ワーナーブラザースの組織再編発表と株価急騰(2024/12)

はじめに

米現地時間2024年12月12日(木)、自分の所有しているワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)が掲題の通り組織再編の発表を行い、その結果米国株式市場が

といずれも下落した中で

ワーナーブラザース株は15%を超える急騰となっている。

以下、発表された組織再編の内容を確認すると共に、なぜこの発表がワーナーブラザース株の急騰につながったのかを考えてみることにする。


2024年12月12日のワーナーブラザース・ディスカバリーの発表

以下はワーナーブラザース・ディスカバリーの企業サイトより引用・抜粋。

  • ワーナーブラザース・ディスカバリーは本日、取締役会が戦略的柔軟性を高め、株主価値をさらに高める潜在的な機会を創出することを目的とした新たな企業構造を導入することを承認したことを発表した
  • この新しい企業構造では、ワーナーブラザース・ディスカバリーが2つの異なる事業部門の親会社として機能する
    • Global Linear Networks:
      魅力的なニュース、スポーツ、脚本付/なしの番組を提供する最も有名なネットワークのいくつかを運営する一流のリニアテレビ事業
    • Streaming & Studios:
      世界で最も愛されている知的財産のポートフォリオを備えた、世界規模のストリーミングプラットフォームと有名な映画およびエンターテインメントスタジオ
  • ワーナーブラザース・ディスカバリーは、新しい企業構造により明確さと焦点が強化され、各部門が特定の戦略目標と業務目標を実現しながら、統合されたワーナーブラザース・ディスカバリーの主要優先事項を推進する取り組みを実行できるようになると期待している
  • Global Linear Networksは、引き続き負債削減を行うために収益性とフリーキャッシュフローの最大化に注力し、Streaming & Studiosは、成長を促進し、投資資本の増加による高い収益率を実現することに注力する
  • 新しい企業構造により、進化するメディア環境において、両部門がさらなる価値創造の機会を追求するための選択肢も増加する
  • 社長兼最高経営責任者(CEO)David Zaslav氏のコメント
    • ワーナーブラザース・ディスカバリーを創設した合併以来、当社は事業を変革し、財務状況を改善しながら、世界中の視聴者に世界クラスのエンターテインメントを提供してきた
    • 当社は引き続き、Global Linear Networks事業がフリーキャッシュフローを継続的に生み出せるよう優位な立場を確保することを優先し、Streaming & Studios事業は世界で最も魅力的なストーリーを伝えることで成長を促進することに重点を置く
    • 当社の新しい企業構造は、当社の組織をより適切に調整し、進化するメディア環境における将来の潜在的な戦略的機会に対する柔軟性を高め、当社が勢いを増し、あらゆる手段を評価して大きな株主価値を提供する機会を創出するのに役立つ
  • ワーナーブラザース・ディスカバリーは、直ちに基礎的なステップを開始し、2025年半ばまでに新しい企業構造の実装を完了する予定
  • さらに、当社は取締役会を継続的に進化させ、戦略を実行し、将来の株主価値の創造を推進していく予定

まとめ

発表としてはそれなりの文章量があるのだが、基本的にはワーナーブラザース・ディスカバリーがこれまでのStudios、Networks、DTC(Direct-to-Consumer)の3事業部体制からGlobal Linear NetworksとStreaming & Studiosという2つの異なる事業部門を運営するということになる。

何故この発表でワーナーブラザース株が15%の急騰となったかというと、組織再編が将来的な分離や売却につながる可能性のある戦略的動きを示唆しているためだろう(「将来の潜在的な戦略的機会に対する柔軟性を高め」という文言など)。

先月行われた2024年第3四半期の決算発表の質疑応答でも、

「現在の株価は、当社が保有する素晴らしい資産の潜在的価値を十分に反映していないと強く信じている」

「当社は常に株主価値を高める方法を模索している」

としており、今回の組織再編はワーナーブラザース資産の認識されていない価値を引き出したり、将来的に戦略的な動きに必要な柔軟性が提供されると市場に評価されたようだ。

組織再編の動きは競合他社でも行われており、例えば米メディア大手のコムキャスト(CMCSA)は、先月傘下のNBCユニバーサルが抱える報道テレビ局MSNBCや経済テレビ局CNBCなどのケーブルテレビ局事業の大部分を切り離し、独立した新会社に移管すると発表している。

今回の事業再編を受けて、今後ワーナーブラザース・ディスカバリーがアクションを起こす可能性が従来よりも高まったと思われるので、動向及び株価の動きに注目しておきたい。何とか取得価額の水準まで戻って欲しいところだが、この発表を受けて上昇した株価はまだ2022年4月にAT&Tから分離した際の取得価額(@27.68ドル)の半分以下なので高望みすし過ぎだろうか。

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