イラン/イスラエルの停戦合意と今後の気になる点(2025/6)

はじめに

2025年6月13日(金)にイスラエルがイランの核関連施設を空爆してからの動きについては

イスラエルのイラン核関連施設空爆直後の米国市場(2025/6)

イスラエルがイラン核関連施設空爆に至る経緯(2025/6)

米国がイランに無条件降伏要求、そして市場の動き(2025/6)

米国がイランの核施設3ヶ所を攻撃(2025/6)

イランの米軍基地攻撃で米株上昇、そして停戦実現?(2025/6)

でまとめてきた。

昨日の「イランの米軍基地攻撃で米株上昇、そして停戦実現?(2025/6)」時点では「?」をつけて本当に停戦に至るのかに疑義があったのだが、どうやら正式に停戦合意が成立した模様ではある。

一方で今後についてはまだ気になる事項が残っており、昨日まとめ以降の状況の推移と併せて気になる点について整理しておくことにする。


日本時間2025年6月24日(月)夜からのイスラエル/イラン/アメリカの動き

主なものを概ね時系列順に列挙。日付については特記が無い限りは現地時間。

前回まとめた日本時間2025年6月24日(火)夜時点での簡易状況

  • トランプ大統領がSNSに停戦合意と投稿
  • イスラエルのネタニヤフ首相が停戦合意の声明
  • イランが停戦後にイスラエルに最後の攻撃を実施したとの報道
  • イスラエルのカッツェ国防相がイランが停戦に違反したとして報復攻撃命令
  • トランプ大統領が報道陣及びSNSにイスラエルへの攻撃自制を促す発言/投稿

2025年6月24日(火)

  • トランプ大統領がSNSに以下の投稿
    • 中国はイランから石油を今後も購入することができる
    • 米国からも大量に購入することを期待している
  • イスラエル首相府が以下の声明
    • イランによるミサイル発射への報復として、停戦発効から数時間後にイランの首都テヘラン近郊の軍事レーダー設備を攻撃した
    • トランプ米大統領とネタニヤフ首相の会談後、それ以上の攻撃は控えている
  • イスラエルのネタニヤフ首相が国民へ以下のビデオメッセージ
    • 我々は歴史的な勝利を収めた。この勝利は何世代にもわたって記憶される
    • 核による絶滅の脅威と2万発の弾道ミサイルによる絶滅の脅威という、我々の存在を脅かす2つの差し迫った脅威を排除した
    • イランでこの開発計画を再開させようとする者がいれば、我々は同じ決意と力でその試みを阻止する。イランが核兵器を保有することはない
    • 我々の友人であるトランプ大統領は、前例のない形でわれわれの側に立ってくれた。彼の指示の下、米軍はフォルドゥの地下核濃縮施設を破壊した
    • イラン枢軸に対する作戦を完了させ、ハマスを打倒し、生存者・死者を問わず全ての人質を解放しなければならない
  • 米CNNが3人の関係筋の話として以下の報道
    • 米軍が実施したイランの核施設に対する攻撃は米情報機関の初期的な分析では、イランの核開発計画の中核部分は破壊されず、計画を数ヶ月遅らせる程度にとどまった可能性が高い(トランプ政権は攻撃直後完全破壊としていた)
  • イランのペゼシュキアン大統領が以下の発言
    • イスラエルは重く歴史的な罰を受けた
    • 12日間の戦闘でイスラエルは想像を絶する被害をこうむり、イランの核開発計画の破壊にも失敗した
    • (米国とイランが)交渉の席に着いている間に侵略をした。敵の背信行為を歴史は忘れないだろう
  • ロイター通信がCNNの米によるイラン核施設攻撃結果の初期報道に対する追加報道
    • 初期報告書は国防総省の国防情報局(DIA)がまとめ、イランは数ヶ月で核開発計画を再開できる可能性があり、関係筋の1人は最短で1~2ヶ月以内と見込んでいる
    • 評価には多くの注意書きや仮定が含まれており、今後数日から数週間のうちに、より詳細な報告書がまとめられるだろう
    • 核施設3ヶ所の被害状況を評価するのは困難な作業になる見通しで、この任務を負っている機関はDIAだけではない。関係筋によると、この評価は広く受け入れられてはおらず、大きな意見の相違が生じているとのこと
  • ウィトコフ中東担当特使がFOXニュースのインタビューで以下の発言
    • 我々は既に(イランと)直接協議だけでなく、仲介者を通した話し合いも行っている。対話は有望だと思う。イランを復興させる長期的な和平合意を結べることを期待している
    • 今こそイラン側と話し合い、包括的な和平合意に達するべきだ。それを達成できると非常に自信を持っている

