はじめに
2024年7月1日(月)、ボーイングが2024年第1四半期決算でも触れていたサプライヤーのスピリット・エアロシステムズ(SPR)の買収を発表した。
以下、その内容を確認して整理しておく。
ボーイングによるスピリット・エアロシステムズの買収内容
以下はボーイング及びスピリット・エアロシステムズの企業サイトより引用・抜粋。
【買収内容】
- 合併は全株式取引で1株当たり37.25ドル、株式価値は約47億ドル。直近のスピリットの純負債を含めた取引総額は約83億ドル
- スピリット普通株式1株を0.18~0.25の交換比率に相当する数のボーイング普通株式と交換
- この比率は、買収終了の2営業日前までの15営業日間のボーイング売買出来高加重平均株価でで37.25ドルを割った値として計算される(1株あたり149.00ドルの下限と206.94ドルの上限が適用)
- ボーイング株終値が149.00ドル以下の場合、スピリット株主はスピリット普通株式1株につきボーイング普通株式0.25株を受け取り、終値が206.94ドル以上の場合、スピリット普通株式1株につきボーイング普通株式0.18株を受け取る
【完了条件】
- 同日、スピリットはエアバスと拘束力のある契約書を締結したことも発表
- 契約書に基づき、両社はボーイングによるスピリット航空の買収完了と同時にスピリットがエアバスのために行っている特定の資産パッケージをエアバスが買収するための最終契約を締結するために誠意を持って交渉を続ける
- また買収完了までにスピリットは特定の以下の事業売却を計画
- マレーシアのスバン
- エアバスのプログラムをサポートするスコットランドのプレストウィック
- エアバスのプログラムをサポートしていない北アイルランドのベルファスト
- 取引は2025年半ばに完了する予定であり、特定のエアバスの資産パッケージに関連するスピリット事業の売却と、規制当局およびスピリットの株主の承認を含む慣例の完了条件の充足が条件
【業務】
- ボーイング関連のほぼすべての商業事業に加え、追加の商業、防衛、アフターマーケット事業が含まれる
- 取引の一環として、ボーイングはスピリットと協力して、防衛および安全保障ミッションに関して米国国防総省およびスピリットの防衛顧客と協力することを含め、スピリットの顧客と買収したプログラムをサポートする事業の継続性を確保する
【買収によるボーイングのメリット】
- 安全性と品質システムを含め、両社の製造能力とエンジニアリング能力の統合
- サプライチェーンの安定性
発表を受けてのボーイング株価
上記発表を受けて自分が所有しているボーイング株の7月1日終値は
2.58%の上昇。同日の米国株式市場
に比べてもまずまずの上昇。スピリット・エアロシステムズも3.35%上昇しており、この買収は概ね市場に好感されたようだ。
まとめ
買収発表は必ずしも両社の株価が上昇するものではないのだが、今回のボーイングのスピリット買収発表では両社とも株価上昇となった。
元々2005年にボーイングのウィチタ工場とオクラホマ工場の分離独立がベースとなっているスピリット・エアロシステムズは、今年1月に発生したボーイング737MAXに関する事故における製造/品質管理プロセスに問題があったとされ、両社が再統合することでのメリットは大きそうに思える点が評価されたのだろう。
2024年4月24日の2024年第1四半期決算発表及び買収発表翌日を含めた過去3ヶ月のボーイング株の推移を見てみると
第1四半期決算発表時が年初来最安値となって以降はやや持ち直したものの、5月23日には年間キャッシュフローがマイナスになるとの見込みから再び急落。そこからまた持ち直したものの6月10日前後からはFAA(米連邦航空局)によるボーイングの監視強化や5月の納入機数が低調だったことなどを受けて6営業日連続下落など、イベント/データに左右される方向感が定まらない動きをしている。
今後も製造/品質管理に関する問題が解決しない限りは、業績/株価の動向も不安定な状況が続くのだろう。今回の買収が問題解決に好影響を及ぼし、2024年7月24日に予定されている第2四半期決算において問題解決のスケジュール感がある程度明確になってくれるといいのだが(実際にはFAAに依存するためスケジュール感も明らかにはならない可能性が高い)、まだまだ我慢の時が続きそうな気がする。第2四半期決算でこれ以上の一段安となる悪材料が出ないことを願いたい。