はじめに
米現地時間2026年1月27日(火)、28日(水)に2026年最初のFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)が開催された。
前回2025年12月9、10日のFOMC会合は事前に有力視されていた通りに利下げが行われ、四半期に一度の経済予測要旨で2026年の利下げ回数1回が中央値だったのだが、パウエル議長が会見で労働市場の軟化を強調したことで、2026年の追加緩和に含みを持たせるものと市場に受け止められて株式市場はやや上昇していた(ただしそれ程大きな上昇ではない)。
FOMC後の2025年12月には米2026会計年度のつなぎ予算成立が遅れて一部政府機関閉鎖の影響を受けた米雇用統計、米消費者物価指数(CPI)が発表されたが、CMEのフェドウォッチツールでは2026年1月FOMCでの金利据え置き確率は70~75%程度となっていた。
その後徐々にCMEのフェドウォッチツールでは金利据え置き確率が高まり、2026年に入って正常化した1月発表の米雇用統計では95.6%、米消費者物価指数(CPI)では98.3%となり、今回FOMC前の時点では97.2%となっている。
金利据え置きが有力視される中で、実際の政策金利結果及びパウエル議長の会見、それらを受けて市場はどう反応したのかを確認し整理しておく。
2026年1月27日、28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)結果及びパウエル議長の発言まとめ
FOMC会合結果
以下は米連邦準備制度理事会(FRB)のサイトで現地時間14時に公開されたFederal Reserve issues FOMC statement(FOMC声明)より引用・抜粋。
前回からの主な変更点等は以下の通り。
【最近の経済】
- 前回は「入手可能な指標は経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示唆、雇用の伸びは今年に入って鈍化し失業率は9月まで小幅に上昇、最近の指標もこうした動きを裏付けている、インフレ率はやや高い水準を維持」といった趣旨の文章
⇒今回の主なは以下の様な変更あり- 経済活動に関しては「緩やかなペース(moderate pace)」が「堅調なペース(solid pace)」に変更
- 雇用の伸びに関しては「今年に入って鈍化(slowed this year)」が「低水準にとどまり(remained low)」
- 「最近の指標もこうした動きを裏付けている」という一文が削除
【委員会の目的と現状】
- 前回は「委員会は長期的に雇用の最大化と2%のインフレ率の達成を目指している」、「経済見通しに関する不確実性は依然として高い水準にある」、「委員会は雇用とインフレの双方に対するリスクに注意を払っている」、「ここ数ヶ月雇用に対する下振れリスクが高まっていると判断している」といった趣旨の文章
⇒今回は「ここ数ヶ月雇用に対する下振れリスクが高まっていると判断している」という一文が削除
【今後の政策金利決定に関して】
- 前回は「委員会は目標達成のため、またリスクバランスの変化を踏まえ、フェデラルファンド金利の目標範囲を0.25パーセントポイント引き下げ3.50~3.75%に変更することを決定した」、「フェデラルファンド金利の目標レンジの追加調整の範囲と時期を検討するにあたり、委員会は今後入手するデータ、変化する見通し、そしてリスクバランスを慎重に評価」、「委員会は、最大限の雇用を支援し、インフレ率を2%の目標に戻すことに強く取り組んでいく」、といった趣旨の文章
⇒今回は「委員会は目標達成のため、フェデラルファンド金利の目標範囲を3.50~3.75%に維持することを決定した」以外は前回と全く同じ
【金融政策の決定に関して】
- 前回は「金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は引き続き経済見通しに対する入手可能な情報の含意を注視していく」、「委員会の目標達成を阻害しかねないリスクが顕在化した場合、委員会は金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある」、「委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力とインフレ期待、金融・国際情勢に関する指標を含む幅広い情報を考慮に入れる」、「委員会は、準備金残高が十分な水準まで減少したと判断しており、引き続き十分な準備金を維持するために、必要に応じて短期国債の買入れを開始する」と言った趣旨の文章
⇒今回は前回追加された「委員会は、準備金残高が十分な水準まで減少したと判断しており、引き続き十分な準備金を維持するために、必要に応じて短期国債の買入れを開始する」という一文が削除された以外は前回と全く同じ
パウエル議長の発言
以下はFOMC会合結果発表後のパウエル議長の会見における主な発言より。
- 経済活動の見通しは前回の会合後に明らかに改善しており、これは時間の経過とともに労働需要や雇用に影響を与えるはず
- 現在の政策スタンスは適切で、足元の政策は2つの目標(雇用安定、インフレ抑制)に向けた前進を促す
- 政府機関の一時閉鎖の影響は今四半期中に解消されるはず
- 労働市場は安定しつつある可能性があるが、過度に踏み込むべきではない
- インフレ率は目標を若干上回る水準で高止まりしている
- 上振れの大半は財価格で起きており、関税に関連していると考える。最終的には、それらは一時的な価格上昇にとどまり、持続的なインフレにはつながらないとみている
- 政策金利は中立金利の妥当な推定範囲内にあり、追加金利調整の程度とタイミングを決定するのに有利な立場にある
- 政策には事前に設定された道筋はなく、決定は会合ごとに行う
- 質疑応答
- FRBのCook理事の最高裁審理に出席したことについて
- その訴訟は113年に及ぶFRBの歴史において、最も重要な法的案件と言えるだろう
- 出席しない理由を説明するのは難しいと考えた
- 司法省の召喚状について
- 今日言えることは何もない
- FRB議長任期満了後にFRBにとどまるか
- 決めていない
- 最近のドル為替相場について(対円以外ではドル安が続いている)
- FRBはドルについてコメントしない
- 今回の政策金利決定について
- この日の政策金利据え置き決定には幅広い支持があった(実際には賛成10、反対2)
- 決定は会合ごと、今後の会合については何も決めていない
- (金利政策は)おそらく緩やかに中立的か、幾分引き締め的で正常化プロセスでかなり進展しており、経済動向を見極める上で好位置にいる
- 利上げは、誰にとっても基本シナリオではない
- インフレについて
- (政府機関閉鎖による)データの歪みはもはや顕著ではない
- 経済活動見通しは、前回会合以降明らかに改善した
- 雇用とインフレのFRB二大責務間の緊張は依然存在しているが幾分緩和され、インフレの上振れリスクと雇用の下振れリスクは後退した
- 関税の物価への影響は一時的となる可能性が高い
- インフレ高止まりの大半は需要でなく関税に起因しており、関税の財への影響を除くとコアPCEは2%を若干上回る水準で推移
- 関税による財への影響は今年ピークを迎えた後、後退すると予想
- 労働市場について
- 労働力の供給と需要が均衡していても雇用が創出されていない場合、それが完全雇用かどうかの判断は難しい
- 労働市場への下振れリスクが再び高まれば、金利を考慮する必要がある
- その他
- 消費支出は所得水準によってバラつきがあるが全体としては良好
- 貿易政策の大きな変更にもかかわらず、これまでのところ経済は順調に推移
- 人工知能(AI)の活用によって、雇用が短期的に失われる可能性はあるが、全体的な影響は不明
- 米財政赤字は持続不可能な軌道にあり、対応は早いほど良い
- 金価格の上昇を過度に深読みすべきでない
- FRBのCook理事の最高裁審理に出席したことについて
FOMC会合結果、経済予測要旨及びパウエル議長の発言を受けての市場
米国主要3株式指数

いずれも前日比上昇して始まったが、狭いレンジで方向感が乏しい動きで取引を終えている。
S&P 500の日中の動きを見てみると

前日比0.3%程上昇して取引が始まったが、緩やかに下落して前日とほぼ変わらずの動きで推移。FOMC結果が発表された14:00でもその流れは変わらず。14時30頃からのパウエル議長の会見でも大きく動くことはなく取引を終えている。
FOMC結果、パウエル議長の会見でも今後の利下げについて手がかりとなるようなものが無かったことが、市場に大きな動きが無かった要因だろう。
米国10年債

FOMC声明が発表された米国東部時間14:00は上記チャートのCST(米国中部時間)では13:00。
開場直後から利回りはやや上昇傾向ではあったが、株式市場と同様に非常に狭い範囲での動き。パウエル議長の会見でやや利回りは低下したがその幅は極めて小さい。
株式市場と同じく、FOMC結果、パウエル議長の会見で今後の利下げについて手がかりとなるようなものが無かったことで、市場は割と落ち着いた動きとなったようだ。
ドル円為替

FOMC声明が発表された米国東部時間14:00は上記チャートのGMT(英国標準時)では19:00。
米国市場が開場してしばらくした現地時間10:00(上記チャートでは15:00)に1ドル=152円台後半から153円台後半へと急激にドル高に。これはベッセント米財務長官がCNBのインタビューで為替介入を「絶対にしていない」と否定し、今後の介入についても「我々は強いドル政策を取っていること以外、コメントは控えたい」と発言したことが影響した模様。
その後も1ドル=153円台後半での推移が続いていたが、パウエル議長の会見(上記チャート19:30頃)からややドル安となり1ドル=153円台半ばから前半へでの推移が続き、日本市場が始まってもややドル安となったが変動幅は小さく1ドル=153円台前半での推移となっている。
FOMCの結果/パウエル議長の会見内容というよりはここ最近の日米両国による為替介入可能性への警戒感がドル円為替変動の要因となっているようだ。
まとめ
以上2026年最初のFOMC声明及びパウエル議長の会見、それらを受けての市場の動きについて整理してみた。
市場予想通りの金利据え置き、パウエル議長の会見でも今後の金利政策への手掛かりが乏しかったこともあってか株式、債券、為替共に小幅な動きに留まるという結果になったのは幸い。
そして今回FOMCを経て2026年の利下げは早ければ6月FOMCで行われるというのが有力(CMEのフェドウォッチツールでは6月での利下げが48.5%、ただし据え置きも38.5%。3月は据え置きが86.5%、4月は据え置きが74%)となっている。
昨年2025年はFOMC/パウエル議長の会見で市場が変動することが多かったが、2026年は今回の様に政策金利の動向に左右されない市場となって欲しい。ただあくまで今回のFOMCでは小幅な市場の動きとなっただけで、今後のFOMCで昨年の様に市場が大きく動く可能性が無くなったとは思えない。まだしばらくは油断せずにFOMC及びそれに影響を及ぼす経済指標には注意していきたい。