JPモルガン(JPM)2024年第4四半期決算(2025/1)

はじめに

2025年1月15日(水)から米国企業の四半期決算発表(主に2024年10~12月)が本格化した。いつもの様に自分の所有している銘柄ではJPモルガン・チェース(JPM)が先陣を切って決算を発表している。

JPモルガンは前回2024年10月の2024年第3四半期決算では売上、EPS共に市場予想を上回り、通年NII見通しを再度引き上げたことなどが好感されて4.44%の上昇。その際には

「今後のこのまま底堅い株価推移を続けて欲しいところだが、総与信費用の多さ、いずれ減少局面となるNII(純金利収入)、決算で触れられた各種リスクなど不安要素が全くないわけではない。それでも他の米銀株に比べれば安定しており、今後も堅調な株価推移が期待出来そうである。」

と書いていた。

今回のJPモルガンの決算内容、そしてそれを受けての株価はどうなったのか。以下確認し整理しておく。


JPモルガン・チェース2024年第4四半期決算発表

以下の内容はJPモルガン・チェースの企業サイトから引用・抜粋。

  • 総収入(Managed Revenue)は437億3800万ドルで、前四半期比1%増、前年同期比10%増
  • 報告ベースの総収入(Net revenue – reported)は427億6800万ドル、前四半期比ほぼ変わらず、前年同期比11%増
  • 純利益(Net income)は140億500万ドルで、前四半期比9%増、前年同期比50%増
  • 希薄化後1株あたり純利益(EPS – diluted)は4.81ドルで前四半期比10%増、前年同期比58%増

純金利収入(Net Interest Income:NII)は234億7000万ドル(CIBマーケット事業を除く(Net interest income excluding Markets)と234億ドル)で、前年同期比3%減(CIBマーケット事業を除くと2%減)。NIIが前年同期比で減少したのは2021年以来のこと。

今四半期の貸し倒れ引当金繰入額(Reserve Build/(release))は3億ドルの積み増し、純償却額(Net charge-offs)24億ドルを含めた総与信費用は26億3100万ドルで前四半期の31億1100万ドルから15%減少し、前年同期の27億6200万ドルからも5%減少している。

2025年通期見通し

2025年の通期見通しに関しては以下の通り。

  • 2025年通年の企業全体の純金利収入(Net interest income):~940億ドル
  • 2025年通年のCIBマーケット事業を除く企業全体の純金利収入(Net interest income excluding Markets):~900億ドル
  • 調整後経費(Adjusted expense):~950億ドル
  • Card NCO(Net Charge-Off) rate(カード純貸倒償却率):~3.6%

