2025年8月1日発動予定だった米国の相互関税がどうなったか

はじめに

2025年にトランプ大統領が就任してからの米国の相互関税措置については主に

2025年5月末時点でのトランプ政権関税政策まとめ

トランプ政権が新たな関税を通知/交渉期限延長(2025/7)

トランプ政権の新たな相互関税内容まとめ(2025/7/12時点)

トランプ政権の相互関税現状まとめ(2025/7/28時点)

で整理してきたが、米国の新たな相互関税発動の期限である現地時間2025年8月1日となった。

以下、米国の相互関税が結局どうなったのかについて以下に整理しておくことにする。


2025年8月1日時点の米国相互関税概要+α

  • 2025年8月1日から新たな相互関税が発動されたのはカナダの35%のみ(ただしUMSCA協定の対象品以外)
  • ホワイトハウスが公開した大統領令で、新たな税率の発効が発令から「7日後」とされた
  • この大統領令により、8月7日までに船に積み込まれ、10月5日までに米国に到着する商品には以前の低い税率が適用される
  • また大統領令では「適用される関税を回避するために積み替えられた」とみなされる商品には40%の追加関税を課すとしている
  • 新たな関税率は10%(英国、オーストラリア)から41%(シリア)までまちまち
  • 大統領令ではブラジルには40%の追加関税が課され、一律10%の相互関税と併せて50%の相互関税となる予定(新たな関税の発動は1日早い6日後)
  • 7月31日時点での米貿易トップ10の国/地域の新たな相互関税率は以下の通り。太字は合意/あるいは米国が通達した関税率。

    • メキシコへの新たな相互関税発動はは90日間延長
    • 中国の相互関税交渉期限は8月12日
    • 台湾、インドは合意ではなく米国からの新たな関税の通達で、先述の通り発動まで1週間の猶予がある

また相互関税とは別に8月1日を前にして、銅への関税にも動きがあった。

  • 2025年7月30日にトランプ大統領が銅輸入品に対する新たな関税を定める布告に署名
    • 全ての半製品に対して一律50%の関税を課す一方、精錬銅など(国際市場で主に取引されている)への適用は見送り
    • 新たな関税は2025年8月1日から発効
    • 今回の銅関税は既に導入されている自動車関税と重複で適用されることはない

銅関税の適用範囲に製錬銅などが含まれていなかったことで銅の先物価格は急落となった。


まとめ

以上米国東部時間2025年7月31日までの米国の関税政策に関する動きについて整理してみた。

まず新たな相互関税の発動が予定されていた2025年8月1日ではなく、7日後となったことが目を引く。実際には7月31日にホワイトハウスのレビット報道官が新たな関税は8月1日に発行すると発表した後に、新たな関税率は7日後に発効するとした大統領令が公開されており、バタバタ感が否めない。

また米国の貿易トップ10に入っている台湾、インドに対して7日間の猶予はあるとはいえ、それぞれやや高めの20%、25%の新たな相互関税、カナダもUMSCA対象以外の製品に35%の高関税となった点を受けて8月1日の市場がどう反応するかにも注目(大統領令の内容が明らかになったのは米国市場閉場後)。ただ7月31日の米国市場閉場後に決算発表のあったアマゾン(AMZN)が時間外取引で大きく下落しているので関税以外でその影響が出るかもしれない。

4月に想像されていたよりも関税率は低めとなったが、最新のイェール大学予算研究所の試算では7月31日以前の時点で米国の消費者は既に実効関税率18.4%に直面しており、これは1933年以来最も高いとのこと。冷静に考えると、今後新たな相互関税発効により実効関税率は更に上昇することになり、米国を含めた各国での景気減速につながる可能性は拭えない。新たな関税率で合意した国/地域との詳細についても不透明な部分は多く、今後も米国の関税政策及びその影響については注意を払っていく必要があるだろう。

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