はじめに
2022年8月10日(水)には2022年7月の米消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が米労働統計局から発表された。
ここ最近はインフレに関するこの消費者物価指数と個人消費支出(PCE:Personal Consumption Expenditures)指数が市場に大きな影響を及ぼすことが多いので特に気に掛けているのだが、7月29日に発表された米個人消費支出は
と全体では前月比で1.0%上昇し2005年9月以来の大きさとなり、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数でも前月比0.6%上昇。全体の前年同月比は6.8%上昇し伸び率は1982年1月以来の大きさであり、コア指数では4.8%上昇。
普通ならインフレ圧力が続くこの結果で米国市場は下落しそうなものなのだが実際には
いずれも上昇。これは同日の決算発表を受けてアマゾン(AMZN)が10.4%、アップル(AAPL)が3.3%、シェブロン(CVX)が8.9%、エクソン(XOM)が4.6%いずれも大きく上昇したのに加え、CPEの後に発表された米ミシガン大学の7月の消費者信頼感指数調査で消費者の1年先の期待インフレ率(確定値)が5.2%と2月以来の低水準に鈍化したことを受けてCPE結果によるインフレ懸念が薄れてしまい市場が上昇したようだ。
昨日の米消費者物価指数発表内容とそれを受けての市場の動きはどうだったのか。以下に確認し整理しておくことにする。
2022年8月10日米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)発表の2022年7月消費者物価指数(CPI)
以下の情報は米労働省労働統計局の発表資料より引用・抜粋。
- 2022年7月の前月比消費者物価指数(季節要因調整済)は0.0%で変わらず、市場予想は0.2%の上昇
- 2022年7月の前年比消費者物価指数(季節要因調整済)は全品目では8.5%上昇、市場予想は8.7%の上昇。変動の大きい食品及びエネルギーを除くと前年比5.9%上昇、市場予想は6.1%の上昇
- 家庭用食品(Food at home)は前年比13.1%上昇で1979年3月以来の伸び率。2022年6月は前年比12.2%上昇
- 電気代(Electricity)は前年比15.2%上昇で2006年2月以来の伸び率。2022年6月は前年比13.7%上昇
- 住居費(Shelter、主に家賃)は前年比5.7%上昇で1991年2月以来の伸び率。2022年6月は5.6%上昇
ただしエネルギー関連が前月比で軒並みマイナスとなったり、一部項目も前月比でマイナスとなっている。
同日の米国市場
2022年7月米消費者物価指数が発表された2022年8月10日の米国市場は
いずれも大きく上昇。CPIが市場予想を下回る数値となったことがインフレ鎮静化の兆しと捉えられ、連邦準備制度理事会(FRB)が予想ほど積極的な利上げを行わない可能性が台頭したことが原因だろう。
またCPIの発表があった直後のドル円為替は
一気に2円程度のドル安となっている。
まとめ
7月の消費者物価指数は全体では市場予想を下回り、前月比でマイナスとややインフレ傾向に鎮静の兆しが見られたため、FRBの利上げも予想より落ち着くのではという観測から市場は上昇となった。
一方で同じFRBの利上げ観測からドル円為替が急激にドル安に振れたため、自分の資産はドルベースでは増加したものの円ベースではマイナスという結果になっている。
なかなか上手くいかないものだ。
今回はやや沈静化の兆しが見られたインフレ傾向だがまだまだ予断を許さない状況だろう。次回もこの傾向が続くのか、それともたまたまの一過性だったのか、FRBの動向なども気にしつつ注意していくことにしたい。何とか市場やドル円が急激に変動することなく、落ち着いた動きになって欲しいのだがなあ。