2025年6月25日(水)

  • イラン国営テレビが以下の報道
    • イラン議会が国連の各監視機関との協力を停止することを支持する決議を採択
    • ガリバフ議長のコメント
      • イランの核施設への攻撃を、僅かでも非難することを拒んだ国際原子力機関(IAEA)は、国際的な信頼を自ら投げ捨てた
      • イラン原子力庁は、核施設の安全が保障されるまでIAEAとの協力を停止する
    • ただし実際に協力を停止するかは、外交や国防を統括する最高安全保障委員会が最終判断を行う

イスラエル/イラン/アメリカに関する今後の気になる点

最も気になる事項は当然、本当に停戦合意が続くのか、という点だが、それ以外にも以下の気になる点がある。

  • イランの核開発能力がどこまで損なわれたのか、そして米イラン核交渉の行方

当初米軍によるイラン核施設の空爆により、トランプ政権は「イランの主要な核濃縮施設は完全かつ全面的に破壊された」としていたが、直近では中核部分は破壊されず核開発計画を数ヶ月遅らせるにとどまったとの報道もある。

イスラエルはイランの核開発に対して今回の様に強力に阻止するとしており、米国もイランの核保有を容認しない立場であるため、今後のイランの核開発計画がどの様になるのかは今後気になる事項。そしてイラン議会がこれまで査察を受け入れていた国際原子力機関(IAEA)との協力を停止する決議をしたことで、今後のイランの核開発計画に関する情報が更に少なくなることだろう。

これらを踏まえて中断されている米イランの核交渉はどうなるのか。そもそも再開されるのか、その場合落としどころはどうなるのか等、難題は山積みなのが現状。

  • トランプ大統領のイラン産原油を中国が購入することについての投稿

トランプ大統領がSNSで中国によるイラン産原油の購入継続を容認する旨投稿したが、これはこれまでの対イラン政策の中核と位置づけられてきたイランの主な歳入源である原油輸出を断つという立場とは異なるもので、大きなサプライズ。

イラン産原油の購入は米国のイラン制裁に違反するものであるが、中国はイランへの制裁を承認しておらず、原油の約14%をイランから輸入している。そして一部の輸入は米国の制裁を回避するため、マレーシア、アラブ首長国連邦、オマーンからの輸入に見せかけられていると言われ、実際は14%より多い可能性が高いとも言われている。

トランプ大統領のこのSNSへの投稿はNATO首脳会議へ向かう大統領専用機で行われており、この投稿がどういう意図/目的で行われたかは不明だが、原油先物市場は大きく反応し

投稿が行われた米東部時間9時過ぎにそれまでの1バレル=66ドル台から一時1バレル=64ドル台まで原油先物価格は下落。その後1バレル=64~65ドル台での不安定な推移が続いており、今後の展開、特にトランプ大統領の真意については要注目。

ちなみにブルームバーグがイラン産原油への制裁を担当する財務省および国務省に取材したところ、財務省はコメント要請に応じず、国務省はホワイトハウスに問い合わせるよう求めたとのこと。


まとめ

以上日本時間2025年6月24日(火)夜以降のイスラエル/イラン/米国の動き、そして今後の気になる事項について整理してみた。

まず昨日夜時点では懸念していたイラン/イスラエルの停戦が(今の所一応)実現しているのは、これ以上の人的被害が避けられたということで素直に喜ぶべきだろう。

しかし一方で、今後のイラン核開発に関しては不透明な部分が多く、また米国のイランへの制裁の方向転換ともとれるトランプ大統領のSNSへの投稿の真意も不明で先行きには懸念が残る。停戦合意に至ったからといって市場/自分の資産が安定するとは思わずに、今後の事態の推移に引き続き注意していきたい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする