はじめに
先週金曜日のダウ工業平均は0.95%の減少で、S&P 500の0.39%減よりも大きな下落となっていた。
週末にニュースを確認して見たところ、J&Jとボーイングの下落が大きかったことが、ダウ工業平均の下落が大きくなった原因となっていたようだ。
J&Jは自分が所有していないのでその下落原因の詳細は省略する(基本的にはアスベスト混入の可能性から、J&Jがベビーパウダーを自主回収すると発表したこと)として、ボーイングの下落原因についてはきちんと整理しておくことにする。
2019年10月18日のボーイング株下落原因
2019年10月18日にボーイング株がどれだけ下がったかというと、
上記のように6.79%の大きな下落。8月後半からやや持ち直していた株価がまた350ドルを割り込んでしまった。
その原因は既にアメリカ主要メディアや日本でも詳しく報じられているが、簡単にまとめると以下の理由となる。
- ボーイングが737MAXに搭載された機体の姿勢を自動で制御する「MCAS」と呼ばれるシステムに関して、社内の技術責任者がうまく機能しない可能性があることを運航の認可を受ける前に指摘していながら、アメリカ連邦航空局(FAA)に報告していなかったことが明らかになったため。
- 737MAXは、去年10月にインドネシア、今年3月にエチオピアで相次いで墜落事故を起こし、このMCASが事故の原因である可能性が浮上しており、運航を認可したFAAへの批判も出ていたが、今回の報道が事実であれば一連の認可の手続きは事実と異なる報告をもとに行われていた可能性がある。
詳しくは、
- 737型機のチーフテクニカルパイロットだったマーク・フォークナー(Mark Forkner)氏が2016年11月15日に同僚に送ったインスタントメッセージによると、同氏は認証試験中だったMCASの性能は「実にひどい(“egregious”)」と表現し、「規制当局に(意図せず)うそをついてしまった(“I basically lied to the regulators (unknowingly),”)」と述べていた。
- ボーイングはFAAに報告する数か月前からフォークナー氏のメッセージの内容を把握しており、2件の墜落事故が発生する前から737MAX型機の問題を認識していたのではないかとの疑問が生じている。ボーイングがFAAに情報を開示したのは2019年10月17日(木)の深夜であった。
という事になる。
まとめ
上記の内容が報道によって明らかにされたことにより、ボーイング株は10月18日に大きく下落した。ただ、以下に述べるような点からこれだけで下落が済むような気はしない。
- 2件の墜落後、737MAX機のソフトウェア修正作業をボーイングは行ってきたが、今回の報道により、その修正作業の信頼性が損なわれる可能性がある
- トランプ米政権は10月18日、欧州連合(EU)による航空機大手エアバスへの補助金に対抗してEUからの輸入品最大75億ドルに対する追加関税を発動している。これに対してEUがボーイングへの補助金を巡り、米国への報復関税を行う可能性がある(時期については諸説あり)
- 本日(日本時間10月21日)米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が、墜落事故を起こした米ボーイングの737MAXについて調べている米下院運輸経済基盤委員会は、航空機の安全性関連の承認を巡り同社社員の約3人に1人が上司からの「不当な潜在的圧力」を感じたと回答していたことを示す同社の内部調査を入手し、同社指導部の調査を強化していると報じている
短期間で情報/報道が多すぎるのだが、いずれもボーイングの業績、株価に好影響を与えるとはとても思えない。
今回のFAAへの情報開示問題が737MAXの再運航開始に影響を与えるかどうかの報道はなされていないが、運航再開が更に遅れる可能性も否めない。
EUからの報復関税が行われれば、ボーイングの価格競争力は当然落ち、売上に影響を及ぼすだろう。
経営陣からの不当な圧力が認定されれば、10月11日に会長と最高経営責任者(CEO)を分離し、デニス・ミューレンバーグ氏が会長を外れてCEOに専念すると発表したボーイングの改革は長期に及ぶだろうし、延々とその対応に追われる可能性もある。
こう考えると、少なくとも短期的には下落傾向が続く可能性が高いと個人的には思う(自分の予測は外れることが多いのだが…)。まずは、10月23日に予定されている2019年第3四半期発表とそれに伴うアナリストとのカンファレンス、及び10月30日に予定されている下院の輸送委員会でのボーイングCEOデニス・ミューレンバーグ氏の証言について注目するべきだろう。