はじめに
2024年7月16日(火)の米国市場は
同日米商務省が発表した6月の小売売上高(季節調整済み)が市場予想の前月比0.3%減に対して横ばいとなったことや、FRBのAdriana D. Kugler理事がワシントンDCでの講演で、最近の経済指標でインフレ率がFRBが目標とする2%に向けて低下し続けていることが示されており、ディスインフレが一段と加速すれば年内に金融政策の緩和を開始するのが適切になるとしたことなどを受けて、景気後退を回避しつつインフレを抑制し金融緩和開始に近づいているとの見方が強まったため、ここ最近では珍しく大型ハイテクを除いた銘柄を中心に大きく上昇となり、ダウ工業平均が最高値を更新している。
そんな中、自分の所有銘柄であるワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)が
ここ最近の冴えない動き
とは異なり前日比7.55%の上昇となっていた。
以下に今回のWBD株上昇の原因と懸念となっているNBAの放映権の状況について確認し、整理しておく。
2024年7月のワーナーブラザース・ディスカバリー関連情報
7月16日Bank of America SecuritiesのアナリストJessica Reif Ehrlich氏のWBD投資格付けアップデート
投資格付け:Buyで変わらず
目標株価:12ドル(14ドルから下方修正)
以下はJessica Reif Ehrlich氏の投資格付けアップデートの要旨。
- (WBDの)現在の構成は統合上場企業として機能していない
- 現状では、資産売却、再編、合併などの戦略的代替策を模索することで、現状維持よりも株主価値が高まる
- 2022年の合併当時の我々の強気な理論は、以下の2点に基づいていた
(1)新会社を支えるユニークで価値ある資産
(2)WBDの規模によりストリーミングサービスが拡大し、スタジオが活性化する中で長期的に厳しい状況にあるリニア事業を同社が守れること - 現状ワーナーメディアとディスカバリーの統合によるいくつかの財務上の仮定は実現していないが、我々は依然としてWBDの資産のいくつかがクラス最高であり、莫大な未認識の価値があると信じている
- WBDにはいくつかのシナリオが考えられる
- 長期債務400億ドルのうち(全部ではないにしても)相当額を伴ってリニア資産を分離し、同時に消費者直結型とスタジオ資産を独立企業として成長させていくシナリオ
- これはWBDの債務価値に壊滅的な影響を与える可能性があるが、このような取引は株式価値を高めると我々は考えている
- 本質的にこのシナリオは債権者から株主への価値の大きな移転となる。さらにこれは明らかに理想的ではなくリスクも大きいが、WBDの投資適格債務(コベナンツ・ライト)の性質上、現実的な潜在的選択肢となり得る
- この選択肢は明らかに最後の手段であるが、現在の株価と過去1年間の株価推移を考えると、検討する価値がある段階に近づいていると信じている
- 資産売却や完全売却のシナリオ
- 同社の規模や複雑さを考えると、買い手候補は少ないと思われる
- また資産売却は実現までに長い時間がかかり、実行リスクが高まる可能性もある
- 我々の推定ではCNNが60億ドル、ワーナー・ブラザース・ゲームズが56億ドル、ポーランドのTVNが35億ドルの価値がある可能性がある
- 別のストリーミング配信業者との合弁事業や合併、あるいは放送ネットワークとの合併シナリオ
- 放送ネットワークの合併は戦略的に意味があり、プレミアムスポーツの権利が付随して、リニア事業の保護とストリーミングの拡大に役立つ可能性が高い
- 売却希望者が見つかるかどうかは不確実であり、負債額が高く株価が低いことからWBDが取引資金を調達できるかどうかも疑問
- また合弁事業・合併がWBDの他の事業分野における全体的な長期的課題を食い止めるのに十分かどうかは不明
- 長期債務400億ドルのうち(全部ではないにしても)相当額を伴ってリニア資産を分離し、同時に消費者直結型とスタジオ資産を独立企業として成長させていくシナリオ
7月10日の米スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」報道
- 米プロバスケットボール協会(NBA)は、コムキャスト(CMCSA)傘下のメディア大手NBCユニバーサルとアマゾン・ドット・コム(AMZN)の動画配信サービス「プライム・ビデオ」を新たなパートナーとする769億ドルの放映権契約で合意と報道
- 契約期間は11シーズン。契約の規模は現行の3倍以上
- ウォルト・ディズニー(DIS)のスポーツ専門放送局ESPNとABCは放映権契約を更新
- ワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)傘下のTNTスポーツの放映権は2024/25年シーズンまで
- 合意の段階であり、正式な契約締結ではない
- 関係各社はコメント要請に応じず
まとめ
まずアナリストの投資格付けアップデートについてだが、目標株価は引き下げられたにもかかわらずWBD株が上昇したということで、その内容、特にWBDの資産価値についての指摘が重視されたと思われる。また、いくつかのシナリオが提示されたが、実現可能性や効果という点ではいずも個人的には微妙に見える。
そしてNBAの放映権についてだが合意の報道があったものの上述したチャートで判る通り、報道のあった後にWBD株は大きく変動していない。これがあくまで合意の報道でなく正式契約発表でないためか、それとも既にNBAの放映権をWBDが失うことが株価に織り込まれているためなのかは不明。後者であればよいのだが。
年初来のWBD株の推移を市場(S&P 500)と比較してみると
S&P 500が概ね右肩上がりで年初来18.81%上昇しているのに対して、WBD株は右肩下がりで昨日の上昇を含めても29.88%の下落となっており、パフォーマンスの悪さが際立っている。
今回の上昇で5月の第1四半期決算発表時に近い株価まで戻したものの、これで上昇が続くとはとても思えない。8月1日に予定されている第2四半期決算発表がどうなるか次第なのだろう。
まあ取得価額比で70%超のマイナスで配当も出ていない現状
を考えれば、バイアンドホールド/長期投資のスタンスで損切りが出来ない自分としては気長に待つしかないだろう。