2024年5月FOMC結果とパウエル議長発言(2024/5)

はじめに

米現地時間2024年4月30日(火)、5月1日(水)には2024年3回目となるFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)が開催された。

前回2024年3月のFOMC会合では5回連続で政策金利が据え置きとなり、FOMC結果及びパウエル議長の会見では、根強いインフレにもかかわらず結局年内の利下げ3回というFRBのスタンスは変わらなかったことが株式市場では評価されたようで主要3市場いずれも最高値を更新して終えていた。

しかしその後は米消費者物価指数(CPI)などで想定よりもインフレ圧力が強い結果が示されたため、利下げ時期は更に後ずれする見込みが高まってきている。

そんな状況の中で行われた今回のFOMCによる政策金利結果及びパウエル議長の会見はどうだったのか、そして市場はどう反応したのかを以下に確認し整理しておく。


2024年4月30日、5月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)結果及びパウエル議長の発言まとめ

FOMC会合結果

以下は米連邦準備制度理事会(FRB)のサイトで現地時間14時に公開されたFederal Reserve issues FOMC statement(FOMC声明)より引用・抜粋。

前回からの主な変更点等は以下の通り。

【最近の経済】

  • 経済活動は堅実、雇用増は堅調、失業率は低くインフレは高止まりという点は前回とほぼ変わらずだが、その後に以下の一文が追加
    • In recent months, there has been a lack of further progress toward the Committee’s 2 percent inflation objective
      ここ数ヶ月、委員会の2%のインフレ目標に向けてさらなる進展は見られていない

【今後の政策金利決定に関して】

  • Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent
    委員会はフェデラルファンド金利の目標誘導レンジを5.25~5.50%に据え置くことを決定した
    ⇒前回と同じ
  • また以下の文章が追加。これは前回FOMC後のパウエル議長の会見で言及されていた
    • Beginning in June, the Committee will slow the pace of decline of its securities holdings by reducing the monthly redemption cap on Treasury securities from $60 billion to $25 billion. The Committee will maintain the monthly redemption cap on agency debt and agency mortgage‑backed securities at $35 billion and will reinvest any principal payments in excess of this cap into Treasury securities
      委員会は6月から財務省証券の月間償還上限を600億ドルから250億ドルに引き下げることで保有証券の減少ペースを鈍化させる。委員会は政府機関債と政府機関住宅ローン担保証券の毎月の償還上限を350億ドルに維持し、この上限を超える元本支払いを財務省証券に再投資する

パウエル議長の発言

以下はFOMC会合結果及び経済予測要旨開示後のパウエル議長の会見における主な発言より。

  • 今年はこれまでのところ、特に(インフレ目標に向けた)確信を深められるようなデータは得られていない
  • インフレに関する指標は予想を上回っている。確信を強めるまで従来の想定よりも時間がかかりそうだ
  • インフレ率が2%に戻るとの確信が強まるまで利下げは適切でないだろう
  • 利上げに踏み切るには、インフレ率を目標の2%に下げるのに政策引き締めは不十分だという説得力ある証拠が必要だが、その結論を裏付ける証拠はない
  • 雇用とインフレ目標達成に向けたリスクは過去1年間でバランスが改善した
  • インフレがさらに持続し労働市場が引き続き堅調であれば、利下げを遅らせることが適切となる可能性がある。しかし利下げにつながる道筋は他にもある。(インフレ低下への)確信が強まり労働市場が予想外に軟化した場合だ
  • (年内3回の利下げ予想に関する質問)FRBはインフレに対する確信を強める必要があるが、第1四半期には進展が見られなかった。利下げまでにどれくらいの時間がかかるかは分からない。インフレに関する確信が得られれば利下げが視野に入る
  • バランスシート縮小ペースの減速は市場の混乱を避けるため
  • FRBは政策決定に当たり政治的なイベントを考慮せず、(11月の米大統領)選挙はFRBの考慮の一部ではない
  • (バーゼルIIIに関する質問)FRBはバーゼルIIIのプロセスを完了し、その最終目標を達成することにコミットしている

FOMC会合結果及びパウエル議長の発言を受けての市場

米国主要3株式市場

S&P 500の日中の動きを見てみると

FOMC声明及び経済予測要旨が発表される前は前日比ほぼ変わらずで推移。14時にFOMC声明が発表された後はやや上昇となり、14時半からのパウエル議長会見が進むにつれて一段高となったが会見後は急速に値を戻し、結局前日とあまり変わらずに取引を終えている。

インフレの進展が見られていないとする一方で、利上げとなる可能性は低いとし、年内3回の利下げに関しては明確に否定していない等、今後の方向性が見えにくかったことが結局前日とほぼ変わらずだった理由に思える。

米国債長期金利(10年債)

米国債長期金利(10年債)の利回りの日中変化は以下の通り(チャートの時間がEDTではなくCDTとなっているので時間軸に注意)。

債券市場開始直後(株式市場より早い)から前日比で利回りはやや低下したもののその幅は少ないまま推移。そしてFOMC声明が発表されて一瞬大きく低下したもののすぐに戻る。しかしパウエル議長の会見で再び利回りは低下して取引を終えている(ただしパウエル議長の会見は途中の時点)。

ドル円為替

ドル円為替の日中変化は以下の通り。

FOMC声明が発表された米国東部夏時間14:00は上記チャートのBST(英国夏時間)では19:00。それまでに比べて動きはあったものの狭いレンジ。その後米国株式市場閉場後に大きくドル安となったのは、恐らく日銀の為替介入があったためだろう。


まとめ

4月発表の消費者物価指数(CPI)や直近の経済指標ではインフレ圧力が未だ根強いことが示唆され今回のFOMC及び市場の動きがどうなるかに注目していたが、結果的には株式、債券、為替市場に大きな影響を与える結果にはならず、穏当にFOMCイベントを通過した。

ただし、あくまで結果的には穏当に通過しただけで今後の方向性は見えにくかったことから、今後もここ最近の様に経済指標次第で都度市場が大きく動く可能性が高く(FRBは経済指標を都度判断していく姿勢を維持)、気が休まらない日々が続きそうだ。為替に関しては日銀の介入で大きく動くことがあるし・・・。

次回のFOMC会合は6月11、12日に予定されているが、それまでの経済指標がどうなるかにも注目しておきたい。

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