はじめに
2022年12月4日(日)にはOPECプラスの閣僚級会合が行われていた。
月替わりの整理や2ヶ月振り(前回は10月5日でそれ以前はしばらく毎月行われていた)という事ですっかり失念していたが今回のOPECプラス会合はどうなったのか。
また最近はロシア産原油に対する欧州連合の動きなども取りざたされていたので、それらも併せて情報を整理し、原油価格及び自分が所有している原油価格に影響されやすいエクソン・モービル(XOM)の株価についても確認しておくことにする。
2022年12月4日のOPECプラス会合及びその前後の原油関連情報まとめ
以下は主にロイター、ブルームバーグの報道などより引用・抜粋。
【会合前】
- 11月23日、欧州連合(EU)外交筋が、海上輸送のロシア産原油の価格上限について1バレル当たり65~70ドルで設定することを検討との報道
- EUが設定する上限価格は、主要7ヶ国(G7)の全構成国も採用する見込み
- 上限価格を上回る価格で購入された原油は、ギリシャを含む欧州のタンカーや、原油漏れなどのリスクに対する業界で標準的な欧州の保険にアクセスできなくなる
- コモディティの市場価格を公表しているアーガス・メディアのデータによると、この価格帯はその時点のロシアのウラル原油価格をはるかに超える
- 65~70ドルで上限価格が合意されれば、ロシアは原油販売価格を引き上げることができ、輸出に必要な船舶へのアクセスも確保できる可能性
- 一部の国は65ドルではロシアに甘過ぎると主張。一方で世界有数のタンカー保有国であるギリシャなどは70ドルを下回る価格では合意したくない考え
- 11月25日、EUが上記海上輸送のロシア産原油の価格上限についての協議を延長
- 当初は25日夜の合意取りまとめを見込んでいたが、各国がそれぞれの立場に固執していることから協議は週明け28日以降も延長
- 11月29日、ロイターがOPECプラス関係筋の話として12月4日の会合では現在の生産量を据え置く可能性が高いと報道
- 景気減速懸念を背景に下落基調にある原油価格を底上げするため追加減産も検討される見通しではあるものの、減産が決定される可能性は高くない
- 11月30日、ロイターの原油市場調査によると11月の石油輸出国機構(OPEC)産油量は日量2901万バレルとなり10月に比べ日量71万バレル減少
- OPECプラスは11月分について、世界経済減速懸念と石油市場の見通しの不確実化を理由に日量200万バレル、OPEC10ヶ国では日量約127万バレルの大幅減産を決めていた
- OPECの11月減産履行率は163%
- 12月2日、EU議長国のチェコが欧州連合はロシアへの追加制裁としてG7と検討している海上輸送のロシア産原油の上限価格で合意したと発表。上限価格は1バレル=60ドル。G7も適用する見通しで12月5日に導入
- 今回の措置には移行期間が設けられており、12月5日までに船舶に積み込みをし、2023年1月19日までに最終目的地において荷下ろしされる分に関しては、ロシア産原油の売買価格が1バレル当たり60ドルを超える場合であっても、EU域内の事業者は海上輸送や関連サービスを提供することが認められる
【会合結果】
- 12月4日の閣僚級会合で、日量200万バレルの減産を2022年11月から2023年末まで実施するとした2022年10月の決定を維持
- OPEC本部があるウィーンで対面形式の会合を予定していたが、直前になってオンライン形式に切り替えた。会合は約20分間で終了
- OPECプラスの次回閣僚級会合は2023年6月4日予定
- 減産の実施状況を監督する共同閣僚監視委員会(JMMC)を2022年10月に2ヶ月ごとへと移行しており、次回は2023年2月予定。JMMCは生産方針の変更が必要と判断した場合に緊急会合を招集する権限を持っている
【会合後】
- 12月4日、ロシアのノバク副首相がロシア国営RIAノーボスチ通信の取材に対して、ロシア産原油に対して上限価格を設定した国には石油を輸出しないと発言
- ロシア政府が上限価格の設定を禁止する手段について検討しているとも発言
- 12月5日、海上輸送のロシア産原油に1バレル=60ドルの上限価格を設定するG7、EU、オーストラリアの追加制裁措置が発効
- ロシア産原油の購入価格が上限以下の場合に限り、G7やEUの船舶、保険会社、信用機関を使った第三国への輸出が認められる
- 12月7日、中国の国家衛生健康委員会が全国でのCOVID-19対策規制を大幅に緩和
- 無症状の感染者や自宅隔離が可能な軽症者は原則として自宅隔離
- PCR検査の規模を縮小し検査の頻度も減らす
- 省間の移動も48時間以内の陰性証明のほか到着時の検査も不要
- 12月7日、ロシア経済紙ベドモスチが関係筋の話としてロシア産原油価格上限への対抗策としてロシア政府が3つの案を検討していると報道
- 上限設定を支持した全ての国への石油販売禁止
- どこが受け取り国であろうと価格上限の条件を含む契約下での輸出を禁止
- ロシアのウラル原油の国際指標に対する最大割引額を設定して販売を許可
直近のニューヨーク原油先物価格とエクソン・モービルの株価
上述の様にここ最近、原油価格へ影響を与えそうな情報が相次いでいるのだが実際はどうだったのかというと、
過去1ヶ月では概ね下落傾向。1バレル=90ドル前後だった価格が75ドルを割り込んでおり、ひと月で16%前後の下落となっている。
一方で原油先物価格に連動することが多い自分が所有しているエクソン・モービル(XOM)株は
12月に入ってからの下落傾向はニューヨーク原油先物と同じだが、それ以前はまずまずで過去1ヶ月の下落率は8.3%程度と原油先物の下落よりはマシとなっている。
まとめ
最新のOPECプラス閣僚級会合結果と直近の原油価格関連情報を整理し、過去1ヶ月のニューヨーク原油先物価格及び自分の所有銘柄のエクソン・モービル株価について確認してみた。
12月に入ってからの原油先物価格とそれに連動する形でエクソン株の下落が顕著だが、今後もこの傾向が続くのか、このレベルで安定するのか、それとも上昇するのか各要素が複雑に絡んでいるので自分には全く分からない。
ただ年初来のエクソン株とニューヨーク原油先物の推移を見てみると
2022年前半はニューヨーク原油先物とエクソン株は一時を除いて概ね連動していたが、下半期は実はニューヨーク原油先物は下落傾向にあるのに対し、エクソン株は今回の様に連動している時期はあるものの上昇していることが判る。ニューヨーク原油先物に至っては気付けば年初の価格を5%ほど下回っており、一方でエクソン株は年初来で50%以上も上昇している。
エクソン株には何とかここ半年の傾向を維持して、12月のニューヨーク原油先物に連動する形ので下落が続く事態にならないことを期待したいが、さてどうなることか。