その他

その他カンファレンスコールを含め決算発表で気になった点には以下の様のものがある。

  • 2024年第4四半期に43億ドル相当の自社株買いを実施
  • 2024年の年間利益は585億ドルで過去最高
  • 部門別の業績
    • Consumer & Community Banking:純利益45億1600万ドル(前四半期比12%増、前年同期比6%減)
    • Commercial & Investment Bank:純利益66億3600万ドル(前四半期比17%増、前年同期比59%増)
    • Asset & Wealth Management:純利益15億1700万ドル(前四半期比12%増、前年同期比25%増)
  • 決算発表資料中の最高経営責任者(CEO)Jamie Dimon氏コメント
    • 米国経済は回復力がある。失業率は比較的低いままで、ホリデーシーズンを含め、消費者支出は健全な状態を維持した。企業は経済についてより楽観的になっており、より成長促進的な政策や政府と企業の協力関係の改善への期待に勇気づけられている
    • しかし2つの大きなリスクがある
      • 現在および今後の歳出要件はインフレを引き起こす可能性が高いため、インフレはしばらく続く可能性がある
      • 地政学的状況は第二次世界大戦以来最も危険で複雑なまま
  • アナリストとのカンファレンスコール
    • 余剰資本の活用に関する質問
      • 現在の環境を考えると十分な余剰資本を蓄えておくことは理にかなっている
      • とは言え過去6ヶ月かなり広範囲に調査し議論を重ねた結果、十分な余剰があるという結論に至った
      • そのことを踏まえると、今後は余剰を増やしたくないと考えている
      • 近い将来に事業拡大の機会が見つからなければ、余剰の増加を食い止めるためには自社株買いによる資本還元を増やす必要があるということになる。それが現在の当社の計画
    • Jamie Dimon氏(CEO)の後継者及びもっと長くCEOに留まるつもりはないのかという質問(2024年5月のInvestor Dayで5年以内に退任するとしている)
      • 3月には69歳になり、ご存知のとおり私は健康上の問題をいくつか抱えていたので、それ(退任すること)が合理的な行動だと思う
      • マスコミに言うつもりはないのだが、まだ決まっていない。そして、ご存知の通り、最後の瞬間つまり数年後に、人々は病気になったり、気が変わったり、家族の事情があったりもするだろう。だから、今日わかっていると思っていても、完全に確信することは出来ない
      • (ということは現時点ではあと数年は留まることになるのか?)基本的なケースはそう
    • 新しい政権が誕生することによる規制構造について
      • 現時点では生産的ではないと思うが、あなたの質問に答えるために少し努力してみよう
      • 我々は一貫して、規制は経済成長の促進と安全で健全な銀行システムの維持のバランスを効果的にとるように設計されるべきであると言ってきた
      • これは規制を弱めるということではなく、透明性があり、公正で、全体的なアプローチを持ち、厳密なデータ分析に基づいたルールを設定するということだ
      • 私たちはすべてを総合的に、適切な分析で行うことの重要性を繰り返し強調しており、それに時間がかかってもそれはそれで構わない
    • クリスマス休暇前後の、ストレステスト透明性に関する連邦準備制度理事会からのプレスリリースと銀行からの訴訟について
      • それについて言えることは、透明性とボラティリティ、そしてCCARプロセスに関連する実質的ではない官僚的負担など、私たちが長い間話し合ってきた多くの事柄の改善が必要であることをFRBが明確に認識していることを嬉しく思うということだけ。素晴らしいことだ
      • 実際の訴訟当事者である業界団体の立場を代弁するつもりはないが、プレスリリースで公に述べられたことを読むと、これは時効の期限が迫っていることを踏まえて権利を保全することと同じくらい重要なことのように思われる。だから、その面で大きな進展が見られることを期待したい

市場予測との比較

今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、

  • 2024年第4四半期の総収入(Managed Revenue)は437億3800万ドル、市場予想の417億3000万ドルを上回っている
  • 2024年第4四半期の希薄化後1株あたり純利益(EPS)は4.81ドル、市場予想の4.11ドルを上回っている
  • 2025年通年の企業全体の純金利収入(Net interest income)は~940億ドル、市場予想の910億ドルを上回っている

となっている。


まとめ

上記の様な決算結果を受けてJPモルガンの株価は

前日比1.97%の上昇。同日の米国市場が

CPIの発表を受けて大きく上昇しているので大きな上昇という訳でもない。

売上、EPS、2025年通年のNII見通しのいずれも市場予想を上回っているのでもっと大幅な上昇であっても良さそうなものだが、JPモルガンはNIIの高成長が持続不可能であるとしており、実際に2024年第4四半期のNIIは2021年以来初めて前年同期比で減少したことなどが株価大幅上昇とならなかった原因だろうか。

ちなみにその他大手米銀株は市場を大きく上回る上昇となっている。

決算翌日を含めた過去1年のJPモルガン株の推移を市場(S&P 500)と比べてみると

2024年11月の米大統領選を受けて大幅高となった後は市場と同様方向感に乏しい動きだったものの、2025年1月13日から上昇幅を伸ばして過去最高値を更新し、過去1年で見ても市場の約25%上昇と比較して50%を超える上昇となっている。そして個人的には今回決算の翌日に反動で下落に転じることもなく上昇(前日比0.79%)しているのも心強い(市場は

CPI上昇の反動からかいずれも下落)。

今後のJPモルガン株だが、今回前年比で鈍化したNIIがどの程度持ちこたえてくれるか。その幅が小さいほど株価への影響も軽微となるだろう。またトランプ政権下で金融規制がどう変わるのか、そしてそれがJPモルガンにどの様な影響を及ぼすのかも株価への影響は大きいのだろう。流石に過去1年の様な好調な推移は望めないだろうが、年間を通じて市場と遜色のないパフォーマンスをしてもらいたいものだ。

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