はじめに
今週(2020年4月21日週)はAT&Tに関する様々なアップデートがあった週となった。
- 4月21日にAT&T傘下のワーナーメディアの動画配信サービス「HBO Max」が5月27日に開始されることが発表
- 4月22日に2020年第1四半期の決算発表
そして昨日4月24日に表題の通り、7月1日付でCEO(最高経営責任者)の交代が発表された。以下にその内容をまとめておく。
2020年4月24日の発表内容
以下はAT&Tの企業ページより引用・抜粋。
- After serving 13 years as AT&T’s Chairman and CEO, Randall Stephenson, 60, will retire as CEO but will serve as Executive Chairman of the Board of Directors until January 2021 to ensure a smooth leadership transition.
AT&Tの会長兼CEOを13年間務めた後、Randall Stephenson氏(60歳)はCEOを退任しますが、スムーズなリーダーシップの移行を確実にするため、2021年1月まで取締役会の会長を務めます - The AT&T Inc. Board has elected AT&T President and Chief Operating Officer John Stankey as CEO effective July 1, 2020, and a member of the Board of Directors effective June 1, 2020.
AT&T Inc. の取締役会は、AT&Tの社長兼最高執行責任者であるJohn Stankey氏を2020年7月1日付けでCEOに、2020年6月1日付けで取締役会のメンバーに選出しました
これ以降は退任するRandall Stephenson氏の挨拶、新しいCEOとなるJohn Stankey氏の経歴や挨拶などが続くので詳細は割愛。ただJohn Stankey氏の経歴に触れておくと、年齢は57歳で1985年にAT&Tに入社し、2019年10月から社長兼COOを務めている人。
まとめ
この発表を見てまず思ったのは、最近同じ様なことがウォルト・ディズニーでもあったなあ、ということ。ウォルト・ディズニーのBob Iger氏は15年近く、Randall Stephenson氏は約13年と長きに渡ってCEOを務めてきており、両者とも在任中に大型M&Aを実施している(ディズニーは21世紀FOX、AT&Tはワーナーメディア)点が相似している点。
ただAT&Tとディズニーで違うと感じられる点は、ディズニーのIgor氏が2021年末まで取締役会会長として留まるのに対し、AT&TのStephenson氏は2021年1月までと期間が短い点。ディズニーの方はまだIgor氏が影響を及ぼすだろうが、AT&TではStephenson氏の権限は限定されそうな気がする。この新型コロナウイルス状況下で誰がどうやって舵を取っていくのかいささか不明瞭に感じられる。
この辺りには昨年にAT&Tの株式を多数保有していることを表明したアクティビストであるPaul Elliott Singer氏(及びその会社であるElliott Management)の意向が働いているのかもしれない。以下はCNBCの記事より引用・抜粋。
- Elliott said Friday it “supports John Stankey as AT&T’s next CEO.”
エリオットは金曜日「AT&Tの次期CEOとしてジョン・スタンキーをサポートする」と述べた - “We have been engaged with the company throughout the search process, which was a robust one, including a range of highly qualified outside candidates and overseen by independent directors,” Elliott Management partner Jesse Cohn said in a statement. “We look forward to working with John as he begins his term as CEO.”
「当社は、様々な高度な資格のある社外候補者を含み、独立した取締役によって監督されている、一連の候補者選定プロセスに関わってきました」エリオット・マネジメントのパートナーであるジェシー・コーンは声明で述べた。「ジョンがCEOとしての任期を開始するにあたり、彼と協力することを楽しみにしています」
この記事からすると、そもそもJohn Stankey氏が唯一の次期CEO候補者で無かったことが分かる。Stankey氏が選ばれたのは彼が適切であるからなのか、それとも外部候補者との比較でマシだったのかが分からない。
ちなみに昨日のAT&Tの株価の変動は以下の様になっている。
CEO退任の発表はAT&T 2020 Annual Meeting of Stockholders中(米東部時間10時開始)で行われたのだが、いったん上昇した後に下落、そして市場の動きに合わせて緩やかに上昇している。市場も判断が難しい発表だったことが伺える。
新型コロナウイルスが収束する、そしてHBO Maxが開始された結果が出るであろう2020年の後半に、AT&Tがどういう方向に向かうのか、以前の3ヶ年計画はどうなるのかが非常に気に掛かる。今週の四半期決算で不調であるワーナーメディアやDirecTVに何らかの動きがある可能性もあるだろう。そしてもし変化・動きがあったとしても、株価には好影響で、配当が維持されることを期待したい。