トランプ政権の相互関税現状まとめ(2025/7/28時点)

はじめに

2025年にトランプ大統領が就任してからの米国の相互関税措置については主に

2025年5月末時点でのトランプ政権関税政策まとめ

トランプ政権が新たな関税を通知/交渉期限延長(2025/7)

トランプ政権の新たな相互関税内容まとめ(2025/7/12時点)

で整理してきた。

新たな相互関税の発動が今週2025年8月1日に迫っている訳だが、現時点の米相互関税の状況について

アメリカの貿易トップ10と現在の相互関税措置概要(2025/7)

でまとめた貿易トップ10の国/地域を中心に確認してみることにする。


アメリカの貿易規模トップ10の国/地域と現在の相互関税措置概要

以下は主に米通商代表部、米国勢調査局の資料を基に作成。ここに挙げた10ヶ国で米国の貿易全体の74.2%を占めている。太字は合意した関税率。

以下各国/地域の最新状況を簡単に補足しておく。

EU(欧州連合)

米の6月1日からEUへの50%関税は一旦延期(2025/5)

でまとめた様に、5月下旬には関税交渉の行き詰まりから6月1日から米がEUへの相互関税を50%に引き上げるとの表明もあったがそれは行われず、7月12日に新たな相互関税を30%へ引き上げるとの表明があった。

米国の貿易量が最大のためEUとの交渉は注目を浴びていたが、7月27日に「自動車をはじめとする全ての製品に対する関税は、一律15%とする」ことで大枠合意となった。ただ、鉄鋼とアルミニウムは除外され50%の関税が維持される。

メキシコ、カナダ

メキシコ及びカナダについては2025年3月4日からカナダとメキシコからの輸入品に25%(カナダ産のエネルギー資源は10%)の関税が課されている。その後UMSCA(米・メキシコ・カナダ協定)の対象製品に関しては関税を免除され、4月以降もその状態が続いている(USMCAの更新期限は2026年7月)。

そしてUMSCA対象製品以外について7月10日にはカナダに35%、7月12日にはメキシコに30%の相互関税を課すことを発表している。現時点ではカナダとの交渉は不調との報道、メキシコについては進捗が不透明な状況。

中国

中国に関しては

米中の関税90日間大幅引き下げとこれまでの動き(2025/5)

でまとめており、5月14日までに米国は中国に対する関税率を145%から30%に引き下げ、中国は米国に対する関税率を125%から10%に引き下げることで合意した。しかしその期限は90日間であり、8月12日にはその期限が切れる。

7月28日には6月以来3度目となる閣僚級協議がスウェーデンで開催される予定で、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが米中がさらに90日間の期限延長に合意する見通しだと報じており、協議の結果が注目される。

日本

7月7日に8月1日に発動する新たな関税率として25%が通知され、7月22日にトランプ大統領が合意に至ったとSNSで発表した。詳細については既に日本でも詳しく報道されているので割愛するが、5500億ドルの対米投資と15%の相互関税率(自動車含む)が大きなポイントだろう。ちなみにこの合意を受けて日経平均は大きく上昇した。

また海外の論調を見ると15%の相互関税(+米国への投資)が新たな相互関税の最低ラインのベース(7月23日のAIサミットでトランプ大統領が「15%から50%の間で単純な関税を課すことになる」と発言)となる可能性が高くなったとしており、実際のその後EUとの相互関税も15%で大枠合意している。

ただ7月23日のFOXニュースのインタビューでベッセント財務長官が、日本の履行状況を四半期ごとに精査するとし、トランプ大統領が(履行状況に)不満を持つようなら、自動車や他の日本製品全般への関税率は25%に逆戻りする、とも発言している。

韓国

日本と同様、7月7日に8月1日に発動する新たな関税率として25%が通知されており、7月26日に韓国大統領府が、米国と相互に合意可能な貿易パッケージを準備する、との発表をしている。

また具潤哲企画財政相と趙顕外相が今週(7月28日週)、ベッセント米財務長官、ルビオ米国務長官とそれぞれ会談する予定。

台湾、インド

前回7月上旬と同様に、現時点では新たな相互関税率は明らかになっていない。

インドのゴヤル商工相が7月24日にブルームバーグのインタビューで合意の可能性について問われた際、「常に自信を持っている」と答えている。

ヴェトナム、英国

既に前回まとめ時点でヴェトナムは20%、英国は10%の相互関税率で大枠合意している。


まとめ

以上、今週8月1日に発動が迫っている米国の相互関税上乗せ分に関する米貿易トップ10の国/地域の状況について整理してみた。

やはり週末に米貿易量が最大のEUとの交渉が合意に至ったのは大きい。特に7月27日のトランプ大統領とEU委員長Ursula von der Leyenの会談前には、トランプ大統領が合意に至る確率は50%としていただけに、とりあえず期限前の合意は好材料だろう。

ただEUも日本と同様に詳細については明らかになっていない部分もまだあり(5月に関税に合意した英国も未だ協議を続けている)、今後も細かい部分での貿易協議は続いていく点は頭に入れておく必要がある。これを書いている時点ではヨーロッパ市場が開場直後の上昇から下落に転じている市場もあり、EUの関税合意に対する市場の評価は複雑なものとなっている可能性もある(開場前の米国市場もほぼ横ばい)。

それでも自分が思っていたよりも日本、そして特に気になっていたEUの相互関税率が低く合意できたことで、7月末から8月頭にかけての米国株式市場大幅下落は避けられそうな気はしている。次は8月12日には中国との関税引き下げ期限切れが迫っているので、そちらに関連する情報についても注意していきたい。

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