はじめに
現地時間2023年6月28日(水)の米国市場閉場後に、気になっていた掲題の2023年米銀ストレステスト結果が公表された。
米国市場閉場後の発表でありこの結果を受けて米銀株がどう動くのかや個別行の発表はまだなのだが、以下全体結果を簡単に整理しておくことにする。
2023年6月28日のFRBの米銀ストレステスト結果まとめ
以下はFRBのサイトの発表文より引用・抜粋。
- 米連邦準備理事会(FRB)は水曜日、年次銀行ストレステストの結果を発表し、大手銀行が深刻な不況を乗り切り、深刻な不況下でも家計や企業への融資を継続するのに十分な立場にあることを示した
- 理事会のストレステストは、大手銀行が景気低迷時に経済を支援できるかどうかを確認するためのツールの1つである。このテストは昨年末時点の銀行のデータを使用して、単一の仮想不況と金融市場ショックの下での資本水準、損失、収益、費用を推定することで大手銀行の回復力を評価するものである
- 調査対象となった23行はすべて、予想される総損失額が5410億ドルに達するにも関わらず、仮定の不況下でも最低資本要件を上回っていた。ストレス下では、損失に対するクッションとなる普通株式のリスクベース自己資本比率の合計は、2.3パーセント低下し最低10.1パーセントになると予想される
- 今年のストレステストには、商業用不動産価格の40%下落、オフィス空室の大幅な増加、住宅価格の38%下落といった深刻な世界的不況が含まれている。失業率は6.4パーセント上昇してピークの10パーセントに達し、経済生産もそれに比例して低下する
- 商業用不動産に焦点を当てたこのテストは、仮想シナリオでは大手銀行が多額の損失を被る一方、それでも融資を継続できることを示している。今年のテストの対象となった銀行は、銀行が保有するオフィスやダウンタウンの商業用不動産ローンの約20%を保有している。商業用不動産価格の大幅な下落が予想され、オフィス空室の大幅な増加と相まって、オフィス不動産の予想損失率は2008年の金融危機時に達した水準のおよそ3倍に達している
- 理事会は初めて大手銀行のトレーディング帳簿に対して調査的な市場ショックを実施し、より大きなインフレ圧力や金利上昇に耐えられるかどうかをテストした。この探索的な市場ショックは銀行の資本要件には寄与しないが、取引活動のリスクをさらに理解し、将来複数のシナリオに対して銀行をテストする可能性を評価するために使用された。その結果、大手銀行のトレーディング帳簿はテストされた金利上昇環境に対して回復力があることが示された
まとめ
今回の米銀ストレステスト対象となった大手23行は全て上記の深刻なシナリオ下でも十分な資本を有していることが示されたことになる。FRBは6月30日の取引終了後に自社株買いや配当計画を発表することが可能としているので、各金融機関が詳しい発表を行うことにり、個別の株価変動が起こるのはその発表次第となるだろう。
ただ自分の所有している米銀株シティグループ(C)で気にかかるのは、このストレステスト結果を受けてJefferiesのアナリストKen Usdin氏がシナリオに対する回復力が弱く必要な資本バッファーが大きく増加する可能性があると指摘している点。
同氏は同じく自分が所有している米銀株のJPモルガン・チェース(JPM)についてはモルガンスタンレー、ゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴ等と同様に今年のストレステストに対するバランスシートの回復力が高いとしており、他のアナリストや市場が同様の見方をすると(自分には58ページの発表資料中からそこまで読み取ることは出来なかったが、最悪下のシナリオでの損失額はシティが最も高い349億ドルだった)29日の米国市場でシティグループが他行に比べて振るわない可能性があることを覚悟しておいたほうがいいかもしれない。
今年のストレステストシナリオは3月の米銀破綻前のものであり、米銀破綻を受けてFRBは銀行監督の改革を提案する方針であることや、バーゼルIIIの最終化に伴い更なる自己資本規制強化の可能性もあり、ストレステストを全行がパスしたからといって例年の様に米銀行銘柄に関して一息つけたという状況には至らないというのが現状だろうか。何とか自分の所有米銀株でポートフォリオに占める割合の大きいシティがこれらをうまく乗り切ってくれるといいのだが。まずは30日に想定される発表に注目しておきたい。