに本格的な審査を行い決定を下すことになったことが、6月に入ってからのケラノバ株下落の原因となったようだ。

あくまで本格的な調査に入っただけで買収そのものが承認されないと決まった訳ではなく、米FTCの承認及びマース社が年内に買収完了予定としたことを受けて、再びケラノバ株は上昇しているが最終的にどう転ぶかはまだ判らない。

買収発表時の期限に関する条件としては

  • 合併が8月13日までに完了しない場合はどちらか一方の申し出により買収から撤退できる
  • 遅延の原因が規制当局の審査によるものである場合、期限は6ヶ月ずつ2回延長される可能性がある

というものがあるが、マース社のコメントを見る限りは買収からの撤退はなさそうだ。今後もその進捗/結果には注意しておきたい。7月30日にはケラノバの2025年第2四半期決算発表が予定されているが、そこで多少なりともアップデートがあるかどうか。

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